どっち
若い頃の親父たちの交わした約束「子どもが生まれたら許嫁にする」
俺は中学に通いながら、そんなもんとは無縁の生活を送っていた。
「祐介」
「誰だお前」
「君の許嫁だよ」
「ーーーーって、男だろ、お前」
全身の毛が逆立った。
「僕も今朝まで全く知らなかったんだが、親父が真面目な話、転校してでも近くにいろ、って言うもんだからさ」
「知るか」
「ゆーすけ、誰その人」
俺の彼女が登校してきた。
「許嫁」
「いーなずけ?」
俺の彼女はそいつの頭のてっぺんからつま先までしげしげと見た。
「合格」
「何が?」
「いい男」
「目がハートだぞお前」
やばい、彼女取られたらどーしよ?
やーいやーい、寝取られー!と小馬鹿にされる未来が垣間見えた。
「お前、なんて名前?」
「祐って書いてひろし」
「なんでそんな名前なんだよ」
「父さんと君のお父さんが取り合いした女性の名前が祐美子さんっていったんだ」
俺のかーちゃん、恵子だし。
「その人お前のかーちゃん?」
「いいや」
2人とも振られとる。
変な友情から自分達の子どもの行く末決めないで欲しい。
「あたしのお母さん、祐美子」
「「は?」」
「どっちがいいかしら?迷っちゃう」
「ちょっと待て!お前は俺の彼女だぞ」
焦る俺。
「僕の方がいいですよ」
「そうねー」
俺はぶるぶるこぶしを握りしめた。
「じょーだんなのに」
ぷぷ、とわらいを堪えている2人。
「本当か嘘かどっちだよ!」
「知らない」
「わからない」
くすくす笑いながら教室に入っていく2人。俺はそれを追いかけて行った。




