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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
余章

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257/272

253 Fighter in the Dark

「あは、お姉ちゃん無防備すぎ!」

 

 冷たい布のような何かに頬を撫でられる。この暗闇では躱せない。

 

「――聖陽(リドラ)

「わ、眩し!」 

 

 明るくなったのは一瞬で、辺りは再び闇に包まれた。以前試したときはもう少し持続していたはず。この影が原因?

 

「お返し! ほらほら!」 

 

 複数の細い影に手足が縛られる感覚。振り払おうにも、先ほどまで液状だったとは思えないほどの強度。

 

「チクっとしますよー!」 

 

 影に細かい棘が生えた。

 

「――っ」 

 

 鈍い痛みに顔をしかめる。棘というよりは……足ツボ健康器具の突起に近いかも。

 四肢こそ動かないけど、幸い口は覆われていない。恐らく魔術で切り抜けてみろということ。

 

「――風刃(ウィレイス)!」 

 

 手足を縛っていた影を切断して、位置を変える。けど相手からは見えているのか、或いは足元の影に索敵機能があるのか、攻撃は確実に私の急所を狙ってくる。

 

「まだまだいくよ!」

 

 声。攻撃が来る――

 

「――風壁(ウィレンダ)!」  

 

 左斜め前に私1人分程度の壁を展開。パパパパン、と連続で破裂音がした。私自身の被弾は0。

 

「……そこ」 

 

 影の向き、声の方向から、本人の場所を割り出せた。影はあちこちで暴れているけど、私への攻撃は、必ずある一点から出ている。

 

吹風(ウィレスカ)――風壁(ウィレンダ)!」 

 

 風で自らの体を浮かし、踏み台を経由して突きを放つ。

 

「はぁっ――!」 

  

 ゴン、と鈍い打撃音。直後、相手の気配が消えた。

 ぬかるむ影の上になんとか着地。使った木製の短剣は――真ん中から、握り潰されたように折れていた。

 

「ざんねーん。それは私じゃないよ?」 

 

 別の場所から笑い声、そして攻撃。不安定な足場で躱しきれず、肩に一撃食らう。

 水をかけられたような冷たさ。痛みはない。濡れているのも血ではなさそう。

 

 それより、着弾のタイミングを見誤った。声がした場所も、魔力の微妙な動きも、完全に捉えていたのに。

 何か妨害魔術を食らったような不快感はない。まさか……この空間が広がりつつある?

 落ち着いて探ってみると、現時点で既に、お爺ちゃんの部屋とは比較にならないほど大きくなっている気がする。反響の具合からして、ちょっとした体育館くらい。

 

「あれ、おしまい?」

「――聖陽(リドラ)!」  

「もー、眩しいってば!」 

 

 さっと逃げる声の主。たとえリフェアでないとしても、影の中心になっていることは確か。あれさえどうにかできれば。


「そろそろ、いいかな――いくよっ!」 

 

 地響きがして、影が引いていく。光が戻ってきた――と思ったのも束の間。

 影の濁流が高波となって押し寄せてくる。打つ手は、ないわけでもないけど。


「――吹風(ウィレスカ)風壁(ウィレンダ)風壁(ウィレンダ)!」 

 

 追い風を利用して助走をつけ、作り出した風の壁を蹴って、なるべく高い位置を目指す。まだ全然足りない。お爺ちゃんならフワっと浮いてそのまま留まれたりするんだろうけど、私は無理。

 そもそも覚えてる魔術だってまだ数種類。上手く使えるのに限れば2種類だけ。

 

風壁(ウィレンダ)――風壁(ウィレンダ)――っ!」 

 

 魔力もそろそろ尽きる、という辺りで足を滑らせた。

 

「――吹風(ウィレスカ)!」 

 

 ギリギリで体勢を戻して高波を躱す。

 

「はっ、はっ、」 

 

 心臓が止まりかけた。まだ動いているならの話だけど。

 もう、降参してしまおうかとも思う。魔力だけでなく体力も限界。

  

「あれ、まだ無事なんだ? 凄いね、お姉ちゃん!」 

 

 純粋なその言葉すら嫌味に聞こえる。そういう子じゃないっていうのは知っているのに。

 

「じゃあ、ボーナスターイム!」 

 

 影が再び引いて――吸い込まれていった。中央にいるのは、黒く靄がかった人影。

 

「私だけ一方的に攻撃できるんじゃずるいもんね?」

 

 ――好機。

 罠の可能性はある。けど、降参するくらいなら。

 

「――聖陽(リドラ)!」 

  

 三度目の聖陽(リドラ)。別に暗くはないけど、唯一効いた魔術。

 

「わ!」 

 

 一瞬の隙。そこを突いて距離を詰める。

 

「――しっ!」 

 

 短剣は人影の腹部に命中――粘土の塊のような感触があり、そのまま貫通した。 

 

「はーずれ。お人形遊びって、言ったでしょ?」

 

 でも、この人形は完全に独立しているわけじゃない。魔力の線で持ち主と深く繋がっている(・・・・・・・・)。明るくなってそれが確信に変わった。

 だからこそ、打つ手は一つ。ゼーヴェさんに教わった、魔を祓う魔術。

 

「――聖浄(リファイス)!」 

 

 人形が白く燃えた。同時に、耳をつんざくような悲鳴。

 

「……っ!」  

 

 悲鳴が止むと今度は、空間がパズルのように崩れ始めた。私の今立っている場所も例外ではなく――

 

「――風壁(ウィレンダ)!」 

 

 詠唱するも、不発。先ほどの聖浄(リファイス)で魔力は全て使い切ってる。

 

「――勝負あり、かの」 

「お爺ちゃん!」

 

 落下中だった体は風に優しく抱き止められ、ゆっくりと着地した。

 

「負けちゃったあ」 

 

 同じくふわふわと運ばれてきたのは、脱力した様子のリフェア。……私の、勝ち?

 

「……大丈夫? 怪我はしてない?」 

「うん! 影は燃えちゃったけど、私にはなんのダメージもないの。あの悲鳴も人形自身のもの」 

 

 ぴょん、と飛び降りてみせる。実は私よりも元気だったりして。

 正直、勝敗でいうと怪しいところだと思う。でも2人は私の勝ちということで納得しているようで。

 

「まさかお姉ちゃんに負けちゃうなんて……」  

「ふむ、実戦経験の差かのう?」  

「でも魔術素人なんでしょ? うー、悔しい。カインさんの気持ちが分かった気がする!」 

 

 カイン。噂に聞く戦闘狂。あんまりかかわり合いになりたくないタイプ。

 

「お姉ちゃん、また遊ぼうね。次は負けないから!」

 

 ……リフェアもなかなかに戦闘狂じみている、のかも。

  

「よしよし、食後の運動はこの辺で十分じゃろう。訓練に戻るとするかの」 

 

 耳を疑った。そもそも、今魔力を使い切ったところなんだけど――と思っていたら、マナポーションを手渡される。

 ……お爺ちゃんは、たまに鬼だ。

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