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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第3章

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78 閉空

 結論! †聖剣†大したことねえ!

 いや、俺が大したことないだけかもしれん。とにかく切れないあいつら。本気で斬り込んでも弾き返される。

 弾かれるだけならまだいい。あろうことかこいつら、俺の聖剣をコピーして体の一部を変形、斬撃まで放ってきやがった。それも結構鋭いやつ。こっちのマジ聖剣で受けて金属音したときは耳を疑ったね。メタ〇スライムか?

 狂ったように斬撃だけ放ってくるスライム集団から逃げ続けて、今俺が大体どのあたりにいるのかもわからん。こっちが息上がってるってのに、向こうは全くそんな素振りも見せないし(スライムだからか)。とにかく非常にキツいぞ、まだ上層のはずだろ……!?

 

「く……っそ!」

 

 立ち止まればその瞬間無数の斬撃。これ明日筋肉痛だな。一撃一撃も決して軽いわけじゃない。本来片手剣の聖剣を両手で握って受けてるが、そろそろ腕も上がらなくなってきた。

 時遡(ヒール)で騙し騙しやるのも、魔力的なのがいつ切れるのかわからない以上は……

 

「「「   !!」」」 

 

 うわまた腕増えた。今度も立派に聖剣を模した強そうな腕だ。一体あたり聖剣三本か。一撃で三倍美味しい。こっちはもう腕上がらんホント勘弁マジで無理。はー畜生、こんなんじゃ次の階探すどころじゃない。てかこの状態で罠ハマったら間違いなく死ぬし、ここらで決着付けとかないとな。

 時遡(ヒール)用にも魔力は温存しておきたかったが、こうなっちまったら仕方がない。デカいの決めて一掃する。


「こいよゼリー共……!」

 

 立ち止まって手のひらを前に突き出し、集中。

  

「――遅延(ディロウ)圧空(フルシア)!!」

「「「   」」」 

 

 奴らの動きがスローになり、そのぷるんとした体は一点に圧縮されたように見えた。

 ――いや、実際にそうだった。鳴き声すらも低く遅くなってた。だが、それで全滅したわけじゃなかった。

 生き残りの体が妖しい紫に発光する。嫌な予感がして思わず聖剣を構える。

 

「ぐ――ぁ――!?」

 

 突然俺の右腕が悲鳴を上げた。メキメキメキョ、と妙な方向に折れ曲がった腕に痛みを感じる――よりも先に、スライム共が触腕を振り上げて襲いかかってくる。

 

「――っ――!!」 

 

 咄嗟に横に転がろうとする……が、反応できない。痛みで動けないとかではない。俺は奴らの(コピー)に気付くのが遅すぎた。全身を貫かれても尚、呻き声一つまともに絞り出せない。のたうち回るレベルであろう激痛はまだ脳に達さない。スライム共の動きは早すぎて目じゃ追えない。もう何度斬られたか、何度貫かれたか、俺の体は無事なのか、まだ五体満足か、出血の状況は、傷の場所、深さ、致命傷になりかねない傷は、まず時遡(ヒール)すべきはどこか、意識が朦朧としてきたのは気のせいか、俺は死ぬのか

 

「ぐぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!?!?」

 

 かなり遅れて痛みがやってきた。痛い通り越して熱い、も通り越して半ば感覚がない。のたうち回る以外のことができない。時遡(ヒール)をしようにも奥歯がガタガタ言ってどうにもならない。力が入らない。恐らく四肢は辛うじて繋がってるだろうが感覚はない。

 死んでも生き返るんならいっそ殺してくれ。なんで舐めプして何もしてこない。トドメを刺さない。何をして――

 ――反動か? 反動で動けないのか? そうなんだな? ……俺はまだ死んでねえぞ?

 

「ひ……(ヒー)……()…………」

 

 震えながらもなんとか動く左腕を腹の上に持ってきて、眩暈(めまい)がしそうな程の傷を塞ぐ。次にズタボロの右腕、最後に足。

 

「…………う、はぁ、てめえら……」

 

 立ちくらみに耐えつつ、壁の出っ張った部分に掴まってギリギリ立ち上がる。足元は見たくないが、多分出血も相当ヤバい。余裕で下着の方まで血が染みてるような気がする。今血溜まりでも見ようもんなら気絶する。

 スライム共は相変わらず動かない。が、コピーが自動の可能性もあるし一撃で殺さないと。

 丁度いい、今頭に浮かんできた新魔法の実験台にしてやる。威力も効果も消費魔力も知らんが、この一撃に全てかける。

 

「くらい……やがれ…………閉空(ケーシア)……!」

 

