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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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スペクターズ(41)

続きです。

 やれることはやってきた、はず。

このまま、きららを囚われたままこれ以上長い時間を過ごすのもきっと限界だ。


 だから、今が最良のタイミングなんだ。

私はそれを疑っちゃいけない。


 ちゃんとやってきたはずなのに、この時間を酷くもどかしく感じていたのに、いざその時が来るとなると不安で仕方がない。


 本当はもう少し何かが出来たんじゃないか、まだ救世主には追いつけないんじゃないか・・・・・・。

考え出してしまうとキリがない。


 今までの数日間と大きな不安を背負って、私たちは焼肉屋に居た。


「いや、なんでよ・・・・・・」


 どらことみことゴロー、スバルとその移動手段と化したノワール、そして私。

このメンバーで金網を囲んでいた。


「まぁほら・・・・・・切り替えは大事だからさ。今は祝おうじゃないか。準備は整ったんだ」


 あれだけ私たちの戦闘参加に否定的だったスバルはすっかり切り替えて、今は取り仕切るようにして肉を焼き、供給している。


 私の小皿には既に焼けた肉が三枚。

どらことみこも同じ枚数。

ノワールは既にその分は食べきって、今は追加の一枚が運ばれようとしている。


「ていうかこれ・・・・・・誰が支払うのよ・・・・・・」


 90分食べ放題形式の値段は真ん中のコース。

この人数となるとなかなかの出費になるはずだが、私は財布を持ち合わせていない。

というか他のみんなもそのつもりで来てないわけで、だから財布も持って来てないはずだ。


「支払いについては心配要らない。僕が払うよ。パソコンとか家電とかの修理とか・・・・・・まぁそんなのを趣味でやっててね。実を言うと結構持ってるんだ。バルスのおかげで材料費もかからないし大儲けさ」


