228 作戦
「解析――次だ!」
「――創造・雷裂!」
「まだ来るよ、気を付けて!」
ボス前最後のモンスターハウス。一行はしっかり迷い込んでくれていて、俺としては嬉しい限りだ。
「――祓魔の陣!」
「フルロロロロ!」
マコトもセコセコ陣描いて頑張っちゃいるが、やっぱり大した火力は出てない。陣の一段目が対単体しかないってのがまたな。
魔力消費もそこまで多くないみたいだが、どうせ何かするならちゃんと効果がある炎界とかにすりゃいいのに。
「――リョーガ!」
「――創造・具現化!」
「ありがと!」
シエルの剣が真ん中からポッキリ折れた……2秒後にはリョーガから新しい剣が手渡される。某パン屋の老夫婦より手際がいい。
「終わりっ!」
流れるように幼体ファリトスを撫で切りにするシエル。言葉通り、今ので最後だったらしい。そこそこ魔力使ったな。エフィは魔術戦とか苦手そうだし丁度良かった。
「ナイスだシエル!」
「楽勝っ! ブイ!」
リョーガに向けてピースサインを作るシエル。にしてもブイって。Vだよな。シエルあいつローマ字知ってんのか?
「よし、じゃあこのまま進もうか」
「俺らはいいけど……シルキーさんたちは? 少し休ませてあげた方がいいんじゃないか?」
「大丈夫だよ。彼女らが直接戦うことはないし。回復を待つ時間も惜しい」
それだと魔力要員としても役に立たないだろ。そこは魔力回復三倍なのを上手く生かすべきなんじゃないのか。単純計算なら三倍だが、魔術に長けてるなら姉妹はもっと早く回復するかもしれない。これじゃ最早何のためにいるのかも分からないぞ。
「……そうか」
「僕の魔力は十分だし、マナポーションも残ってる。行こう」
転移門をくぐる一行。眼前には巨大な門。折角天界モチーフだしってことで荘厳な感じにしてみました。白をベースに細く黄金の金属飾りを乗せて、でもゴテゴテさせすぎずシンプルな感じに。我ながらお洒落に仕上がってると思う。
「ボス、だよね?」
「ああ、気合い入れてかないとな」
リョーガが手をかざす。広がる花畑の中央には、気合十分といった様子のエフィ。
「頑張るのだぞ、エフィ!」
「念話で直接言ってやれよ」
「とうに言ったわ! ああ……なんだ……じっとしてはおられん! 童!」
俺の方を見て距離を詰めてくるリフィスト。な、なんだよ? なんだってんだ?
「うむ……なんでもない……童に言うても仕方がないわ!」
「急にビビるじゃねえか。エフィが心配なのか?」
「そうでは……いや、そうなのかもしれんな。あれでも可愛い使い魔だ」
「可愛い子には実戦もさせろみたいな諺があっただろ……確か。カインと模擬戦みたいなのもやってたし、少なくともそう簡単にやられることはねーよ。多分な」
シルヴェルド戦の時点で、既にかなり実力があるように見えた。相手がちょっとチートすぎただけだ。
「いきますよぅ――覚悟っ!」
「――解析!」
「――解呪! からの!」
マコトの解析が届く前に解呪。予測してたにしろどういう反射神経だよ。解析見てから解呪余裕でしたってか。
「彼を貫け――聖雷!」
「――聖雷!」
が、続く魔術の方はシエルに相殺された。こっちもこっちで大概だな。
「聖雷……? 天使か?」
「しっ、知らない子だよ!?」
「エフィも貴女なんか知らないですぅ! はあっ――炎気弾!」
エフィの掌から撃ち出されたのは、例の波〇弾。
「――創造・解呪――」
リョーガが打ち消そうとするが、その弾の後ろからそのまま真っ直ぐに突っ込むエフィ。
「消えない!」
「――炎壁 !」
マコトが炎の壁でその威力を弱め、その間にギリギリで躱す一行。……が、衝撃波で吹き飛ばされる。
「うわ――」
「わわっ――」
「――創造・吹風!」
リョーガの吹風で上手いこと着地。器用なやつだ。
「熱つ! 熱いですぅ!」
エフィは炎の壁を避けきれなかったみたいだ。その割には大してダメージがあるようには見えない。
「ああ……! エフィ……!」
俺の隣がやたら騒がしいが、本当にほとんど無傷だ。服の端が少し焦げてるくらいか。
むしろエフィの波〇弾で抉れた地面の方が凄まじいな。軽く隕石降ったみたいになってるぞ。
「――創造・雷刺・連展複式!」
リョーガが雷の弾丸を発射。だが、エフィはこれも見てから回避。そして即拳を構え、突っ込む。
「――壊岩拳!」
「させないよっ!」
シエルが割って入って剣で受ける。だがエフィの拳がスッパリいくなんてことはなかった。剣の方もヒビすら入ってない。代わりにシエルの足元が少し土に沈んでる。お互いどういう硬度してんだか。
「武器に頼ってその程度ですかぁ? 勇者のお付きに選ばれた割には、案外大したことないんですねぇ!」
「な、何をう! 目にもの見せたげるよ!!」
飛び退いたシエルは剣を置くと、拳に青白い電気を纏わせ始めた。こいつもリョーガと同じで雷得意なのか。
「やああああああっ!」
「――風切掌!」
殴りかかってきたその拳を、エフィは開いた掌で受け止め、その勢いを完全に殺して、止めた。そして空いた左手で首を掴んで、地面に押し倒す。
素手でやり合ったら確実に勝てると踏んで挑発したわけか。カインといいエフィといい成長してんな。前までの真っ直ぐぶつかってく感じも好きだったが。
「うぐ、ぐっ……」
「貴女の負けですよぅ!」
「――なんてね。ボクは囮だよっ!」
なんだって!?
「――創造・雷水牢!」
「――討魔の陣!」
シエルの言葉と同時に、エフィの体を透明な渦が覆う。次いで光の柱。
誘い込まれてたのか。挑発に乗ったのもわざとだと。シエルの方が一枚上手だった。
「……エフィの、負け、ですぅ……」
数秒後、解放されたエフィが地面に横たわった。……負けか。今回はあいつらの作戦勝ちだったな。
「よし、じゃあ聖焔で――」
「待ってよ龍牙。もう勝手に燃やすのは無しだ」
お、今回は間に合ったか。だが弱体化された解析で何ができるってんだ?
「ああ、悪い。その前に解析だったよな」
「うん。だけどまだまだ元気だし、これじゃ時間がかかりすぎるね。手っ取り早く――」
マコトはしまった短剣を再び取り出すと、構える。
「――腕と足でも落とそうか」




