スペクターズ(40)
続きです。
元はと言えば、この事件の元凶は僕だ。
バール事件も、被害者が命を落としたものは全て救世主の仕業。
そしてきららも、助けられなければその一人だ。
僕は犠牲を出し過ぎた。
だから・・・・・・。
わがままなのは分かってる。
子供なのは分かってる。
けれども、もうどうしようもないことを償いたいのだ。
そして、これ以上背負う罪を大きくしたくないのだ。
これで僕が死ぬなら、正直それでも構わないと思っている。
死んだら許してくれる・・・・・・って、そういうわけじゃないが。
とにかく、そういうことだから、無駄かもしれなくても僕は認めたくないのだ。
「そうよ、私たちはどうするか分からない。いや・・・・・・むしろ分かりきってる。あんたが負けたらどうするかなんて」
さくらが僕の明言を急かす。
どらこも、ゴローも、こちらを見つめて逃すまいとしている。
「しかし・・・・・・」
さくらたちを戦わせたくない理由はある。
しかしそれは、そのほとんどが僕のわがままによるものだ。
だからそこから言葉が続かない。
「しかし・・・・・・?」
どらこが腕を組んで、まるで僕の心の内を見透かしたかのように続きを促す。
「君たちが前に出ると・・・・・・きららがどうなるかわからない」
「それはあたしら全員が前に揃った場合の話だろ。ちゃんとあんたの話聞いちゃいるんだよ」
「くっ」
どう切り返す?
どう躱す?
その苦悩が、表情にもろに出てしまう。
そのことに気がついた頃にはもう手遅れだ。
「お願い・・・・・・出来ないですかね?」
おそらく僕のハリボテは破壊された。
みんなの為を考えて、だからみんなの為に一人で戦地に赴こうとする勇者じゃないとバレてしまっている。
利己的なガキだと、バレてしまっている。
それなのに、そういうみこの表情には失望や軽蔑などの色は浮かばなかった。
僕が見込んだ少女、みこ。
こんな僕を前にして、こんな顔が出来る少女。
アンチェインドじゃなくたって、きっと特別な人間なんだと、そう感じさせられた。
そしてそんな少女に、その仲間たちに、こんなに必死にならせるきららという少女は僕の知識が及ばない程の何かを持っているのかもしれない。
初めて、きららの存在を強く意識したタイミングだった。
彼女たちにとって、ユノにとってすら重要な何か。
それに気づけなかったのは、賢いつもりだった僕だけというわけだ。
「そんな・・・・・・しかし・・・・・・」
「まだ言ってるかニャ・・・・・・。ボクからしちゃ、キミもさくらたちも何も変わらない。ただの子供ニャ。だからキミだけで戦わせない。そして、キミが戦うって言うならボクはさくらたちを止めることは出来ないニャ。キミが何もしないならボクが勝手に助けに行って、さくらたちにも手を出させないけどニャ」
ゴローが的確に退路を断つ。
いや、退路など無いということを教える。
僕が戦わないか、皆で戦うか、それしかないのだ。
それしか許さないのだ、目の前の少女たちが。
「私たちだって、死にに行くつもりはないわよ」
いつか僕が言った気のするセリフで、さくらがダメ押す。
その瞳の揺るがぬ光が、強い意思を表している。
その光は、僕の選択肢を奪ってしまうのだった。
「・・・・・・分かったよ。負けた」
両手を上げて、ため息と一緒に項垂れる。
文字通りの、お手上げだ。
「・・・・・・ただ、絶対に誰も死なないでくれよ・・・・・・」
弱さが露呈する。
無様に、汚い自分が引っ張り出されてしまう。
「任しときなさいよ」
「心配要らないです! 一杯修行しましたし!」
さくらは満ち足りた自信を演出して、みこは僕の席を用意して手を引くような笑顔を向ける。
「だってさ。どうする?」
最初は優位だったはずの形勢が逆転する。
化けの皮が剥がれた僕は、彼女たちにとってもうそういう存在なのだ。
「・・・・・・ああ、頼む。協力してくれ」
僕は自暴自棄な償いを禁じられた。
ズルは許さないってわけだ。
それなら、分かったよ。
少しばかり、真っ当に生きてやるさ。
続きます。