「えぇ・・・・・・」


 冗談のような話だが、しかしきっと本当なのだろう。

そしてそれが本当なら、おそらく所持金は数千円とかそういうレベルじゃないのだろう。


「へぇ・・・・・・すごいですね」


 みこが素直に感心する。

確かにこの歳でまとまった額が稼げているんだから、普通にすごいことだ。

もっと意識高い系の展望とかあればもっとすごい感じだが、そういう様子は無い。


「まぁね。でも今のところお金が必要ってこともないから、こういうときに使っとかないと。お金は使ってなんぼだからね」


 皿の上の肉を箸でつまみ上げる。

スバルが払ってくれるというのはありがたいことなのだが、スバル自身が稼いだお金と知ると何だか少し食べづらい。

しかしこのまま肉を箸でつまんだままいるのもそれはそれで失礼な感じもある。


 私が悩んでいると、目の前でどらこが小皿の上の肉を平らげる。

こちらもなかなかの切り替えスピードだ。


「スバルもああ言ってるし、貰えるもんは貰っちまおうぜ。遠慮したってもったいねぇし」


「いやまぁ・・・・・・そうだけど・・・・・・」


 普通、流石にそんなパッと「じゃあありがたくいただくか」ってならないと思うのだけど。

しかし遠慮したところで私の皿の肉は廃棄か火葬場(どらこの消化器官)行きなのは間違いない。

なら・・・・・・。


「仕方ないわね・・・・・・」


 何がどう仕方ないんだか、まるで誰かに言い訳するみたいにして肉を口に放り込む。

庶民的で、多少雑な味の肉。

そんなこと言っても、私が庶民じゃなかったタイミングはなかったわけで・・・・・・つまりよく知る味だ。


 肉を飲み込むと、その勢いのまま米をかき込む。

その米が口の中からなくならないうちにもう一枚肉を詰め込む。


 必要以上にがっついているようにも見えるかもしれないが、焼き肉を食べるときは何というかこういうテンポが大切・・・・・・な気がするのだ。


 私の食べっぷりにスバルは満足そうにニヤニヤして、皿に肉を追加した。


「あ、すいません。私注文入れていいですか?」


 みこが注文用の端末に手を伸ばす。

届かなかったそれをノワールが手渡していた。


 いよいよ無法地帯って感じがしてくる。

つまりどういうことかと言うと、焼肉ってことだ。


「みこ、ついでに牛タン入れといてくれ」


「とりあえず一皿でいいですか?」


「ああ、構わんよ。食べ放題だからって無茶はしない主義さ」


 スバルは出費のことなんか気にせず、楽しそうに肉をひっくり返している。

無茶はしないなんて言っておきながらも、テーブルには次々と肉が追加されていった。


「そんな顔で見て・・・・・・僕のことを変人だと思ってる? だけどこれ当たり前なことで、自分のためじゃなくて人のためにお金を使った方が幸福度が高いんだよ」


「だとしても・・・・・・流石に5人分は・・・・・・」


「言ったろ、結構持ってるって」


 決してスバルは具体的な数字を言わないが、一体いくら持っているのだろうか。

電子機器の修理代がどのくらいだか分からないから、全くどれくらいという目星も立たない。


「スバルも食べな。肉はボクが焼くニャ」


「お、すまないね」


「なに任せておくニャ。そのかわり今度はきららも連れて行ってあげてニャ」


「そうだね。次は一番高いコースにしようか・・・・・・」


 ゴローの言葉に、スバルが更に調子に乗る。

私も、今後の展望にきららの名前が出てきて「ああ、助けに行くんだな」と自然と覚悟のようなものが出来上がった。


「さて、じゃあきららの名前も出たことだし・・・・・・もう一段階切り替えようか」


 そう言いながら、スバルは網からひょいと肉をつまみ上げる。


「次は少し真面目な話だ」


 すぐ正面に居る私の目を覗き込んで、スバルが口に肉を放り込む。

私はそのスバルの神妙な顔つきを見ながら、杏仁豆腐を注文した。


「さて、いよいよ明日救世主に挑むわけだが・・・・・・君たちのすべきこと、僕の考えていることを共有しよう」


 いよいよスバルが本題に入る。

やっぱり流石にただ焼肉を食べにきたというわけじゃない。


「そうね」


 やっと、やっとだ。

ずっと待ち侘びていた決戦の日。

明日で、全て決まるのだ。


「まず最初に、これは皆分かっているだろうが、絶対に君たち全員が救世主の前に揃うことがあってはならない」


「それは・・・・・・」


「まぁそうでしょうけど・・・・・・」


 そうだ。

分かっていたが、その意味を考えるのが少し遅かった。

つまり誰か一人は結局残るということになるのだろうか。


「まぁまず聞いてくれ。言っとくが、やると言ったからには君ら全員に協力してもらうよ」


「つっても、あたしら全員が出向くわけにはいかないんだろ・・・・・・?」


 どらこが肉を噛みちぎって言う。

それにスバルは顔色一つも変えずに答える。


「一人、直接出向かなくても戦える奴がいるだろ?」


「それって・・・・・・」


 どらこも私も、いつも接近戦だ。

つまり消去法で残るのは必然的に・・・・・・。


「私・・・・・・ですか・・・・・・?」


 何故だか申し訳なさそうに挙手するみこ。

それにスバルは頷いて答えた。


「そうだ。君なら遠隔地でもドローンなりなんなりを飛ばせるだろ。だからせっかく修行もしたんだが・・・・・・今回は支援に回ってもらう」


「は、はい・・・・・・」


 神妙な面持ちでみこが頷く。

手のひらを握ったり開いたりして、それを見つめていた。


「そして・・・・・・対救世主用に、兵器はコイツを使う」


「ちょ、ちょっと・・・・・・! そんなもんお店に持ち込んでんじゃないわよ!」


「心配するな、人には無害だよ」


 そう言ってスバルが取り出したのは、丁度ジュース缶くらいの大きさの円筒形の何かだった。

私たちはこんなものに触れた覚えはないので、おそらくあの廃工場での製造レーンにはのっていない。


「これは妨害グレネード。きらきら粒子の活動を阻害するものだ。君らが秘密基地に来たとき、君らの能力を封じたろ? あの光と同じものさ。きらきら粒子の活動の抑制だから、フツーの人間にゃなんも起きんよ。せいぜいちょっと不幸になるくらいだ」


