百鬼夜行(3)
続きです。
階段を駆け降りて、その降りた場所の近くにある電話をぺぽぱぽする。
押すべき番号はもうすっかり染みついていた。
電話の呼び出し音が耳を覆う。
それは瞬きを二回する間に繋がった。
「もしもし? さくら?」
『もしもし。にしても随分大変なことになってるわね・・・・・・』
さくらの声が電話線を経て届く。
その声は、もう私の要件が分かっているように振る舞っていた。
「さくらも知ってたんだ」
『当たり前じゃないの。今でもテレビでやってるわよ。もう朝からずっとよ』
「え、まだやってるの?」
さくらと話しつつも、居間のテレビの方を気にする。
その視線に気づいたのか、ゴローがテレビを点けてくれた。
障子に遮られて画面が少し隠れているが、音は問題なく届く。
確かに話している内容は突然現れた道路のことのようだった。
「まさかこんなに話題になるなんて・・・・・・」
これといった特徴も無い田舎なので、テレビに取り上げられたことなど見たことがない。
隣町なら時々最高気温とかで話題に上るけど、こっちは全くだった。
それが今、こうしてテレビに取り上げられて、しかもかなり話題になっている。
起きていることがちょっとアレだけど、こういうのを見ていると少し特別な感慨があった。
『そりゃね、流石に一晩で正体不明の建造物が出現したってなったら流石にほっておけないでしょ』
「アンキラサウルスだと全然話題になんないのに・・・・・・」
『その理由はもう知ってるでしょ』
最初の頃にゴローから説明を受けたことだった。
アンキラサウルスは認識を歪めている。
だから人々はその脅威を知っていながら、大きな対策を講じない。
『それに・・・・・・これだけ騒がれてるなら逆にアイツらが関わってるっていう証拠にもなるわ』
「た、確かに・・・・・・」
関わってるのはアンキラサウルスじゃない。
それでじゃあ誰がこんなことをするかと言えば、やっぱりユノたちだけだった。
最初からそうだとは思っていたが、これで確定する。
「とりあえず・・・・・・集まった方が・・・・・・いい、かなぁ?」
ゴローの顔色を窺いながらさくらに聞く。
ゴローは一旦集合することを推奨するようで、私の目を見るとすぐに頷いた。
決して声は出さない。
たぶん電話の邪魔にならないようにしてのことだろうけど、別にさくらとだし喋ってもらっても全然構わないのだけど。
『そうね。とりあえずきららの家でいいかしら・・・・・・?』
「ああ・・・・・・・・・・・・うん」
寝間着のままの自分を見下ろして、着替えやら何やらをする時間について思考が巡る。
けれどはっきりとした答えが出る前に頷いてしまった。
まぁ大丈夫でしょ。
『分かった。それじゃ二人には私から連絡しておく。ノワールは・・・・・・まぁ勝手に来るでしょ』
さくらが話を押し進める。
ちょっと悪いなぁなんて思いつつも、本人がやる気なんだから別に甘えても構わないだろう。
「ごめん、ありがとう。それじゃ・・・・・・」
『うん。じゃあまた後で』
これからどうするか、その目処が立つ。
それに伴って私がやるべきことも決まってくる。
まずは着替えだ。
本当はシャワーを浴びたいけど、そんな余裕は無い。
今は道路が不気味なくらい静かに佇んでいるだけだが、事態はいつ動き出してもおかしくないのだ。
服を着替えに、さっき飛び出した自室へ引き返す。
階段を一段飛ばしで登る。
ちょっと躓く。
そうして、再び自室のドアを開いた。
事態はいつ動き出してもおかしくない。
そう、それは今既に動き出していてもおかしくないのだった。
外を見たときに、開け放したままだった窓。
丁度そこから、素早く動く影が部屋に飛び込んで来るのが見えた。
「あ・・・・・・」
色々と察した頭が一周する。
間抜けな声が漏れる。
そうして今日が、始まった。
続きます。




