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93話 実技試験(4)

  光輝く魔法陣から一人の精霊が召喚された——。


  彼女は優雅に面接官たちの目の前へと舞い降りる。


  おれはしっかりと面接官たちの反応を確かめる。

  すると、一人一人が目の前で起きていることに驚愕しているのが見て取れる。


  さぁ、カエルおじにニワトリおじ。

  おれを否定できるものなら否定してみろ!


  「は……ハリス様? なぜこのような場所に……」


  カエルおじがおれに召喚された精霊に話しかける。


  そうだ、おれは精霊であるハリスさんを召喚したのだ。


  ハリスさんを召喚できるか不安に思うところはあったが、特に問題なく召喚することができた。

  そして、ハリスさんは面接官たちの疑問に答える。


  「私がこの場にいるのはそこにいる少年に召喚されたからです」


  ハリスさんはしっかりとおれに召喚されたと証言してくれる。

  ハリスさんのこのひと言は本当にありがたい。


  さぁ、どうするニワトリおじ!

  さっきと同じ手口で知らない精霊だから認められないと言うのか?


  カルア王国の魔術学校で働く教師がハリスさんを知らないなんて口にすることはできないはずだ。

  それも本人を目の前にしてならば、なおさらのことだろう。


  おれはハリスさんがカルア王国において神格化されている存在だからこそ、この場を乗り切る一手としてハリスさんを召喚したのだった。


  「ハリス様。お久しぶりですドーベルです」


  固まってしまっている他の面接官たちを他所(よそ)にドーベル先生はハリスさんに挨拶をする。


  「久しぶりですねドーベル。何やら嬉しそうに見えるのは気のせいですか?」


  ハリスさんとドーベル先生は知り合いなのだろうか?

  二人のやり取りを見ていておれはそう思った。


  「気のせいなどではございません! アベルくんの想定外の実力に喜びを隠せないのです」


  ドーベル先生は本当に嬉しそうにそう話す。


  なんか、ちょっとマッドサイエンティストっぽくて怖いけど、ハリスさんの知り合いみたいだし平気だよね?


  おれはドーベル先生に色々と感謝はしながらもちょっとだけ引いてしまっている。


  「ふふふっ、そうでしょうね。彼の力は私も認めていますからね」


  ハリスさんのこのひとことで面接官たちの肩が震えたのを感じた。


  なんだろ……もしかして彼女の今のひとことを圧力のように感じたのだろうか?

  このまま合格できたとしても、なんかハリスさんの権力にあやかった形になってしまうよな。


  大臣の息子というだけでも十分なのに、ハリスさんの知り合いとまでなったら不合格にしたくても面接官としては落としづらいだろう。


  ちょっとカエルおじたちを懲らしめるつもりだったのにやり過ぎちゃったか?


  「それで、彼は合格できそうなのですか?」


  ハリスさんは面接官たちに質問する。


  いやいや、ハリスさん!

  それはダメですって!


  圧力になっちゃいますからね?

  ほら、面接官たちが下を向いちゃったじゃないですか!


  おれはハリスさんの圧力とも取れるその言葉に戸惑ってしまう。


  だが、実技試験は言われた通りに精霊を召喚できたからなんとかなるとしても筆記試験が0点でも合格ってできるのか?

  それで合格できたら流石にコネまみれの裏口入学ってことになりそうだよな……。


  そうだ!


  おれはあることを思い出した。


  「そういえばハリスさん! ハリスさんがカルア王国を守ると約束したのはニーア様じゃなくてテオ様という方なんですか?」


  カエルおじたちがおれを信じられないような目つきで見てくる。


  なんでだろうと考えてようやくわかった。

  ハリスさんに《様》を付けていないからか!?


  七英雄たちにも《様》を付けろとうるさかったんだ。

  よく考えてみればハリスさんに対してもみんなハリス様と呼んでいたからな。


  するとハリスさんはおれの質問に答える。


  「テオ様からそのように頼まれましたが一番初めに約束したのはニーア様です。テオ様は兄であるニーア様が私と約束したのを知って、自分からも頼むという形でお願いされました」


  なんだよ!

  ニーアだってしっかりとハリスさんに王国のことを任せたんじゃん!


  おれは自分の解答があっていたことに安心する。

  だが、それとは反対に面接官たちは焦りはじめる。


  「ハリス様、それは本当ですか!?」


  「そんなこと今まで知らされてきませんでしたよ?」


  「そんな……これは新事実だ……」


  何やら面接官たちが騒いでいるな。

  もしかしてこれってハリスさんが秘密にしてたことだったのか?

  だとしたらおれハリスさんに迷惑かけちゃったのかな……。


  これに対してハリスさんが面接官たちへ説明をする。


  「かつての王家はみな知っていましたよ。どこかで伝承が途絶えただけでしょう」


  ハリスさんは面接官たちとは対照的に落ち着いた声でそう語る。

  おれにはわからないが王家の伝承によって七英雄とハリスさんの約束が伝わっていたということなのだろうか?


  「こうなると、筆記試験において彼にも点数をあげないといけないかもしれませんね」


  ドーベル先生はハリスさんの言葉を聞き、そう意見する。


  おっ?

