ミラクルステージ(8)
続きです。
「え、なにこれ・・・・・・?」
さぁいよいよ出撃というところで、アリスから渡されたのは地味なローブだった。
組織からの刺客とかが着てるやつ。
あとは魔法使いの初期装備というか、とにかくそんな感じのやつだ。
それをアリスはみんなに配って、そして自分も羽織る。
華やかな衣装と、可愛らしい顔はそれを見に纏うことで隠れてしまった。
いや、フードを目深に被って意図的に隠している。
「いいの? せっかくおしゃれして来たのに?」
訝しげにさくらが尋ねる。
私としても不思議で仕方なかった。
「いいの! せっかく乱入するんだから、こうサプライズが無いと。空からやって来た謎に包まれた人影、それがローブを脱ぐと・・・・・・ってね」
「はぁ・・・・・・なるほどね。まぁあんたらしいと言えばそうなのかもね」
アリスの発言にさくらは呆れた様子だ。
しかしそんなことものともせずアリスは笑う。
「さ、みんなも着て! こういうのは最初が肝心! 私たちのペースに巻き込まないと」
「なるほど。確かにそういう意味では有効な手段ニャ」
「ね!」
ゴローもそう言っていることだし、特に逆らう理由も無い。
暗殺者かなんかにでもなった気分で、ばさっと羽織った。
これはこれでカッコいい気もする。
ノワールとか絶対好きだ。
ローブは見かけによらず肌触りがよく、いい匂いがする。
生地が薄くて、それを着ていても特別暑くなるということもなかった。
みんながローブを着たのを確認して、アリスが付け足す。
「それと、もう一つサプライズ。私だけ先に行くから、みんなは後から来て。その方が集結感あるから。主役もわかりやすいしね。タイミングはスバルが教えてくれるよ」
「え、そんな・・・・・・大丈夫?」
一人でだなんて、私たちが入場する前に勝手にやられちゃったりしたら、いよいよ出るタイミングが分からないぞ。
たぶんそうなったらもう向こうのペースだ。
しかしアリスは何も問題ないと笑う。
「大丈夫だよ。私すごいから」
「はいよ、未来のトップアイドルさん。メガホン」
「ありがと、スバル」
私の心配はよそに、着々と出撃の準備が整っていく。
そして・・・・・・。
突然ヘリの扉が開かれる。
途端に海の匂いがする風が吹き込んできた。
風の音が耳に蓋をする。
そしてその風の中に飛び込もうと、アリスは開いたドアに手をかけて爪先を外に向けた。
「え、ここから!?」
「ここから! 格好いいでしょ!」
風の音に負けないように、アリスが「文句ある!」ということを伝えて来る。
この高さから降りて大丈夫なのかとか、ここからじゃステージが遠くないかとか、色々思うことはあるが既にアリスはそのつもりのようだ。
「そいじゃ、行きますよっと」
スバルがアリスとアイコンタクトを取る。
それが完了すると、突然ヘリが急発進した。
「うわっ!?」
いきなりの加速にバランスを崩して壁に叩きつけられる。
他のみんなも、スバル自身もそうなっていた。
ただアリスだけがドアの縁につかまって、外を睨んでいる。
ヘリはその速度のまま真っ直ぐに鯨のステージへ向かっていく。
襲撃の意思を隠そうともしない直線の軌道だ。
そしてアリスはとうとう開いたままのドアから床を蹴って飛び出す。
ヘリの推進力も借りて、一面の水色に飛び込んでいった。
続きます。




