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腐食世界のガーデンテイマー  作者: 時雨オオカミ


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16/16

はじめての探索

 オリウルも住民になったことだし、現状確認をしておこう。

 ガーデンの仲間は今三種類で、ワームースが三匹。ワルフルが五匹。オリウルが一羽。

 ガーデンの表層浄化率は80%になっていて、中層にもすでに手が入り始めている。

 

 ワームースの能力を考えると既に表層浄化率は100%になっていないとおかしいんだけど、それは達成できていない。

 原因ははっきりしている。

 ガーデン内にどうしても壊せなかった大きな瓦礫があるからだ。初期からある、荒れた庭だった証拠品。それにまだ、手も足も出せていない。

 

 スコップでは歯が立たないし、ツルハシを使っても削れない。破壊不能オブジェクトになっているんだろう。あるいは、初期装備では壊せないとかそういう感じなのだろうか。このゲームの方向性的に、解決できるモンスターを入手してからプレイヤーでも解決可能になるパターンだと思うけど。

 ……ともかく!あれをどうにかしない限り、完全な表層浄化は望めない。

 

 それに、昼間も夜間もすでに住民になっている子たちと同じ種族の腐食モンスターがほどほどに来訪して荒らして帰っていくので、浄化率が行ったり来たりする場面も……。

 

 これに関しては多分、このガーデンとか、地域?とかを完全攻略したら地域ごと浄化完了!みたいになるんじゃないかなと予測している。MMOだからそんなことはないのかな……そこまで辿り着けば分かるか。

 

  それはさておき、破壊不能オブジェクトと化している瓦礫のことについてである。

 解決するモンスターが必ずいると私は踏んでいるのだが、ずばりその鍵を握っているのは……。


「やっぱり、あのクマだと思うんだよね」


 独り言みたいに呟きながら、図鑑を開いた。

 例のクマ型モンスター。正式名称はまだ表示されておらず、ログには【溶け落ちたクマ】とだけ表示される謎のモンスター。


 ――――――


 No.003

 

名称【???】

 

・  分類:???

・  原型食物:???

・  原型生物:クマ

・  危険度:D

・  レア度:N

・  大きさ:4タイル(2×2)

・  生息地域:枯れ果てた草原

・  好物:???、???

 

・  来訪条件:

 20タイル分の汚染されていない草地がある。

 ガーデンに分類:スイーツのモンスターが一匹いる。

 

・  住民化条件:

 30タイル分の汚染されていない草地がある。

 ガーデンに分類:スイーツのモンスターが一匹いる。

 所属する???が存在しない。

 ???

 ???

・  汚染タイル数: 陸上5

 

・  能力:???

 

・  備考:???

 

・  生態観察:???

 

――――――

 

 ハテナの項目は残り二つ。

 来訪条件は満たしているし、住民化条件もかなり見えている。でも、肝心なところが足りていない。


 今のところ見当もつかないようなものだけど、でも推測してみることはできる。

 オリウルが来たときにも考えたが、恐らくあのクマは三番目にあった大きな卵のモンスターだ。甘いバターのような香りのあの卵。


 ただ、それだけでは住民が条件は推測できない。あともうひと押し、なにかヒントがあったらなあ……。


「……真剣に悩んでおられますが、どうされましたか?」


 声をかけられて、ようやく考え込みすぎていたことに気がついた。顔をあげてシーちゃんの顔を見上げると、ハイライトのない深緑の瞳と目が合う。黒に侵食されたような、淀んだ緑色。あれ、こんな色だっけ?と考えてみたが、そういえば初対面のときの軽い印象だけで、この子のこと自体はそこまで観察していなかったなと思いつく。


「えっと、あのクマ型モンスターの住民化条件をどうにか推測するヒントがどこかにないかなあ……と思ったんだけど、なかなか思いつかなくてどうしようかなと悩んでた……っていうのかな」

「……ユウ様はとても真面目なかたですね。サポートをするシーも嬉しく思います」

「そう?役に立ててるなら良かった」


 背筋をピンと伸ばしたシーちゃんが「そこで提案なのですが」と続ける。いつも無表情だし、そういうキャラなんだな〜と思っていたけど、そう言った彼女はうっすらと微笑んでいた。


「ガーデンの安全性、およびガーデンテイマーの安全性が一定水準を満たしているので、探索に出ることを推奨します」

「探索かあ」


 ここで【探索】という要素が出てくるということは、きっと私の知りたいことにも関係があるということだろうか。それとも、チュートリアルとしての流れをそのまま推奨しているだけなのだろうか。

 でも、わざわざ私の悩みを聞き出してくれたということは、それを踏まえた提案なのだろう。

 初めてガーデンの外に出ることになる。あ、空中都市は除外してね。

 空中都市は人間の最後の楽園。ガーデンは危険地帯と隣り合わせの職場だ。ガーデンの再生のためには、その地域がどんなところであるのかを知ることも重要だろう。

 きっとワームースやワルフル、オリウルにあのクマ以外にもたくさんのモンスターたちがいる。そして、そのどのモンスターもきっと腐食モンスターなのだ。

 身ひとつで探索するにはあまりにも危険だろう。

 けど、シーちゃんの推奨する今なら行ける。


「うん、行くよ」

「……はい、それでは探索前の編成を行ってください。ガーデン防衛メンバーはオートモードへ」


 そうだよね、オートにしていないと、留守中に荒らされ放題になっちゃうし。ここは夜間と同じように自動でワルフルたちが防衛する設定にしておく。夜間に活動していた子たちはフリーで、寝かせてあげといて……昼間に活動できる子たちだけ選定。


