雪に埋もれた・・・・・・
新章突入です。
新章感は薄いスタートダッシュですがよろしくお願いします。
「ねぇ、私・・・・・・さ・・・・・・」
「何・・・・・・?」
「何でもない。これからさ、産まれてくる子・・・・・・なんか、星の名前つけたいなって・・・・・・」
しんしんと降る雪。
街灯が照らす暗闇に、白い息が溶けていく。
積もった雪は歩道の端に寄せられて、空に輝く星々の光を反射している。
「星・・・・・・って、月とか、太陽とか?」
「そういうのじゃなくて・・・・・・例えば、きらら・・・・・・とか?」
「えぇ? ちょっとそれ・・・・・・どうなの・・・・・・?」
「言ってみただけだよ。ほら、私の名前・・・・・・雪じゃん」
「ああ、まぁな・・・・・・」
「お父さんがさ、雪は誰でも手の届く、誰のところにもやって来てくれる星なんだって、だから私も誰かのそばで星みたいに輝ける人になってほしいってつけたの。雪って。でもさ、どうせなら本物の星として照らしたいじゃん。名前なんだからさ、変に現実的にならなくていいじゃん。雪って、溶けちゃうし」
なんの特別な日でもない。
雪の降る、静かな夜。
流れる静かな時間。
染み込む寒さも、街明かりに彩られてきらきらしていた。
「で、星ってわけ・・・・・・。なんか、雪って変わってるよな。今に始まったことじゃないけど」
「君も大概だよ。お父さんになるんだから、しっかりして」
「・・・・・・ああ、まぁ・・・・・・そうだな・・・・・・」
道路を走る車が二人を照らす。
音と一緒に、その光は通り過ぎた。
「まだ不安なの・・・・・・? 大丈夫だからさ、ね? 最近調子いいし・・・・・・」
「いや、まぁ・・・・・・雪がそう言うなら・・・・・・。けど、本当に産むんだなって・・・・・・」
「大丈夫だって」
「だといいけど・・・・・・俺・・・・・・」
「・・・・・・俺」
ベッドの上で、目を覚ます。
隣にはワイシャツ一枚着た羽織っただけの中学生。
「おじさん・・・・・・また昔の女の夢?」
「さぁね」
「もーおじさん、今は私でしょ! ほら!」
寝起きには彼女の声はうるさすぎる。
まだ焦点の合わない目を擦れば、指は雫に濡れた。
涙。
その意味は分からない。
罪悪感・・・・・・ではないと思う。
後悔とも違う。
「おじさん! ほーら私の顔見て!」
そう言って顔を引き寄せる手は、まだ子どものもの。
正面でこちらを覗く瞳も、まだ幼さが残っていた。
思わず目を逸らす。
「おじさん!」
「・・・・・・もう、金は払ったからいいだろ? おじさんはもう疲れましたー・・・・・・」
「もう・・・・・・。おじさんのバーカ・・・・・・」
少女は背を向けて拗ねる。
その背中を眺めつつ、目を閉じた。
何度目かの、この少女との買った夜。
明日のメシすら危ういって言うのに、金の使い方どう考えても間違ってる。
隣の少女も。
時間の使い方を間違ってる。
「おじさん」
「・・・・・・」
「私、本気ですから」
俺、なんで生きてんだろ?
瞼の裏には、消えない白く染まった街並み。
あの夢を見るから、眠りたくないんだ。
雪に埋もれた、とるに足らない過去だ。
続きます。