  これはもしかして筆記試験の結果が0点じゃなくなるのか!?


  おれはわずかに生まれた可能性に期待する。


  「もしも、貴方達の勘違いで彼の答えが誤りだとされていたのならば訂正されるべきでしょうね」


  ハリスさんもこの流れを後押ししてくれる。


  そして、カエルおじたちが遂に折れた。


  「ぐっ……。問題10については再度採点をし直すことを約束しよう。少なくとも0点ではないことは誓う……」


  カエルおじはおれにそう告げる。

  ハリスさんの前だから態度にはあまり出していないが、心の底では嫌がっているのが伝わってくる。

  どうしてここまでおれは嫌われてしまったんだろう?


  そして、ドーベル先生が真剣な表情でおれに語りかける。


  「アベルくん、君の試験はこれで終わりだ」


  どうやら実技試験を含め、おれの高等魔術学校の入試はこれで終わったらしい。

  なんか、終わり方が適当じゃないかと思う部分もあるがそういうものなのだろう。


  そして、ドーベル先生は話を続ける。


  「合格だ。来年から私のクラスに来なさい。そこで君の望むような学校生活を送るといい」


  えっ……?


  合格だって?


  おれは少し状況が理解できていない。


  「そんな、ドーベル先生! いくらなんでも決断が早過ぎます!! まだ他の先生たちと話し合いが——」


  カエルおじがドーベル先生の発言に異論を唱える。

  やっぱこの場で合格を言い渡すっていうのは普通じゃないよな。


  「では、先生たちは彼が不合格であるとお思いなのですか? それに、Aクラスに入れろなんて言っていません。召喚術師の彼を、私が持つFクラスに入れると言っているのです」


  カエルおじを含め他の面接官たちはドーベル先生の言葉を聞き考える。

  それからハリスさんをチラリと見る。


  そして——。


  「わかりました……。異論はありません」


  「私もです……」


  「私も……」


  面接官たちが次々におれの合格を認める。


  「アベルくん、この時点で君の合格は決まった。もしよければ来年から私が持つFクラスで学校生活を送るといい」


  ドーベル先生は笑顔でおれにそう言ってくれた。


  本当に合格なのか?



  やったぁぁぁぁああああ!!!!



  一時はどうなるかと思ったけどなんとか合格することができたみたいだ。

  これでサラと一緒の学校に通えるぞ!


  あれ……まだサラが合格しているのかはわからないのか。

  でも、アイシスに聞いていた限りサラは優秀みたいだしきっと合格しているよね!




  ◇◇◇




  そしておれは試験会場から出て、ここへ来たときにサラと別れた場所まで向かった。

  ハリスさんは面接官たちと少し話をしたかったようなので実技試験の会場であるアリーナに残った。

  なんだか今回はハリスさんに助けられちゃったな。

  後でしっかりとお礼を言わないとな。


  そして、おれがてくてくと歩いていると綺麗な藍色の髪をした女の子が視界に入る。

  彼女もおれの存在に気づいたようだ。

  それからおれの方へと駆け寄ってきて声をかける。


  「アベル! 試験はどうだった!?」


  おれに声をかけてきたのはサラだ。

  おれは少し頬を緩ませながら彼女に告げる。


  「合格したよ! 色々とたいへんだったけどね」


  本当に大変な受験だったぜ。

  早く家に帰ってゆっくりと休みたい。


  おれの返事を聞いたサラは笑顔になって喜ぶ。


  「ほんと!? 私も合格したわよ!! 来年からAクラスなんだって!」


  どうやらサラの方も既に合格を言い渡されたようだ。

  なんだか受験の合格というのは、合格者が張り出された掲示板なんかを見て一喜一憂するものだと思っていたから意外だったな。


  それよりもサラはAクラスなのか……。

  おれは確かFクラスと言っていたから違うクラスなんだな。


  「おれは確かFクラスだったよ。残念だけど違うクラスだね」


  おれはサラにそう伝える。


  「そっか……。でも同じ学校なんだからお昼ご飯のときも休み時間も一緒にいられるわよ!」


  うん……?


  休憩時間は一緒に過ごすこと確定なのね。


  まぁ、どうせクラスで友だちなんかできないしサラと過ごせばボッチは避けられるからいいか。


  「ようやく約束が果たせたね」


  おれはサラとあの夜に約束してから2年以上の月日をかけてようやく約束を果たした。

  これからもこうしておれはサラと楽しく生きていくんだろうな。


  そんなことを考えながらおれたち二人は父さんたちが待つ家まで歩いたのであった。

どうも、作者です。


「物語はテンポよく進行」を心がけていたのに、気づいたらアベルたちが魔術学校に入学するまでに第三章がはじまってから10話以上使っていました。


だからといって今後の展開を飛ばして書くつもりはないので安心してください。

今後の予定している展開はカットするつもりはありません。


また、今さらですが2020年の目標を書いておきますね。


まずはこの作品の完結!


連載当初は3月には終わる予定でしたが無理そうですね。

夏頃までには完結させたいです。


そして毎日更新!


うん、どちらも僕の努力次第ですね笑


それでは改めて今年もよろしくお願いします!!

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