ゆーま(12)
続きです。
瞼越しにうっすら朝日を感じる。
もう目覚めている人がいるみたいで、誰かの歩く音やテレビのニュース番組の音が聞こえた。
お腹の上に何やら重さも感じるが、たぶん誰かの足が乗っているものと思われる。
その足を半ば無意識的にどかそうとした。
しかし動かした腕は空を切り、何にも触れない。
仕方なくそのままにしておくことにした。
「じゃなくて・・・・・・!」
ボフッと足がお腹の上で跳ねる。
「いいかげん起きなさいよっ!」
「んんー・・・・・・」
あくびを噛み殺して、仕方なく上半身を持ち上げる。
目は開ききらないが、周りの景色はぼんやりと捉えていた。
「ん・・・・・・あれ?」
体を捻ると、背骨が鳴る。
何故か私は敷布団の境目に寝転がっていて、枕も膝の上でシワだらけになっていた。
私が寝ていたはずだった場所には、掛け布団のみが身代わりのように丸まっていた。
そして膝の上の枕の、さらにその上にはさくらの足が乗っている。
「んぁ・・・・・・?」
寝起きで頭が回らない。
「つまりどういうことだ?」と思考が停滞していた。
布団にうつ伏せになるさくらは既に私服に着替えている。
周りを見ると、どうやらみんな既に着替え終わっているようだった。
「いつまでもボーっとしてないで・・・・・・早く準備しなさいよ」
さくらが体を起こして、私の寝癖を引っ張る。
だがそれを気に留めることもなく立ち上がった。
「・・・・・・トイレ」
ふらふらしながら襖に向かう。
「ちょっと・・・・・・あれ大丈夫なの?」
「まぁ無理矢理叩き起こしたときはいつもこんな感じニャ・・・・・・」
さっきまでぐちゃぐちゃだった布団は今は整然と畳まれている。
まぁ旅館的には二度手間になるからそのままの方がいいという話を聞いたこともあるが・・・・・・。
朝食はまだ済ませていない。
目的地に向かう途中で、どこかで買うなり食べるなりする予定だそうだ。
何やらトレッキングだか何だかということで、みんな動きやすい格好をしている。
普段はスカートの三人も今日はズボンだ。
私はゴローがどこかから引っ張り出して来た帽子も携えている。
UFOみたいな形のやつで、今は顎紐をリュックに括り付けてぶら下げてある。
「さて・・・・・・。みんな準備出来たね!忘れものない?」
みこちゃんのお母さんが、荷物を持ち上げながら辺りを見回す。
畳が朝日を浴びて、うっすら光っているように見えた。
ここともお別れか・・・・・・と、ちょっと残念のようなもったいないような気持ちになる。
ほんの一夜だったけど、楽しかった。
みこちゃんたちが、忘れもののチェックをしながら出口へ向かう。
そんな時でも、私は窓から見える景色を眺めている。
「綺麗だニャ・・・・・・」
「うん。綺麗だね」
朝日が山の稜線を滑っていた。
溢れた光が液体のように麓の街を満たす。
「ほら、きらら・・・・・・。行くぞ」
どらこちゃんが肩を叩く。
それに振り向くと、他のみんなはもう出口付近で待っていた。
「うん・・・・・・!」
返事をして、そちらへ駆けていく。
まだ感傷に浸るには早い。
むしろこれからなのだ、この旅は。
ちょっと名残惜しいけど、部屋のドアを閉じる。
「じゃあ・・・・・・行きましょうか」
みこちゃんの合図で私たちがいた部屋に背を向け歩き出す。
掃除の行き届いた廊下に柔らかい朝日が満ちていた。
続きます。




