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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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健康診断、そして・・・・・・(27)

続きです。

「さて、向こうも本格的に始まったみたいだから、こっちもそろそろ始めようか。どうだい? ちょっと感覚は掴めたかい?」


「そうね・・・・・・」


 とりあえずちょこちょこ音を鳴らしてみていたが、まぁ難しい。

口笛を吹くように・・・・・・とはいかないようだ。


 歌組の方から賑やかな歌声が届く。

初めて聞く歌ってことで、結構みんな音程ガタガタな感じだった。


 そう、聞くと音が合っているかとかそういうのは分かるのだけど、歌うと何故か合わせられないのだよな、としみじみ思う。

今でこそ人様の音程をガタガタなんて表現したが、あそこの誰よりも私が下手であることは間違いなさそうだった。


 手元の基盤模様を見る。

スバルに聞いてみたが、これはただのデザインだそうだ。

これの色のついた部分とか触らない方がいいのだろうかとか思っていたが杞憂に終わった。


「じゃあまずとりあえず聴いてみるかい? 向こうでもそうしてたし」


 スバルが順当に、と提案する。

しかし私は首を横に振った。


「いや、要らないわ。向こうから聴こえてくるもの、なんとなく分かってる。それより椅子かなんか無いの?」


 さっきからそのことについては少し思っていた。

ピアノなんかちゃんと弾いたことがあるわけじゃないが、ずっと立ちっぱというのも違うだろう。

というかこれも私が音楽が好きじゃない理由の一つだ。

歌の練習中ずっと立ってなくちゃならないのが少々しんどい。

生活習慣病の検査か何かで血を抜いたときは合唱中倒れそうになったこともあるのだ。


「椅子か、そうだね・・・・・・確かにわざわざ立って弾くことは無いか」


 一瞬、何かを考えるような顔をするスバル。

しかしすぐに椅子のありかに向かって歩いて行った。


 その背中を見送りながら、もう一度歌組の声に耳を傾ける。

まだ何十分も経っていないが、既に上達が感じられた。


 まずはきらら。

なんだか悔しいが、正直上手だ。

声質的にもどうもこの曲に合っているらしい。


 みこは最初からわりと上手かったのだが、もう既に音程はばっちりのようだ。

声量は小さめだが、きららたちの声が乗るベースとしてしっかり下地を作ってる。


 そしてどらこ。

言っちゃ悪いが、こんなに上手いとは思わなかった。

というかはっきり言ってたぶん一番上手い。

声の出し方が本職のそれだ。

アリスもそれに気づいているようで、チラチラと気にしないふりをしながら様子を見ている。

アイドルとしての沽券に関わるのだろう、決して驚くまいとしているのが見てとれる。


 まぁ色々個性はあるが、相対的にきららが一番下手だ。

何故かそのことに安堵している自分がいる。


 なんだかんだで楽しそうにしている四人を見つめる。

正確にはその中のきららをじっと見ていた。


 その姿に私の中の何が動かされたのかは分からないが「これがアイドルか」とどこか合点がいっていた。

それをまさかきららを見て感じるなんて・・・・・・いよいよ正気じゃないかもしれない。


「やっぱり歌の方が良かったかい?」


「うわ!? バカ! いきなり・・・・・・!!」


 いつの間に戻って来たんだか、椅子を持ったスバルが背後から話しかけて来た。

まったく予期していなかったので、自分で自分の声にビクッとなるくらい大袈裟に驚いてしまう。

それを見てスバルは「悪い悪い・・・・・・」と笑った。


「椅子・・・・・・これしか無かったんだが、いいかね?」


 スバルが持ってきた椅子を見せて言う。

一体どうしてそんなのを持っているのか分からないが、あの理科室にある木製の椅子だった。


「少しこの椅子じゃ低い気がしてね。後、脚の長さが微妙に違ってガタつく」


 持ってくるとき何か考える仕草をしていたのはこのことだったらしい。

確かにこの基盤ピアノと合わせると高さが足りない。


「・・・・・・まぁ、いいわよ。ありがとう、使うわ」


 私も私で少し迷うが、その椅子を借りる。

座ってみるとスバルの言う通り、左斜め後ろにやや傾いた。

しかし高さもガタつき具合も弾けない程じゃない・・・・・・と思う。


 私の準備が整ったのを見ると、スバルは基盤ピアノの側面の操作盤を何やらいじり出す。

私も邪魔にならないように少し横にずれた。


 やがてその仕事を終えると、スバルが顔を上げる。


「まずは一通りゆっくりでやってみよう。このスイッチを押せば曲が始まるから」


 さっき言ってた、登録した曲の練習機能のことだろう。

どうしてこうなったのか、何のための練習なのか、それはもうよく分からない。

けど、そういうことは一旦忘れて目の前のピアノに集中する。


 大丈夫、光を追うだけの簡単な仕事だ。

それに誰も私のことを下手くそだなんてバカにしないだろう。

だから今だけは・・・・・・。

ちょっと苦手なことでもやってみようって、歌が下手な私でも楽しんでみようって思うのだった。


 一回深呼吸して、頭の中の雑念を吐き出す。

そして、スバルに言われたスイッチを押した。

続きます。

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