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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
余章

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266 日々

 昼食と夕食も似たような構成だった。昼食はパンのところが炒めた麺で……あ、夕食はちょっと豪華だったかな。何かのお肉がステーキになってて、甘辛いソースもよく合ってた。

 幸運にも朝食以外は悪いというほどでもなく、夕食に至ってはむしろ待ち遠しくなるほどだった。ちょっと色が煌びやかすぎる海産物とかも、最初は驚いたけど味は良かったし。

 

 そんなこんなでスタートを切った日々は、とても穏やかに過ぎていった。ここでの生活にも慣れてきて、徐々にルーティンのようなものも決まってきた。

 まず、午前中はこっちの文字の勉強。本は知らないものでも毎日1冊出せたから、それをリフェアと2人で読む。そして、ちょっとずつ書きの練習も。

 

 お昼になったらご飯を食べて、休憩したあと近接戦闘の訓練。こっちは私が教える側。

 この部屋の機能ではまともな強度の武器は出せなかったので、私の短剣をまた貸している。元々の身体能力もあってか、リフェアの上達は早かった。影と短剣を両方使ってこられると、大技抜きでも半分くらい私が負ける。

 

 部屋の広さは変えらえたけど、こっちも強度の方は微妙で。何度か強く踏み込むと、大体凹みができていた。

 これらに限らず、何でも数回使う頃にはどこか壊れ始めているということが多かった。魔力で形は保っているけど、元々そういう素材なのかも。

 

 ついでに、望むものが望むだけ出てきたのも最初のうちだけで、ある日パッタリと止んだ。いくつか既にあるものを消してみてもダメ。当然といえばそうだけど、上限が決まっていたみたい。

 だから毎日本を1冊出したら、ほとんどそれで終わり。あとは凹みを何ヶ所か直すとか、そんな感じ。

 

「お姉ちゃん! 早くー!」


 草原風の訓練場所。見た目を変えたのはいい選択だった。同じ体を動かすのでも、外……に見える場所で動かすのだと気分が違うし。

 

「焦らない。まずは基礎から」 

 

 影に飛び乗ってあちこち動き回るリフェア。本人もそうだけど、影の元気が有り余っている。

 この分なら、聖騎士に埋め込まれた種は完全に消滅したと見て良さそう。

 

「わかってるよっ、ほら1、2、1、2!」 

 

 リフェアは影から飛び降りて準備運動を始めた。私もそれに合わせる。

 準備運動を終えて軽く走った後は、早速打ち合い。 

 

「せーいっ!」 

 

 少し気の抜けた声とは裏腹に、打ち込みは激烈。影の流れを利用して勢いを付けているのもあって、まともに受けてはいられない。


「しっ!」 

 

 避けられるのを見越して、敢えて手元の短剣を狙う――けど、影に軌道を狂わされる。

 そしてそのまま、槍を絡め取られた。

 

「えっへへー、1本!」 

「はぁ、はぁ、反則だって」  

「ごめんごめん、もうしないから!」   

「大丈夫。私も本気出す」

 

 その反則込みでリフェアの強さだし、戦い方だから。そもそも一定以上の影は振り切れないことは分かっていた。防げたミス。 

 

 元々槍は対多数用を想定してる。少数なら、特に1対1なら、私は短剣の方が上手く立ち回れる。

 

「お姉ちゃんも短剣?」

「うん。いくよ――聖陽(リドラ)」  

「わ!」

 

 言葉と同時に聖陽(リドラ)で視界を奪う。あくまで近接戦闘主体というだけで、魔術を禁止してるわけじゃない。

 この魔術はリフェアに効きがよく、無警戒時なら数秒は動きを止められる。面倒なのは、展開された影のバリア。

 

「――聖浄(リファイス)

 

 尤も、直接影に使うわけじゃない。魔力を這わせるのと同じ要領で、短剣に魔術を纏う。

 

「はっ!」 

 

 振り下ろし、リフェアを覆っていた黒いバリアを両断。

 慌てた様子で突き出された相手の短剣を弾き飛ばして、

 

「1本」

 

 額に先端を押し当てる。2本目は私のもの。

 

「やられた〜」 

「次も貰う」

「今度は私からいくから!」  

 

 影の波で高所に移動するリフェア。向かった先には足場ができていた。確かに少し踏むくらいなら十分だけど、わざわざそのためだけに?

 あの影の力も無限ってわけじゃない。そろそろ大雑把な使い方はできなくなってくるはず。

 

「とおっ!」 

 

 ……はずなんだけど。

 高所から影で勢いをつけたダイブ。威力は高いけどあまりにも雑。躱すのは容易だし、着地の隙を突くのも――

 ――だめ、多分罠。この勢いは、そもそも着地する気がない。

 案の定、リフェアはそのまま足元の影に沈んでいった。

 

 危ないところだった。得物自体のリーチには差がないから、1つのミスが命取りになる。向こうは影で誤魔化せるけど、私はそうはいかないし。

 

「やあっ!」 

「――風衝(ルウィズ)!」 

 

 私の影から飛び上がってきたのは、位置調整で躱す。返す刃での攻撃を狙うけど、浅い。

 

「この、っ!」 

 

 次の加速した踏み込みはステップで躱す。距離を詰めすぎるのも危険。近くでずっと斬り合えば負けるのは私。恐らくリフェアも分かってるから、そのために影を使う。

 

 でも、それが隙になる。

 

 地上で加速に影を使ったあとは一瞬無防備になる。影のガードは勿論、潜るのにも少しの遅延がある。つまり、着地点に切先を置いておくだけでいい。

 

「そこ――」 

 

 いいのが入った、と思った瞬間、一面闇に包まれた。

 

「――風衝(ルウィズ)!」

  

 とりあえず思いっきり後ろに飛ぶ。今の動きはフェイク? いや、そもそもこの闇は影じゃない。

 なら何なのか……答えが出る前に光が戻ってきた。

 

「リフェア」 

「お、お姉ちゃん?」 

 

 不安げな様子を見るに影は関係なさそう。それより、

 

「……戻ってる」 

 

 内装が、全部。来たときのままに。

 

『……あー……ああー。聞こえるか、居住者諸君。東部居住区及び周辺が聖騎士宮廷騎士混合部隊の襲撃を受けた』

 

 穏やかじゃない放送が響き渡る。

 

『この場所の魔力も全て該当地域に回す。今こそ団結の時だ。一定時間後に強制転移が始まるが、準備を終えた者から順次向かうように。以上、健闘を祈る』 

 

 ブツ、と乱暴に放送が切られ、辺りには静寂が戻ってきた。あれが本当なら私たちは強制的に戦場に送られるらしいけど、一体どういうこと?

 

 ――戦う覚悟。

 老婆の言葉を思い出した。つまり、来るべき時が来たってことかもしれない。

 

「……できるだけ、遅れて行こう」

「うん」

 

 強制転移を待つ。聖騎士には会いたくない。なるべく戦闘は避けて、隠れていよう。 

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