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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第3章

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73 キャッシュレス

 ついに、ついにポイント制度の導入に成功した。

 椅子から立ち上がって伸びをすると、一瞬だけ意識が飛びかける。元から貧血気味だったがこれは運動不足がデカそうだな。最近ずっと座りっぱなしだったし。

 てかエコノミーなんとか症候群も怖いし、今度からは定期的に立つとかしよう。一応勇者らしいが慢心は禁物だ。異世界まで来てそんなもんで死んでたまるか。

 

「んんあー……疲れた」

 

 なんだか湯船に浸かりたい気分だ。状態異常のやつではなく普通の。身体中がギシギシいってる。

 ここは時間がわかりにくくていけない。時計はあるが、眠気もこなけりゃ日付表示もないから何日作業してるかもわからん。この前付けようと思ってた窓を面倒くさがって付けてないのも悪いが。だって時空魔術の応用よくわかんないんだもん。

 まぁそれはともかく達成感が凄い。久々にガチで作業したな。

 

 ポイントの名前はレルア――Reluaから取って「エル」だ。今んとこはこっちの通貨、1ルナ=1エルって感じのレートにしてる。エルは基本的に迷宮でしか手に入らないが、迷宮街での買い物なんかはエル限定にしていく予定だ。そうすれば探索者も増えるだろ。

 いやホントに長かった。各魔物に対応するエルを考えるだけでも大変なのに、冒険者証明書をいじるのが思った以上に大変でまぁ……。

 ただ、時間をかけただけあってこの街にポイント制度――キャッシュレス制度が普及するのはほぼ確実だろう。冒険者証明書を各店に設置された小型魔法陣に触れさせるだけでいいんだからな。ぶっちゃけ革命だと思う。

 と、ドアがノックされる。リフェアは相変わらずノックしないし、ゼーヴェかレルアだな。

 

「入っていいぞ」 

「失礼します」

「おう、レルア! 丁度こっちも今終わったとこだ」

 

 あー癒される。もうレルアの声聞いただけで癒されるし顔見たら昇天した。ここ最近ほとんど喋れてなかったせいでレルア成分が不足している。

 眼帯はまだつけたままだ。ていうか魔眼の方はよく見えないらしい。まさか不良品を掴まされたか……いやでもシステムから買ってるしそんなことは……。

 

「! お疲れ様です」 

「レルアもお疲れ。あ、報告ちょっと待ってくれ」 

  

 とりま紅茶飲もう紅茶。疲労回復効果もあって一石二鳥。利尿作用は効かないし。

 

『午前の紅茶(500ml):10DP』

 

 これで良し。ペットボトルからティーカップに注ぐのはやっぱ慣れないな。いっそポットも買ってパックから出すか?

 ……電気ケトルは電池式を買えばいいしな。流水(リルルス)程度の魔術は見様見真似でもなんとかなったし、次飲むときはそうしてみよう。

 

「っし、レルアも座ってくれ。あ、クッキーとか食う?」

「お気持ちは嬉しいのですが、この後街に出たリフィスト殿を探さねばならず……すみません」

「いやそれはこっちこそすまん。いつも助かってるよ」

 

 まーた勝手に街に出たのか。リフェアですら我慢してるのに。いや百歩譲ってリフェアが外出るのはわかるがアンタは大人でしょうが。

 まぁ姿は変えてるだろうけど、リフィストって大罪と同じレベルで気付かれやすいと思うんだよな。巨大宗教の崇拝対象なわけだし。……娯楽が少ないのは認めます。

 いや最悪聖騎士に見つかってもリフィストならなんとかなるか? ならいっそ今度はリフェアも連れてってもらおう。その過程で誰かにバレたら忘却(ヴァピル)で。なんて使い勝手がいい魔術なんだ。

 

「マスター、乾杯はしないのですか?」

「え? ああ、これはそもそも乾杯しないやつだ」

 

 この前飲んだときは食事の途中だったもんな。最初は乾杯って教えてたし意外と難しい。

 

「さて、と。街の様子は?」

「順調に発展を続けています。リフェア殿とアイラによる呼び込みの甲斐もあってか、探索者数もかなり増えました。装備なども以前よりよく売れているようです」

 

 ふむふむ。まぁ探索者が増えたのは作業しながらでもうっすらわかったレベルだ。あの二人は結構頑張ってくれてるっぽいな。

 装備の売れ行きが良さそうなのも補充の通知でわかった。DPも増えてたし。

 