 空間が歪む。その部分だけ、切り抜いたように色が消えた。大きく開いた裂け目が、スライム共の群れを塗り潰していく。

 これで生き残りいたらもう知らん。人事は尽くした。神頼みしとくか。

 ――いよいよ本格的に全身の力が抜けてきたな。立ってられない。いつの間にか膝立ちになってたが、それも既に厳しい。安全な場所に移動しておきたかったが勿論無理、っつーか安全な場所なんてそもそも存在するのか。

 ふらふらしてきた。横になりたい。横になる前に時遡(ヒール)の一つでも入れとかないと結局死にそうだ。今他の魔物に襲われても死ぬし。詰みが多すぎる。って、時遡(ヒール)の魔力も全部使いきってやがるぞちょっと前の俺。ふざけんな。ああ、意識が、落ちる――

 

 

* * *

 

 

「にゃ、目が覚めたみたいだにゃー」

 

 ……ねねね猫耳!? 完成度高いコスプレだな付け根どーなってんだ。

 いやそれよりここ誰私どこ。あれもしやガチ獣人ってやつ? なるほど異世界か。

 いやその通り異世界だ。俺転生したんだった。で、迷宮潜って死――んで生き返ったってとこか?

 

「あ、あれ? 意識はあるかにゃー?」

「あハイ勿論であります! 意識あります! 元気です!」

「にゃはは、流石に元気ってのは嘘だにゃー。向こうのハルティアが傷は塞いだけど、酷い出血だったし無理は禁物だにゃ」

 

 確かに体が重い。上体を起こそうとしたが上手く力が入らない。

 

「ん? 思ったより早いお目覚めだねえ。魔力も使い果たしてたし、もう暫くは気絶してると思ったんだけどなあ」

 

 よく見えないが、背の高い――恐らくこの猫耳っ娘と同じ鎧を着た男が近付いてきた。ハルティアさんか。

 

「ええと、傷塞いでいただいてありがとうございます」

「お易い御用だよう。それより、死んでも大丈夫だからって一人で来るのは感心しないなあ」

「それは……」 

 

 仰る通りで。返す言葉もございません。

 勇者だし余裕だと思うじゃん? 難易度高すぎんだよこの迷宮。俺が色々碌に確認もせず突っ込んだのも悪いけど。

 

「ま、助かったんだしいいにゃ。それより、少年はこれからどうするにゃ? 一人で来てるんだし、脱出(テレプト)は流石に使えるにゃ……?」


 脱出(テレプト)脱出(テレプト)ね。オーケー、ギリギリ時空魔法っぽい響き。

 ……使えません。

 

「やれやれ、その顔で察したよう。まあ大体の迷宮は途中に地上への出口が用意されてるし、そこまで僕らと一緒に行こうねえ」

「それがいいにゃー、ぼくらは強いから後ろにいるだけでも大丈夫にゃ!」

「い、いやあ俺も戦いますよ。魔法は少し使えるんで」

 

 勇者だし。後ろで見てるだけってのはちょっとね。恥ずかしいじゃないすか。

 

「魔法? 魔術のことにゃ?」

「面白い呼び方だねえ。大昔はそう呼ばれていたりもしたみたいだけど……もしや君、かなり遠くの出身だねえ?」

「あ、はは……まぁその、確かに遠いっちゃ遠いです」

 

 遠いどころか文字通り世界が違う。てかこっちだと魔術って言うのか。じゃああのスキル軍も時空魔術だと。ステータス画面に書いといてくれ。

 

「さて、と。もう立てるかなあ?」

「手、貸した方がいいかにゃ?」

 

 差し出された手を握る。猫の手も借りたいってか。

 薄手の手袋越しの手は、人間のそれとほぼ同じだった。見た感じ耳と尻尾以外は人だし、どこまで猫なのか非常に気になる。そんなに無知な奴いないだろうから聞かないが。失礼に当たるかもしれないしな。

 

「よし、行こうかあ。はぐれないようにね――えーと、名前聞いてなかったねえ?」

「あ、アヤトです。アヤト・ミズシマ」

「姓があるなんて珍しいにゃ。ぼくはユネ! 呼び捨てで大丈夫にゃ」

 

 げえ、姓があるのも珍しいときた。黒髪は大丈夫なのか? 服は幸いこっちのだからセーフだろうが……ってか、血の染みがなくなってる。あれを綺麗にする魔術もあるのか。

 

「僕はハルティア。よろしくねえ、アヤト君」

「よろしくお願いします」

 

 礼ではなく握手。ミントっぽい香水みたいな匂いがした。髪も若草色だし雰囲気に合ってるな。

 さーて、ソロの予定が三人パーティで攻略だ。余裕そうなら途中で抜けずに、行けるとこまで行ってみたい。

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