「無害じゃないじゃないの・・・・・・」


「まぁ一時的なものさ」


 スバルが手のひらの上でグレネードを転がす。

うっかり爆発させないか不安だ。


「ともかく、君らの能力を封じた技術、それによって救世主の活動を一時的に停止させることが出来るはずだ。相手はきらきら粒子から出来てる。きっとよく効くぞ・・・・・・」


「そ、そうなの・・・・・・」


 しかし、と一つ引っかかる。

つまりそのグレネードを使えば・・・・・・。


「私たちの能力が・・・・・・」


「うん、そうだね。さくらが考えていることは正しいよ。グレネードの効果範囲内では、君たちは能力が使えない。まぁ粒子の性質上、そういった理屈を超えることも出来なくはないんだろうが・・・・・・不可能だろう」


 スバルは私の考えに「正解」を出す。

救世主も動かないけど、私たちも対抗する力を失う。


「そこで必要になってくるのが、君・・・・・・さくらだ」


「え?」


 スバルがテーブル越しに私の肩を叩く。

私の目を覗き込んで、続きを言った。


「君が一番きららと仲が良いだろ?」


「は? そんなわけないじゃない」


「いや、君が適任なんだ。・・・・・・ともかく、君たちも能力が使えないんじゃただの子供だ。ただそれは救世主にとっての話だ。きららからすれば、君たちは特別な存在・・・・・・」


 スバルの並べる言葉に、息をのむ。


「つ、つまり、どういうこと・・・・・・なのよ・・・・・・?」


 フッと、スバルが笑う。


「呼ぶんだよ、きららを。一時的に活動を停止した救世主から、きららを呼び出すんだ。そして自らの手で出てきてもらうのさ!」


「そ、そんなこと・・・・・・」


 出来るの・・・・・・?


 きららが救世主の中でどんな状況にあるのかわからない。

ゴローを通じて、生きているらしいという情報だけが手元にある。

でも、きららならもしかしたら・・・・・・という気持ちもあるのだった。


「出来るさ。君たちなら」


 スバルが確信した目つきで、私の肩を握る。


「今から僕たちは大きな戦いを始める。僕らにとっても、人類にとっても、大きな意味がある。君らが作り上げたものはもはや百鬼夜行ではないのだよ。新しい僕らの始まり、チームだ。僕らは・・・・・・そう、スペクターズ。世界を覆す大部隊なんだ!」


 スバルの目は、遠くを見ている。


 本当に切り替えの早い奴だ。

少し前まで、自らの命で罪を清算しようとしていたのに・・・・・・今はずっと未来を見ている。

企んでいる。


 きららを助けることは、もう前提で今やスバルにとっては通過点でしかないのだと思い知らされる。


「・・・・・・でも、名前は・・・・・・ダサい」


 スバルの熱から逃げるように視線を逸らす。

スバルには敵わない。

今出来る精一杯の抵抗だった。


「なぁに、こういう名前ってのは多少ダサいくらいが一番カッコいいのさ。スペクターズは僕らの部隊・・・・・・舞台だ。僕たちが主役なんだよ。だから、救世主なんかで苦しめられてる場合じゃない。今から始まるんだ」


 スバルは始まりを強調する。

もしかしたらこれが何かの転換点になるのかもしれない・・・・・・冗談抜きでそう思わせる説得力があったのだ。


 でもならば尚更・・・・・・。

もう少し格好いい名前の方が良かったのでは・・・・・・。

続きます。

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