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150話 マルチェロ vs アベル&レイ(2)

  おれは今、レイと共闘してマルチェロと戦っている。

  おれの師匠であるアイシスが手こずる上位悪魔が相手なんだ。

  とてもじゃないが優勢とは言えない。


  おれもレイも既に体力も魔力も限界である。

  あるのはマルチェロをぶっとばすという気力だけ。

  そんなおれたちを嘲笑(あざわら)うかのようにマルチェロは悠々(ゆうゆう)と戦っていた。


  「今の攻撃も効かなかったね〜。次はどうするの? まだ何か打つ手があるのかな〜? くふふふっ」


  おれは闇属性、レイは氷属性の攻撃魔法連打している。

  だが、マルチェロは闇属性の防御魔法を展開したり、転移魔法で躱したりと全くこちらの攻撃を受け付けない。


  完全に遊ばれている状態。

  このまま魔法を撃ち続ければおれたちの身体が()たずに死んでしまう……。



  だが、今はこれでいい!



  マルチェロは完全におれたちを舐め切っている。

  上位悪魔である自分が劣等種であるおれたちに負ける未来などちっとも見えていないのだ。


  マルチェロに対する復讐を何も成し遂げられずに、もがき苦しむおれたちを見たいのだろう。

  カインズとの戦いもそうだったがここがおれたちがつけ込むチャンスなのだ!


  おれが持つ最大級の攻撃魔法——黒炎撃破ダークフレイムバーストならマルチェロにダメージを与えられることはわかった。

  ならば、今は敵わないフリをしながら魔力回復に努めて黒炎撃破ダークフレイムバーストを使える準備をするだけ。


  おれはスキル『魔法剣士(闇&火)』を持っているおかげで闇属性魔法の効力が高い上に魔力消費量が少ない。

  さらに補助スキルで『魔力回復量増加』を持っているため魔力の回復も速い。

  おれはマルチェロに敵わないフリをしながら適度に闇弾(ダークショット)を放っていた。


  レイの方はもう長くないだろう。

  感情的になり過ぎていて常に全力で攻撃魔法を放っている。

  だが、レイがおかげでおれの魔力を回復させることができた。


  ここでレイが最大級の攻撃魔法を放つ。


  「氷弾撃(アイスバレット)!!」


  そして、ここでレイが倒れ込む。

  おそらくこれが最後の攻撃だったのだろう。


  幾つもの巨大な氷塊がマルチェロを襲う。

  この複数の同時攻撃にマルチェロは防御魔法で対抗した。


  「これしきの攻撃、俺様には効かないんだんよぉぉぉぉ!!」


  漆黒の壁がレイの氷弾撃(アイスバレット)を粉砕する。

  完全に勝ち誇るマルチェロ。

  レイの最後の希望も上位悪魔には届かない……。



  だが、これで終わりではない!!



  おれはこの時をずっと待ち望んでいた。

  マルチェロがレイに意識を取られる瞬間。

  おれへの意識が完全に消える瞬間を!


  まだこの技は完成しているわけではない。

  失敗することも多い。

  それに、この距離で成功したことなど一度もない。


  だけど、おれはやるしかないんだ。

  レイが作ってくれたチャンスを。

  レイが最後まで(あらが)ったその戦いを無駄にしないために!


  ずっと上位悪魔と戦うことは想定してきていた。

  だが、劣等種のおれではまともに戦うことすらできない。

  どれだけ攻撃魔法を磨いても、どれだけ防御魔法を磨いても勝てないんだ。

  だからこそ、上位悪魔に勝つために必要なこの魔法をずっとおれは……。



 《転移魔法》を使ってをマルチェロを叩く!!



  距離を詰めて黒炎撃破ダークフレイムバーストを至近距離から撃ち込めばおれたちの勝ちだ!


  「転移(テレーポート)!」


  おれは転移魔法を発動してマルチェロの背後に転移する。

  そして、おれは複合魔法を発動する。

  おれの全ての魔力をここで解き放つ!!



