ゆーま(31)
続きです。
「なんなのよ・・・・・・これ」
目の前の光景にさくらが唖然とする。
木々は薙ぎ倒され、辺りに黒い粉が充満している。
それらは倒れた木々に纏わりつき、その表面を黒く汚していた。
「これ・・・・・・さっきの・・・・・・」
手のひらを見る。
指にはまだ汚れが残っていた。
その色を握りつぶして、前を見る。
黒い粉が渦を巻くようにしてその中心を隠していた。
「慎重に進むニャ・・・・・・。まだこの黒いのの正体も分からない。迂闊に触れるべきじゃないニャ」
「あ、それならあたしもう触ったわ」
ゴローに手のひらを見せる。
その後息を止めて黒の渦に顔を突っ込んだ。
「ちょっと・・・・・・大丈夫なの?」
そう言いつつも、さくらも渦に首を突っ込んだ。
その渦の中心、そこにも黒い粒子は充満しているが密度は薄い。
風景こそよく見えないが、そこには対峙するきららとアンキラサウルスの姿があった。
全身真っ黒の痩躯に巨大な翼。
首らしい部位が存在せず、胴体にそのままくっ付いた頭に赤い目が二つ光っていた。
この姿には見覚えがある。
「モスマン・・・・・・か?」
「何それ・・・・・・?」
「・・・・・・知らん」
さくらに聞かれたが、何と言われれば全く分からないのだった。
「みこ・・・・・・!」
同じように渦の内側を覗いていたみこの母親が叫ぶ。
それと同時に駆け出してしまった。
「ああ、おい!待て!あたしが行くから・・・・・・!」
引き留めようとするが、声は届かず行ってしまった。
対峙するきららとアンキラサウルスは剣と腕を交えているが、みこの母さんに気づく様子はない。
どうやらどちらも、視界は制限されているようだ。
みこの母親がみこを引きずるようにして、こちらへ戻って来た。
腕の中のみこは真っ白な顔をして、目を瞑っている。
その腕には黒い粉が纏わりついていた。
「お、おい・・・・・・大丈夫なのか!?」
「そんなの・・・・・・私が知りたいよ・・・・・・」
みこの母さんも血の気が引いた顔をしている。
そりゃそうだ。
自分の娘がこんな状態で平気な顔をしていられるわけがない。
やっぱり、あたしは考えが足りない。
あたしがいくらみこのことが心配だって、忘れちゃいけないことがあるだろう。
「・・・・・・大丈夫ニャ。生きてる。服が血で濡れているようだけど、止まってるニャ」
あたしがこうしている間にも、ゴローは状態を冷静に分析する。
確かにみこの服は血で濡れていた。
だがどうやら、この纏わりついた黒い粉の影響で血が止まっているように見える。
粉が血を含み、固まり、傷口を塞いでいる。
「みこ・・・・・・」
さくらがみこの前髪を掻き分けて、顔を覗き込む。
額にも黒い粉が薄く乗っていた。
「とりあえず、みこを連れて逃げるニャ。きららはまだ大丈夫ニャ!」
ゴローが言う。
しかし、それを遮るように飛んできた剣が地面に突き刺さった。
「それがそうもいかないみたいだ」
きららの方を見る。
きららはアンキラサウルスに押し倒されていた。
完全に体を拘束されている。
「・・・・・・大丈夫ニャ。きららは死なない。今は逃げるべき・・・・・・」
「いや」
あたしは頭が回らない。
気も使えない。
超能力が無ければ誰かを助けることも出来ない。
それは散々思い知ったことだ。
だけど・・・・・・。
だけど、目の前に追い詰められてる奴が居てそれを無視できる程頭が良くない。
だから・・・・・・。
剣につかまり、立ち上がる。
「どらこ・・・・・・!」
ゴローが止めようとするが、その頭に手を置く。
「それに、きららが死なんでもあんたが居なきゃ戻ってきたとき元も子もないだろ?」
同然このままにしておいたらきららは攻撃を受け、宝石は壊れる。
いつも扱いは雑だが、居なくなったら悲しむだろう。
「どら・・・・・・」
ゴローの頭を押してアンキラサウルスのガラ空きの背中に向かう。
握った剣にはどう言うわけか炎が灯った。
なんだか分からないが・・・・・・。
「こいつは丁度いい・・・・・・!」
アンキラサウルスの背中を蹴って跳ぶ。
黒い粒子も焼きながら、体重を乗せてその背中を斬りつけた。
続きます。