「聖騎士とか、それっぽい奴らは?」

「今のところ、特に確認はできていません。噂ではリフィスト殿に関連した諸々の対応に追われているとか」

「なるほどサンクス。ならしばらくは安心かもな」

  

 リフィストも教会がぶっ壊れたとかよくわからんこと言ってたしその対応か。この分ならリフィストは連れ戻さなくてもいいかな。帰ってきたときに少し注意するくらいで。

 リフェアも、ラビとかリフィストとかと一緒ならある程度は自由に外出させてあげることにしよう。

 

 レルアにその旨を伝え、何か頼みがあるまではゆっくりしてもらうことにした。俺がキャッシュレスあれこれやってる間ずっと迷宮外見てもらってたしな。

 迷宮内見ててくれてたゼーヴェにもあとでお礼言っとこう。

 

「ふぃー……」 

 

 一段落。今貯まってるDPは20,000――微妙だな。迷宮造ろうかと思ったがこれじゃ何もできない。

 久々に迷宮内の冒険者でも眺めるか。……いや、それならちょっと街に出てみよう。実際見てみた方が発展の具合もわかるだろうし。なんなら俺も呼び込みしちゃうもんね。

 そうと決まれば早速行動。カップは流水(リルルス)で軽くすすいで立て掛けておく。加速(アクサール)なんかは使えなかったが、生活魔術ならもう完全無詠唱でも問題ないみたいだ。これが勇者補正か。

 


「ま、眩しい」

 

 転移門(ゲート)の先は昼すぎだった。まるで吸血鬼にでもなった気分だ。日光が目に刺さる。向こうでニートしてた頃よりも暗い部屋にいるからか。

 まだ裏庭の茂みの中だってのに、こっちまで街の喧騒が聞こえてきた。思ってた以上に栄えてるのかもしれない。

 こっそり城の入り口の方に回ると、今まさに迷宮に入ろうとしている探索者がいた。いいねいいね。

 

「お兄さんもどう? 上層なら死なないし、腕試しにでも……って、マスター?」

(ようリフェア頑張ってくれてるな。お陰で探索者も増え始めてるみたいだ、ありがとよ)

(えへへ、もっと頑張るね!)

 

 リフェアの頭をわしゃわしゃ撫でてその場を後にする。アイラは城の前にはいなかった。まぁ俺にあの営業スマイル見られるの嫌かもしれないし丁度いいか。

 っとここで迷宮前で迷ってる冒険者が一人登場。早速声かけてみるぞ。

 

「やあ、君も迷宮に挑むのか?」

「オ、オレはまだ見てるだけっつーか、まだ怖いっつーか。Dランクだし」

 

 ゴーストとタイマンでギリギリ勝てるくらいか。まぁ運が良ければソロでも地下入りくらいまでは行けるな。

  

「でも死なないんだぜ? 俺もさっき迷宮内でうっかり死んだがこの通りピンピンしてる。一瞬痛いのに耐えりゃホラ」

 

 邪竜剣を揺らしてみせる。

 

「こんな武器だって手に入るんだ。俺もまだCランクだが……こんな剣、普通に冒険者してるだけじゃそうそうお目にもかかれねーぜ」

 

 まぁ邪竜剣なんて上層じゃ手に入らんが。迷宮産であることに変わりはないから許してくれ。

 

「そうだな……だけど一人じゃやっぱ(こえ)えわ。こっちにもギルドみてえのがあればそこでパーティ組めんだけどよ」

「ああ、確かに。建設予定地はあるっぽいしもうすぐできるかもな」

 

 貴重な生のご意見いただきました。戻ったら即建てよう。DP的にはギリ足りて……足りて、ない。全然足りてない。

 いやしかし今のDPの伸び率的には10万なんてあっという間だ。何のための野営グッズだと思ってる。明日にはギルド作るぞ。

 

「よし、俺はもう一潜りしてくるかな。また会おうぜ、迷宮内で待ってる」

「ああ。オレもパーティ組めたらすぐに行かせてもらう」

 

 そう、迷宮内で待ってるよ。最深部で。

 なんか俺も攻略してみたくなってきたな。聖騎士は来ないっぽいし、少し「探索側」で迷宮を見てみるのも楽しそうだ。

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