  「マルチェロ!!!!」



  おれは叫びながら魔力操作と魔力制御を完了する。


  「なんだと! いつのまに!?」


  マルチェロはおれが消えたことにも気づかなかった。

  突然背後に現れたおれに驚愕している。



  「くらえ!! 黒炎撃破ダークフレイムバースト!!!!」



  おれは全ての力を解き放つ。


  漆黒の炎がうねりながらマルチェロの体を包み込む。

  そして、響き渡る断末魔の叫び声。



  「ぐわぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」



  おれもマルチェロは地面に落下する。

  そして、おれは最後の力を振り絞って魔剣を投げつけた。



  お前はこんなところで終わる男じゃないよな……?



  地面に落ちたマルチェロだったが、上位悪魔がこれしきの攻撃で死ぬわけではない。

  回復魔法を使いながら必死で漆黒の炎を消そうとするマルチェロ。


  そして、苦戦した結果なんとか消火することに成功する。

  だが、マルチェロの身体は複合魔法を受けたことと回復魔法をガンガンに使ったことでボロボロに傷ついていた。

 

  「アベル!! てめぇ……覚悟しろよ!!!!」


  マルチェロの怒りの感情が爆発する。

  上位悪魔を怒らせたのだ。

  おれの命はもうないだろう。



  本来ならな……。



  そんな怒り狂うマルチェロの前に立たずむのは一人の少年。

  鬼の形相でマルチェロをにらむレイ=クロネリアスが彼の目の前にいた。

  そして、その手にあるのはおれが投げつけた魔剣。


  上位悪魔ですらその身を滅ぼすことのできる魔界の魔剣にはおれが魔力をたっぷりと込めておいた。

  レイ、あとはお前に任せたぞ……。



  「楽に死ねると思うなよ……」



  マルチェロにそう告げたレイ自身も魔剣に魔力を込める。

  そして、そんなレイに応えるように魔剣が光輝く。


  「そんな……劣等種どものくせに……」


  マルチェロの顔が恐怖で引きつる。


  不覚にもやつはレイに転移魔法の力を与えてしまった。

  レイと共闘したなかで彼を見ている限り、思考支配が解けても与えられた力はまだ完全には消えていないようだ。


  逃げようにも逃げられない状況。

  マルチェロの顔が絶望に染まる。


  そんなマルチェロに対し、レイは魔剣を振り上げる。



  「氷界斬り(ブリザードスラッシュ)!!」



  白く輝くその一太刀(ひとたち)はマルチェロを斬り裂く。


  「クソがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


  レイの攻撃を受けたマルチェロの魔力がどんどんと弱まっていく。

  そして、地面に倒れたマルチェロの身体から光が拡散していく。



  レイもその場に崩れ落ちる。

  どうやら本当にもう力尽きたようだった。


  そんなレイのもとへとおれはゆっくりとかけよる。

  そして、レイを肩を貸す形で支えてやる。


  「さぁ、エマさんがあっちで待ってるぞ。お前は休んでろ」


  おれは心配そうにレイを見つめるエマさんのところへレイを連れて行く。


  「ありがとな……。やはり、お前は姉さんが認めたやつだっだ……」


  息を切らしながらレイがつぶやく。


  なんだその話は?

  後でゆっくりと聞かせてもらおうじゃないか。



  こうして、レイのおかげでどうにかマルチェロを倒せた。

  あとは囚われたサラの側にいるダリオスとアルゲーノだ。



  絶対にサラを助けるんだ……。

  傷ひとつ付けずに。



  おれはそう心に誓って新たな戦いに挑むのだった。

第二章のときと比べてアベルは格段に強くなっています。


第三章では、実技の授業において転移魔法を含む次元魔法の習得をしようとしている姿がありました。

そして、今ここで転移魔法を成功させることができたのです。


また、前話でエマが戦う二人を見ていてレイがアベルと同じくらいの実力でマルチェロと戦っているという描写がありました。

実際に、これはエマの勘違いではなく本当にそう見えていたのです。


マルチェロによって強化されていたレイの本気と、魔力回復に努めて適度に戦うアベルの実力が拮抗するほど、アベルは力をつけていました。

そんなアベルが全魔力を使って本気で放つ複合魔法に、マルチェロも死にはしないまでも大ダメージを受けてしまったのです。


まだまだ一人では魔族や悪魔と戦えない彼ですが、少しずつ仲間たちのおかげで強くなっています。

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