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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
余章

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250 鉄雨

 お久しぶりです。三黒です。

 ぶん投げ気味だったアイラの過去の話を彼女視点で書いてみました。ちょっと続きます。人によっては蛇足になっちゃいますが、読んでやるぜって方はお付き合いいただけると嬉しいです。

(133話辺りを読み返すとさらに面白いかも)

 一面の暗闇に、荒い呼吸音と雨音だけがこだましている。

 通信機が濡れないように体で覆いつつ、その電源を入れる。

 

『こちらエア。グリズリー、応答せよ』

『こち……らグリズリー……どうした?』

 

 電波が悪い。相手の増援に対するノイズではないのが幸いか。

 チューニングでなんとか正常に聞き取れる状態まで戻して、通信を続ける。

 

『予定地点で奇襲を食らった。恐らく情報が漏れてる』

『クソっ、被害は?』

『3名軽傷、作戦続行には問題ない……けど』

 

 できることならこのまま進むのは避けたい。経験が告げている。この先は危険だと。

 

『いや、いい。撤退だ。こっちもやたら警備が薄いが、その話じゃ十中八九罠だろう。畜生どこから漏れた、ダザダの奴か? あいつ最近酒場(パブ)で――』 

『一旦それは後回し。撤退するにしても、失敗時のZ地点にも先回りされている可能性がある』 

『ああ、集合は廃棄予定の拠点に変更だ。座標を送る――がっ!』

 

 衝撃音。何が起こったかは想像できるけど、したくない。

 

『グリズリー? グリズリー!』 

  

 応答なし。でも、しばらくは殺されないはず。私たちの肉体には利用価値がある。頭の中を入れ替えて使うにしたって、生かしたまま複雑な過程を踏む必要がある。 

  

「皆、聞いて――」  

 

 振り返って気付く。聞こえるのは、雨が金属の地面を叩く音のみ。

 

「ようやくか。友人とのお喋りは楽しかったか?」 

 

 冷たい機械音声。その場から飛びのき、暗視に切り替えて相手の姿を探す。

 

「私はこちらだ。」 

「っ!? なぜ――」 

「おやおや、何を驚く。君たちは私の同胞を(ころ)して回っているじゃないか。私が君たちを殺そうとするのは、至極真っ当な行動だと思うが?」 

 

 単独行動なんてありえない。管理外の異常個体?

 でも1人で相手するのは難しい。それより、皆は? 

 

「何を考え込む。嘆かわしい理解の遅さだな。我々に改造(なお)された個体はさぞ幸せだろう」  

「……貴方は、確実にスクラップになる。」 

「理解だけでなく情報までも遅いとは。やはりそれが人間の限界か」

「!」 

  

 駆動音のした瞬間、刃は私の首元にあった。

 

(のろ)いな。判断も、その動きも。全てに於いて我々に劣る」

 

 相手は油断しているし、この刃は何とかできる。問題はそのあと。

 ハットとカラフルはまだ息がある……けど、戦えるだけの余裕はなさそう。

 

「さて。君たちの流儀に則り、最期の言葉でも聞いておこうか。哀れで愚かな人間の言葉として、日付が変わるまでは覚えておいてやろう」


 手元に残っているのは閃光弾1つ。

 

「何か言いたまえ。私の気はそう長くないぞ――」 

 

 目を瞑り、ピンを抜いて、投げる。


「――っ!」  

「――ぐあっ!」 

 

 気絶しそうなほどの衝撃が全身を襲う。

 目を瞑っていても数秒は何も見えなくなるほどの威力。相手のカメラも少しの間使い物にならないはず。

 

 吹き飛んだナイフの位置は確認済み。地形は把握したし、あれさえ手に入ればまだ可能性はある。

 12歩大股で歩いて、右斜め前。ザラザラした持ち手の感覚に安心する。目も見えるようになってきた。

 相手は様子を伺っているみたい。カメラ以外も進化してるタイプじゃなくて良かった。今のうちに少し細工をする――太いロープを切断して、その切れ端を瓦礫の下へ。

 相手はまだ動いてない。なら次は……

 

「ハット、聞こえる?」

「ああ、エア……か……俺は……」 

「意識があるなら大丈夫。少し我慢して」

 

 ハットの上半身は血だらけだったけど、止血してる余裕はない。したところで助かる保証もない。 

 それより、彼をここから移動させないと。このままだと巻き込まれる。

 

「不意を突くとは鼠らしいな。そのまま逃げ帰っておけば良いものを……そんなナイフ1本でどうするつもりだね?」

 

 相手のカメラが私を捉えていた。十分射程範囲内。お互いに。

 

「まさか、ハハハ、その死にかけを救おうと? 美しい同族愛だな。いや、自己保身か?」 

 

 歯車の回るような音とともに、腕が銃に組み変わっていく。そう。この距離ならそう出ると思ってた。

 

「どの道死からは逃れられない。大人しく受け入れたまえ」   

「私は死なない」 

「最期の言葉はそれか。ふむ、まあ……実に在り来りで、つまらんな」

 

 銃口が光り始めた。今。

 靴のジェットを全開にして、重しにしておいた瓦礫を勢いよく蹴飛ばす。

 

「――ッ!?」

 

 咄嗟に銃口を上に向けたみたいだけど、無駄。この量のRM鉱材に耐えられる作りはしていないはず。

 

「ぐああっ!」 

 

 為す術もなく、相手は大量の鉱材の下敷きになった。多分全部で数トンはある。

 

「よもや……よもや、鼠ごときに私がやられようとはな。だが無駄な足掻きだ。私の全データは我々の全員に共有されているし、その意識は本部に残っている」

 

 まだ発声機能が死んでいないなんて。以前よりも耐久力が上がっている。帰ったら開発部に知らせないと。

 

「それでも、ここから逃げる私たちを止めることはできない。それで十分」 

「ク、ク、ク、まだそんなことを思っているのか。君の必死の努力は、君自身の意識の寿命をほんの少し伸ばしただけに過ぎない」

 

 どこからどう見ても、相手はもう動けない。私を追うなんて、できるはずもない。

 

「貴方たちが冗談を言うなんて思わなかった」 

「冗談だと思うかね。私は生き、君は死ぬ。その結末は変わらんのだよ――」

 

『――――――!』 


 腰の通信機がノイズを発した。そんな。ありえない。

 

「ELS-30801、よくやった。次の体は高級だぞ」 

「それは楽しみだな。では、後は任せるとしよう」 

 

 暗闇から次々と現れる機械生命体(エスキナ)。単独行動も策の内だったの? こんなことは今までなかった。どうすれば――

 

「抵抗はやめたまえ。綺麗なまま生まれ変わりたいだろう」

「私は……私は、諦めない」 

「聞き分けがないな、残念だ。総員、構え」

 

 このままじゃだめ。何か、何とかしないといけないのに。浮かんでくる作戦はどれも実行不可能なものばかり。

 

「では、また会おう」 

 

 銃口から放たれた眩しい光が私の視界を塗り潰して、

 

 そして、

 

 意識が途切れた。

7周年記念で明日も更新します。

来週以降はまた毎週日曜14時予定です。

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