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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・グラデーション
526/547

ランチタイム(6)

続きです。

 相手が体勢を立て直すまで、そう何秒もかからない。

しかしその数秒のうちに距離を詰められる自信はあった。


 地面を強く蹴り、一度の跳躍で怪獣に迫る。

そしてその加速を乗せた拳を腹部に打ち込んだ。


 硬質な外骨格はそれで凹むようなことはない。

しかし相手は軽量、それだけで激しく地面に叩きつけることが出来た。


 この期を逃さない。

その細くやや歪な体躯に飛び乗り、あたしは自らの両手を変質させる。

小さな子どもの手は、一瞬のうちに頑強な鱗に覆われ、指先には鋭い爪を形作った。


 手のひらを広げ、爪の一本一本にエネルギーを送る。

それはたちまち熱となって、白い爪を赤く染めた。


 赤熱した爪で、怪獣の体を切りつける。

鋭い爪は、打撃と異なり硬質な外骨格にも有効に働く。


 力のままに腕を振り抜けば、赤い爪痕が怪物の体に刻まれた。

しかし・・・・・・。


「おわっ・・・・・・と」


 相手もやられてばかりではいてくれない。

脚を闇雲に蹴り上げ、あたしを押し剥がそうと試みた。


 あたしの反応が間に合って、その脚が何かに命中することはない。

しかし飛び退かざるを得なかったわけで、結果的に相手の目標は達成されている。


 体を起こした怪物が、口の筋肉を震わせて威嚇するように歯を鳴らす。

そして次の瞬間・・・・・・。


「は・・・・・・消えた?」


 視界から怪物の姿が消える。


 いくつかの可能性を考える。

これら怪物は、あたしが利用しているものと同じエネルギーを用い特殊な能力を発揮する。

とすると、透明化、瞬間移動・・・・・・いくつかの考えが浮かんでくる。

だが・・・・・・。


「違う・・・・・・」


 感覚がそうでないと訴えている。

そしてあたしのそういった直感は、多くの場合間違っていない。


「どこだ・・・・・・どこにいる・・・・・・?」


 店内に動くものは見えない。

そう遠くには離れていないはずだが、その姿は見つからない。


 能力じゃないとすると、単純なフィジカルで姿を眩ませた。

殴ったときに相手の軽さは確認済みだ。

つまり高速移動というところが落とし所としては適切。

あとはどこに逃げたか、だ。


「ちょっと君・・・・・・その・・・・・・」


「え・・・・・・?」


 突然投げかけられた言葉に少し驚く。

見ればみこ母の姿。

本当は逃げていてくれた方が都合が良いのだけど、今はそれ以上に気になるのが・・・・・・。

みこ母がその人差し指を真っ直ぐ天井に伸ばしていることだ。


 その指の指すさきを、ゆっくりと見上げる。

すると丁度あたしの真上、見上げた鼻先に怪物の顔があった。


「おわっ・・・・・・!?」


 思わずビビッてすっ転ぶ。

その瞬間に怪物はこちらに飛び込んできた。


 尻餅をつきながら、突っ込んできた怪物を雑な蹴りで出迎える。

ダメ元ではあったが、容易く回避されてしまった。


 怪物が遠心力のままに腕を振り回す。

その風を切る音が耳元に迫り、次の瞬間にはあたしの横面を叩いていた。


 衝撃に視界が揺れる。

だがここで取り乱してはいけない。


 続く二撃目を姿勢を低くして凌ぐ。

怪物の体は勢いのままもう一周。

次の攻撃も同じ軌道だ。


「・・・・・・なら!」


 姿勢を低くしたまま、既に近接している相手に更に詰める。

そしてその懐に爪を突き出した。


 怪物はそれを身を捻って回避する。

そのまま飛び退いて距離をとろうとする。

だがそこまではあたしも許さない。


 曲げていた脚を伸ばし、身を翻した怪物に追いつく。

飛び去ろうとする足首を掴んで地面に引きずり下ろした。


 お互いに着地というよりは落下し、まともに受け身をとることも出来ない。

冷たい床の上にぐちゃっと絡まるように叩きつけられた。


 すぐさま立ちあがろうとする怪物の腕を掴み、引き倒す。

そしてその顔面を殴ろうと拳を突き出した。


 だが、その突き出した腕を掴まれる。

お互いにお互いの腕を掴んで、床の上をもがくように転がった。


「くそ・・・・・・」


 少し反応速度が予想以上だ。

攻撃に速度やら威力やらが乗る前につぶされてしまう。


 これは、思ったより厄介かもしれなかった。

続きます。

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