秘密基地侵攻(6)
続きです。
暗い通路を滑ると、その先には眩しいくらいに明るい部屋が待ち構えていた。
天井も壁も床も、全てが銀色の金属で出来ていて、その床と天井を縁取るように照明が光っている。
「すごい・・・・・・ほんとに秘密基地だ・・・・・・」
普通こういう滑り台形式の入り口には着地するまでの加速度を殺すクッションがセットだと思うのだが、そんなものは無い。
だからぶつけて痛む尻をさすりながら、広がるアニメの中みたいな景色を見渡していた。
その銀色の中に佇んでいるノワールは浮いている。
この景色には黒が・・・・・・そもそも小学生が似つかわしくないように感じた。
「ああ・・・・・・きらら、そこに居ると・・・・・・」
「痛っ・・・・・・!!」
ノワールの言葉の途中で、背中に衝撃がやってくる。
そのまま着地点で座っていた所為で、後続のさくらに蹴られてしまった。
体に乗っかるさくらの足から、土の匂いを感じた。
「いたた・・・・・・」
さくらもさくらで足の付け根に手をやって痛がっている。
「言わんこっちゃない・・・・・・」
そう言って、ノワールはため息を吐いた。
どうせならもっと早く言ってもらいたかった。
「ちょっときらら・・・・・・大丈夫?」
「じょぶじょぶ・・・・・・」
などと返事をするが、とりあえず速やかに私の上からどいて欲しい。
たぶん訓練してない人間がやっちゃいけない角度で前屈してる。
腰だか背中だかの筋肉が引き伸ばされて正直かなり痛い。
追い討ちが来る前に、先に立ち上がったさくらの手を借りてノワールの側に移動する。
その際さくらは「不親切ね」とこの設備に文句を呟いていた。
「よっと・・・・・・」
次に降りてきたどらこちゃんは、持ち前の運動能力で上手く着地する。
少し勢い余るが、私やさくらのように尻を痛めることなく足での着地に成功していた。
少し遅れて、ゴローを抱き抱えたみこちゃんが、ぺっと出口から吐き出されるように出てくる。
体を強張らせていて、一回バウンドしたらべちゃっと前のめりに倒れた。
顔面からいっていたので、心配してどらこちゃんが駆け寄る。
「大丈夫か・・・・・・?」
「私、こういうのは苦手みたいです・・・・・・。体に力が・・・・・・」
そう言って両手をついて立ちあがろうとするみこちゃんの下から、ゴローが這い出す。
その後、どらこちゃんはみこちゃんをおぶり、こちら側まで戻って来た。
「大丈夫・・・・・・?」
戻って来たどらこちゃんに尋ねる。
どらこちゃんはみこちゃんの顔をチラッと見た後、緩く笑った。
「大丈夫だよ。ちょっと体に力が入らないだけだ」
「あんた・・・・・・力持ちね・・・・・・」
そう答えるどらこちゃんを見て、さくらは羨むように言った。
さくらが力持ちに憧れるというのも意外だ。
「まぁともかくこれで潜入完了ニャ」
ゴローがまとめる。
秘密基地の大して広くもない一室、そこに裏切り者と部外者が肩を並べて集っていた。
「さて、じゃあ進もうか」
ノワールがこの部屋に一つしかない扉に向かって歩き出す。
今度の扉はパスワードも要らず、ノワールが近づくだけで開いた。
その先にはこの部屋と同じように隅に照明で線を引いた細長い通路が伸びていた。
「戦いは・・・・・・まぁ、避けられないわよね・・・・・・」
さくらが言いながらポケットに手を突っ込む。
私もそれを見てなんとなくリュックサックを揺らして位置を整えた。
ノワールの背を追って歩き出す。
複数の足音が重なり、今はまだ私たち以外誰もいない通路に響く。
見慣れない風景に緊張が高まり、思わず唾を飲み込む。
話を聞いていた段階ではふわふわしていたものが、一気に質量を得て現実味を帯びる。
視界に伸びる銀色の通路がどこまでも延々と続いている錯覚をする。
「頑張ろうね」
何を、だとか具体的には分からない。
けれども、これで本当に始まってしまうのだ。
宣戦布告に等しい。
逃げ道は、もう無い。
「・・・・・・そうだな」
「ですね・・・・・・」
二人が伸びる通路の奥を覗くようにして応える。
さくらも同じ方向を睨むように見据えてそれに続く。
「そうね」
それらの声を受けて、基地内の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。
頭が張り詰める。
整う。
力強い足取りで、ノワールを追った。
続きます。




