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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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ゆーま(17)

続きです。

 車で見たアクション映画を思い出しながら、出口の扉に背中を貼り付ける。

肩越しに覗いた扉の外には黒い塊が蠢いていた。

「やれやれ・・・・・・最悪のカーペットだよ・・・・・・」

 自然口調も映画の主人公に引っ張られて、中途半端なゆで卵になってしまった。

 向かい側にいるどらこちゃんに、目で合図を送る。

どらこちゃんは黙って頷いた。

 地を蹴って扉を肩で押す。

どらこちゃんも同じようにして外に飛び出した。

瞬間、蠢く虫たちがわらわらとこちらに向かってくる。

その狙いは間違いなく私のようだった。

 しかし、それを避けることはせず、逆に飛び込む。

素肌を這われようものなら、あの女性と同じ道を辿ることになるだろう。

だからそれを許さないように、跳ねるようにして虫を踏み潰す。

どらこちゃんも躊躇いなくそうしていた。

「あれ・・・・・・足の裏こびりついてんじゃないの・・・・・・」

 私の後を追ってきたさくらが、虫への嫌悪感を剥き出しにして引く。

「大丈夫ニャ。キラキラ粒子になって霧散するから何も残らないニャ!」

「そう・・・・・・」

 さくらも恐る恐るだが、つま先でつつく。

ときどき「ひぃっ・・・・・・!」という叫び声が聞こえた。

「くっそ・・・・・・!一体何匹居るんだよ!」

 どらこちゃんの言うように、潰しても潰しても溢れてくる。

当然足裏だけでは処理しきれない。

虫たちは確実に増えていっていた。

「あ・・・・・・もう!もっと効率よく叩けないかなぁ・・・・・・」

 ゴローに何か持って来て貰おうかと考えるが、肝心のどんなものなら一網打尽に出来るかというそれが思いつかない。

「きららちゃん!きららちゃん!」

 そんなところに飛び出して来たのはみこちゃんだった。

その手には消火器を重そうに抱えている。

「きららちゃん!これ・・・・・・火炎放射器です!!」

「え・・・・・・は?何言ってんの?」

 どう見ても消火器だ。

白い泡だか粉だかよく分かんないやつがぶわーって出るあれだ。

「違うニャ、きらら・・・・・・。あれを火炎放射器に変えろってことだニャ」

「え・・・・・・あれを?」

 火をつけるのと消すの、真逆のイメージだ。

剣ほど単純な代物でもないし、上手く形に出来るかどうか・・・・・・。

「タンクに入ってるのが燃料!出てくるのが火です!消火器からそのまま繋げられるはずです!」

 言いながらみこちゃんが駆け出す。

容赦なく虫を踏み潰しながら。

 頭の中が消すと着けるで全然違うじゃないかで一杯になっていたところに、単純なイメージが浮かび上がる。

出るものが違うだけ。

消火器から炎が吹き出す様は何故だか妙にしっくりくるというか、容易に想像出来たのだった。

「ありがとう、みこちゃん。ちょっとやれそう・・・・・・!」

 勢いを殺しきれなかったみこちゃんを胸で受け止める。

あばらの隙間に消火器の突起が食い込んだ。

「わわ・・・・・・すみません!どうぞ!」

 そしてその手から消火器を受け取る。

姿は変わらないが、その時点で既にこれは火炎放射器だ。

消すために生まれてきたのに、少し気の毒だ。

 思えばそもそも消火器の使い方すら知らないが、タンクを右手に、ホースのような部分を左手で伸ばした。

「みこちゃん・・・・・・ちょっと危ないよ!」

 みこちゃんに私の後ろに回って貰って、消火器のレバーみたいなのを思い切り握った。

バキッとプラスチックが割れる音がして、ピンが弾け飛ぶ。

「あづっっっ!!」

 瞬間、ホースの先端から炎が扇のように広がった。

「実際の挙動とはちょっと違うですが・・・・・・いけます!」

「うっしゃああああっ!!」

 火炎を地に向ける。

それは地面にぶつかり広がって、広範囲の虫を炙った。

炎は燃え広がり、連鎖的に虫を絶命させていく。

火の粉の代わりにキラキラ粒子が空間を埋め尽くした。

「うわっ・・・・・・すっげぇな・・・・・・」

「綺麗は綺麗ね。あの数だけ虫がいて、あの数だけ死んでるってわけだけど・・・・・・」

 どらこちゃんとさくらが、広がる炎から逃げるように扉の前に戻る。

ゴローはあまりのキラキラ粒子の多さに逃げ惑っていた。

 それでも更に粒子の密度は濃くなる。

ほとんど周りの景色が見えないくらいだ。

 だから、近づいてくる影に気づくことが出来なかった。

「なっ・・・・・・!?」

「うわっ・・・・・・」

 体が巨大な腕に掴まれる。

訳もわからないまま、体はキラキラ粒子が充満している空間を抜ける。

そこは空だった。

「みこぉぉぉ・・・・・・!!」

 どらこちゃんの叫ぶ声が薄ら耳に届く。

みこちゃんも同じように巨大なものに掴まれて、目を白黒させていた。

 私たちを掴んでいるのは腕ではなく、足。

巨大な鳥の足だった。

「な、なんですか・・・・・・!?」

 見上げれば、青空に紫電を帯びた巨大な翼が広がっていた。

顔つきはワシのような猛禽類の鋭い顔をしている。

その目は、真っ直ぐと前を向いていた。

 やがて、巨大なワシはその翼を畳む。

「わ・・・・・・わ・・・・・・!」

 ワシはそうして突然急降下を始めたのだ。

みこちゃんがそのスピードに声を上げるが、私は声すら出せずに気が遠くなってしまった。

 最後に見えたのは、空から見下ろした深い森の緑だった。

続きます。

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