「メニューから【探索】の項目を選択してください。探索同行メンバーには、オリウルを編成しましょう」


 なるほど、オリウルが住民になったから探索モードが開放されたのかな?この探索って、勘違いでなければ私も同行するんだよね。なんか空中都市で耳に入ってきた会話的に、プレイヤーも外に行けるはずなんだけど……。


「あなた様のスコップやツルハシは最低限の護身用武器となりますが、あまり期待はしないでください。道具には道具の役割があり、それ以外の用途に使うべきものではありませんので」

「分かった……攻撃とかはできないってことでいい?防御とか」

「どちらも期待できないでしょう。意識を逸らすなどのことは可能かもしれませんが、基本的にモンスターにはモンスターが対応するべきだとCは考えています」


 まあ、即死が云々って会話も聞いたし、そうだよね。モンスターがいないと対処できないからそうなったんだろうし。


「しかし、敵対的な腐食モンスターが現れる場合がございます。その場合、鎮圧可能なモンスターを探索に編成していた場合は応戦することが可能です。今回の【オリウル】は撤退や逃走の補助をするモンスターですので、応戦することはできません。ご了承ください」

「まずは隠れながらいろいろ歩き回って、雰囲気を掴むのが最優先か」

「はい」


 隠れながら獰猛なモンスターがわらわらいるところを探索するっていうのは、かなりスリルがあるなあ。サバイバル要素はないけど、こういうところに緊張感を持たせるような設計になっているのだろうか?

 まあ、どちらにせよ戦闘はモンスターまかせでいいってことだし、バトルがあんまり得意ではない私でもできそう……かな?最低限回避くらいは多分できると思うけど、殴りかかりにいくようなのは苦手だから助かる。


「ご理解いただけましたか?」

「問題ない。知りたいことがあったら、都度聞くね」

「かしこまりました。それでは、十分に注意を払いつつ、オリウルとともにはじめての探索を行いましょう」


 シーちゃんが歩き出すのでついていくと、ガーデンの東の境界線の直前で立ち止まった。


「Cは、子機端末にてお供いたします。いってらっしゃいませ」


 頭を下げて見送る彼女に手を振り、勇気を出してガーデンの境界線を一歩またぐ。


 はじめの一歩!


「ここをまっすぐです」


 声が聞こえて肩を見ると、ちっちゃいシーちゃんがそこにいた。うん、空中都市のときと一緒だね。それに、ガーデンからオリウルがちゃんとついてきてくれている。


 私の頭上で旋回しながら優雅に羽ばたき、警戒してくれているようだ。

 

「じゃあ、行こうか」


 ガーデンから離れていくと、ワープゲートを抜けるような感覚があって、次の瞬間空気が変わる。


 視界に広がるのは、一面植物が【枯れ果てた草原】だ。

 視界に探索地名が現れ、すっと溶けるように消える。


 ガサリと靴がカサカサのなにかに触れる。

 それは、草と呼ぶにはあまりにも頼りないものだった。灰色に褪せた植物の残骸が地面に貼りつくように残っている。

 風が吹くたびにカサカサと乾いた音がする。

 土はひび割れ、ところどころ黒ずんでいた。

 草を押しつぶすような岩もそこかしこに点在している草原。


 ひらけているのに、茶色や灰色で覆われていて息づく緑はカケラも存在しない場所だった。


「……これはまた」


 思わず息を吐く。


「終わった世界、って言われるだけあるな」


 ガーデンの荒廃の仕方も相当だったけど、ここはその比じゃないくらいだ。どこまでも続くような草原だったはずの場所が、ただ枯れ草が延々と続くだけの場所に成り果てている。

 

 他の探索地もきっとこんな感じなのだろう。これがこの世界の規模で起きているなら、それは確かに……生きていけずに空の上へ逃げるしかないかもしれない。それほど汚染された世界は衝撃的だった。

 現代のコンクリートジャングルっぷりも、もしかしたら極めていったら行き着くのはこういう世界なのかなあとか、考えさせられてしまう。

 日頃から食べ物は大事にしてるけど、よりいっそう大事にしたいなあと感じた。

 

 ……いや、ゲームにこんな感想抱くのはちょっと違うか。


「はじめての探索、人はいない?」

「はい、はじめての探索時はお一人で集中することが可能です」


 つまり初回以降はMMOらしくオンラインでも探索することができるということだろうか。それとも、オフラインは存在せずに、サーバー分けとかで大雑把に一つの探索地に何人ずつ入れるとか決まっていたりするのだろうか?

 そのへんは次じゃないと分からないかな。常にオンラインでも人を避ければいいだけの話だし……。

 とにかく、今は一人だけの個別空間……インスタンスエリアとして探索ができるんだろう。それなら、初回のうちに隅々までできれば見て回っておきたいところだ。


 私の目的はまず、あのクマ型モンスターの住民化ヒントを探すこと。


「じゃ、行こっか」


 まずは恐々と、けれどワクワクと――私は探索を開始した。

 

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