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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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ミラクルステージ(19)

続きです。

 空を埋め尽くすビットは再び空の青に溶けるようにその姿を隠す。

そしてみこちゃん本人も、観客を一掃したステージに降り立った。


 役者は揃った。

邪魔をする壁ももう無い。

ミラクルは一部始終を見届けて、そして自らシールドを解除した。


「やれやれ・・・・・・どうやらそろそろ私の番みたいだね」


 少しすっきりとしてしまったステージに、音楽は鳴り続ける。

鯨の中に演奏担当でも居るのだろうか。


 ピリピリと空気が緊張する。

いや、実際に微細な電流が弾けているのかもしれない。


 音楽は大きな音で鳴り続けるのに、こちらに向かってくるミラクルの足音がはっきり聞こえた。


「・・・・・・」


 本当の始まりを、予感する。

無意識の内に、身構える。


 ミラクルに向かって収束していくエネルギーを感じる。

それが空間を歪めているようにすら見えた。


 しかし・・・・・・。


「待って・・・・・・ください・・・・・・」


 それを遮る声が響く。

酷く疲れ切って、掠れた声。

一人の観客が、ボロボロの状態で立ち上がったのだ。


「え・・・・・・?」


 とても立っていられる程回復しているようには見えない。

そのやや肥満な体型から、屈強な肉体を持つというわけでもなさそうだ。


 その観客はよろめいて再び倒れそうになる。

それにミラクルは電流となって急接近し、なんとか間に合ってその体を支えた。


 観客はミラクルに支えられて、メガネをクイと押し上げる。


「ありがとうございます・・・・・・でも大丈夫。僕なんかのためにそこまでする必要は無いですよ」


「え・・・・・・でも・・・・・・」


 ミラクルはやや困惑気味だ。

そして別の声が再び上がる。


「拙者も・・・・・・助太刀いたす。今は拙者たちが、ミラクル殿を支える番ですぞ・・・・・・」


 太ったメガネの次は痩せメガネだ。

独特の口調で、やはりメガネを押し上げる。


「みこちゃん・・・・・・手加減した?」


 思ったより復活する人がいるみたいで、思わず尋ねる。


「いや・・・・・・立ち上がれるはずは・・・・・・ないです・・・・・・。それに、あんな弱そ・・・・・・非力、じゃなくて・・・・・・インドア系の人たちがまさか・・・・・・」


 言いながらみこちゃんも、起こってしまっている事態に困惑が隠せない。

仕切り直し・・・・・・とまではいかなくても、さっきの流れをもう一度繰り返している。


 後続はそれ以上無いかと思っていると、今度は女性が立ち上がる。

顔を隠すように前髪を伸ばした、メガネの人だ。


「私も・・・・・・ミラクルちゃんの力になれるなら・・・・・・!」 


 蘇った三人は、ふらふらと集まって私たちの前に立ち塞がる。


「ミラクルちゃんは、僕らの希望だから・・・・・・」


「拙者たちの、生きる意味でござる!」


「何も無い私たちの人生に、光を届けてくれた! 私たちみたいな人たちにも、眩しくて暖かい、より良い未来が来ると言ってくれた!」


 三人はミラクルの手は借りようとしない。

お互いに支え合って、やっと安定を得る。

きっと会うのも初めての三人だ。

しかし、そこには間違いなく通じ合うものがある。


「みんな・・・・・・」


 ミラクルは再び、さっきと同質の感情を表情に滲ませる。


「でも・・・・・・でもいいの! みんなは十分私を支えてくれたから。それに、私だってちゃんと強いんだから。みんなにいいところ見せないと・・・・・・!」


 贄に過ぎないと知っている申し訳なさか、これ以上の無理はしないでとミラクルは笑う。

しかし三人は応じなかった。


「ミラクルちゃんは、私を・・・・・・私たちをずっと支えてくれた!」


「拙者を含めた全ての人たちのために歌ってくれた・・・・・・!」


「返しても返しきれない。だから今は・・・・・・!」


 それぞれの声に、それぞれが答える。

ミラクルで繋がった思いは、やがて・・・・・・。


「ちょっと、あれ・・・・・・!?」


 光が溢れる。

奇跡が、三人を照らす。


「キラキラ粒子・・・・・・ニャ・・・・・・」


 今この瞬間この三人は、確かにきらきらしていた。

その力が起こす奇跡を、私たちはよく知っている。


「これが・・・・・・アンチェインド・・・・・・」


 ミラクルもその光景に息を呑む。

鎖を引きちぎり、可能性を解き放った者。

間違いなくミラクルが与えた、進化だ。


 三人は言葉を交わすこともなく同じタイミングでその腕を前へ、私たちに向けて突き出す。

その広げた手のひらの中に光は集い、一つのエネルギーの塊を形作って行った。


「おい・・・・・・これ、マズくねぇか・・・・・・?」


 どらこちゃんが、警戒を強める。

三人の伸ばした手のひらの狙いは、大雑把に私たちを捉えている。

その威力は未知数だ。


「「・・・・・・未来(ミラクル)。ありがとう・・・・・・大好きだ!!」」


 三人の間にある純粋な思いが一つになる。

奇跡の光は更に強く輝く。

そこに更にもう一人蘇った。


 しかし今度起き上がった人物は、三人の前に立ち塞がる。

その後ろ姿は・・・・・・。


「アリス・・・・・・!!」


 みこちゃんの攻撃に巻き込まれてダウンしていたアリスが復活を果たしたのだ。


「その意気や良し・・・・・・!!」


 アリスは自らに喝を入れるように声を張り上げる。

三人の攻撃を受け止めるつもりのようだ。

しかしアリスは・・・・・・。


「ちょっとあんた! 目が覚めたのはよかったけど、もう禁忌武装は無いのよ? 無茶はやめなさいよ、私たちでなんとかするから・・・・・・」


 さくらが叫ぶが、三人の前から退く様子は無い。


「アイツらに起こせて私に起こせない奇跡があるか! アイツらのミラクルに対する気持ちは伝わって来た。だから、私も私の思いで迎え撃つ! これはファンとしての私の勝負だ!」


「はぁ? この期に及んで何言ってんの!? あんた・・・・・・命に関わんのよ!」


「知ってるよ、そんなこと・・・・・・。でもこれは賭けじゃない・・・・・・私の思いは、負けない!」


 溢れる自信と、輝く笑顔。

けれどその姿はアイドルとしてのアリスじゃない。


 私たちが介入する隙もなく状況は展開する。

臨界点に達した三人のエネルギーは、その腕から撃ち出される。

やや出遅れたが、アリスも駆け出した。


 三人とアリスの間の、決して長くない距離に半透明のトランプのカードが展開される。

それをアリスは一枚ずつくぐっていく。

手にはいつの間にか光の刃が握られていた。


 発言通り、確かに賭けではない。

奇跡が実体化し、荒唐無稽な力を発揮している。


 やがて二つの光はぶつかり、そして弾ける。

瞬間、視界が白に飲まれ、音が消える。


 凄まじい風が吹き荒れ、光に飲まれた風景を駆け巡る。

その光が過ぎ去った後には、三人とアリスの位置関係は入れ替わっていた。


 三人の位置は変わっていないが、アリスがその後ろまで突き抜けている。

そして・・・・・・。


 バタリと三人の倒れる音がする。

最後に立っていたのは、アリスだった。


 アリスを含めた四人の思いは、きっとミラクルにも真っ直ぐ届いている。


「あとは・・・・・・よろしく、ね・・・・・・」


 そして少し遅れて、アリスも再び意識を手放した。

続きます。

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