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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第1章

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21 ルドゥード

レルア視点です。

「……本当に机、椅子、箪笥にベッドまで一式お買い上げになられるので?」

「ええ。お幾らでしょう?」

「合計で48,000ルナになりますが……あの、お持ち帰りの(ほう)は? 見る限りお客様しかいらっしゃらないようですが」

 

 店長に小金貨五枚を渡すと、更に驚かれた。もしかすると一括払いは珍しいのだろうか。しかし、分割で払うような仕組みが出来上がっている世界だとは思えない。

 言われてみれば、見た目が少女の私がする買い物ではなかった。しかし、従者をつけているということにしても幻影(ファントム)では流石に怪しまれるだろうし……どうしたものか。

 単純に持ち上げるのは苦ではないが、運ぶとなると少しかさばる。第一、そんなことをしている少女など注目を集めるだけだ。帰るときは転移で帰りたい。

 そうだ、マスターに聞いた空間魔術とやらを使ってみよう。

 見様見真似ですらないが、要は開いた空間に物を詰め込めばいいだけの話。

 詠唱は勿論知らない。昔読んだ本に、魔術は雰囲気と勢いと思い込みが大切と書いてあった。きっと大丈夫だろう。

 

「――開け」

 

 魔力を纏った手で宙を撫でる。

 小さい切れ込みが入り、それは徐々に大きくなっていった。中の色はマスターの転移門(ゲート)と同じ青色。恐らく成功。

 

「よい、しょ」

 

 用意してもらった家具を一つ一つその隙間に投げ込んでいく。少し中を覗いたが、空中でふわふわ浮いているだけだったので破損の心配もなさそうだ。

 

「――閉じよ」

「お客様、貴方いったい……」

「ただの冒険者見習いですよ。ではまた」

 

 詮索されるのも面倒なので、お釣りの大銀貨2枚を受け取るが早いか店を出る。

 あとは剣、鎧、そして魔道具。

 

「おーい、嬢ちゃん。腹減ってないか? ルドゥード出来たてだぞ!」

 

 む、私に言っているのか。屋台で腹ごしらえをしている場合ではないので、丁重にお断り――

 

 いや。

 

 確かマスターは美味しい食べ物を探していた気がする。私に観光させるための言い回しかもしれないが、感想を言うためにも一応食べておくか。

 単純に気になるというのもある。マスターの世界の情報は一部持っているが、こちらの情報は――特に食べ物や生活習慣などは、一切知らない。

 

「いただきます」

「よしきた! 先払い、35ルナだ」

 

 や……安すぎる。小銭がない。

 

「あの、これで大丈夫でしょうか」

 

 大銀貨を差し出す。案の定相手は苦笑いした。

 

「おっと、大銀貨なんて貰っても釣りが出せねぇや。嬢ちゃん貴族か何かかい?」

「ええ、そんなところです。申し訳ありません、今小銭の持ち合わせがなくて……」

 

 相手は腕を組んで唸った後、こちらを見てニヤリと笑った。

 

「よし、今回はツケといてやろう。次来るときにでも払ってくれや。安心しな、旨さには自信がある。ささ、冷めないうちに食っちゃってくれ」

 

 貴族相手にそれだけ言うなら美味しいのだろう。皿に盛られた焼きそばのようなものからも良い匂いが漂ってくる。

 

「では、いただきます」

 

 手を合わせて、横にあるフォーク状のものを手に取る。箸の使い方は知っているので、この麺なら箸の方が食べやすそうだが……マスターの世界でさえ一部しか使っていなかったらしいし、仕方ない。

 まず、一口目。もっちりとした食感と共に、何か魚介の旨みのようなものが口いっぱいに広がった。続けて、何か調味料の香ばしさが追い付いてくる。

 極めつけは、鼻へ抜ける香辛料の香り。どうやら後味をすっきりさせる効果も持っているらしい。香ばしさの割に食べやすいのはこれのお陰か。

 二口目、三口目と食べていると、気付けば皿は空になっていた。これで35ルナとは。きっとマスターも気に入ってくださるだろう。

 

「ご馳走様でした。美味しかったです」

「はは、ご馳走だなんてとんでもねぇ! だが、貴族様の口に合ったようで良かったぜ。また来てくれよな!」

「はい、ありがとうございました。貴方に天使の加護があらんことを」

 

 店の主に手を振って別れる。これだけ美味しいのにたった35ルナ、それもツケとなっては申し訳ないので、天使直々の加護を贈っておいた。きっと一週間程は幸運に恵まれるはずだ。

 

 さて、改めて武器などを買いに行こう。

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