表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/272

20 報告

レルア視点です。

 逃げた二人組について行くと、怪我を負った一人は救護室、もう一人は奥の部屋へ向かった。

 兵舎の中ではあるが、隠蔽(バルド)を使っているので気付かれることはない。

 男に続いて奥の部屋へ向かい、扉の開いたタイミングで慎重にくぐり抜ける。

 

「――また通信結晶でお伝えしていた通り、本作戦でセリザール隊長を含む計三名が死亡。報告は以上です」

「ふーん、ゴーストね……あのあたりに自然発生はしないはずよね」

「はい、風属性の小物以外は今まで観測されたことはありませんでした」


 団長なる人物は、少女だった。その落ち着きよう、そして魔力量からしても、見た目通りの年齢ではないことは明らかだったが。

 そういえば、死ぬまで若い見た目のままという種族がいた。確か、魔術が得意な反面筋力などは弱かった――名をエルフ。文献では抗争により滅びたとのことだったが、その生き残りだろうか。


「変異種というわけでもなさそう。それに、家、ですって? ゴースト系は精々墓地をうろつく程度の存在でしょう? 突然レイスに進化するというのも聞いたことがない……私が生きてきた中で一度も、ね」

「……恐らく上位の存在だと思われます。元隊長の声や姿を真似ただけでなく、記憶から使う魔術まで全てが一致していました。セリザール隊長が元隊長の家に火を放ったなどの虚言を吐いたことからも、とても高い知能を有すと――」

 

 ガタン! と派手に椅子を倒して少女が立ち上がった。

 

「どうしてそれを早く言わないの! それは本物よ。彼自身。ゴーストと化してもなお生前の記憶を持ち続けるということは、召喚者がいるのかしら?」


 ぶつぶつと呟きながら部屋を歩き回る。


「いや、そんなはずがないわ。あってはならない(・・・・・・・・)。私達はもう、あの悪夢を繰り返すわけにはいかないの」


 少女は足を止め、アイウズを見つめる。


「――――――――アイウズ・ウェルヒルト」

「は、はい」

「貴方を遊撃隊隊長に任命します。副隊長は同行したフィルに。そして、同時に召喚者……いえ、レイスの討伐隊を編成します。遊撃隊から、優れた者を数名選出して。私は各隊長に連絡する。行きなさい」

「はっ。失礼します」

 

 アイウズは一礼すると部屋を出て行った。

 む、少女が邪魔になって外に出れない。最悪転移で戻れはするが、この間のお遣いもこなしたい。少し待つとしよう。

 

「――で、そこの貴方。いつまで隠れているつもりなの?」

 

 私のことだろうか。いや、気付かれるわけがない。

 

「つい先ほど、私が立ち上がったタイミングで魔力が強まったのを感じたわ。出て来たらどう?」

 

 無意識に防御魔術を発動した? そんな馬鹿な。もしそうだとしても魔力の揺らぎは僅かなはずだ。

 あちらはまだ仕掛けてこない。今のうちに眠らせるか。いや、私の魔力を感じ取れるような相手に無詠唱が通るとは思えないし、詠唱したら殺さざるを得なくなる。不味い。諦めて今すぐ転移を使うしかないか――

 

「…………ふん、気のせいかしら。嫌な汗をかいたわ。窓を開けましょう」

 

 少女が指を鳴らす。部屋の窓は全て開け放たれた。

 魔術によるものだ。罠だと思ったが、窓付近に仕掛けは見当たらず、またそれらしい魔力の動き、素因(エレメント)の流れも見えなかった。

 落ち着いて窓に手をかけ、身を乗り出す。やはり罠はない。音を立てないよう慎重に着地し、傍の路地裏に駆け込んだ。

 

「――危ないところだった」

 

 思わず溜め息がこぼれる。交戦を避けることが出来て良かった。今度こそお遣いもこなせそうだ。

 私は隠蔽(バルド)を解除し、商店街へ向けて歩き出した。

 


 

* * *

 

 

 

「……はぁぁぁ。死ぬかと思った」

 

 そう一人部屋で胸をなで下ろしたのは、シレンシア騎士団団長、アナ。

 アナは、椅子から立ち上がった瞬間に死を覚悟していた。突如湧き上がった細い糸のような意識が、冷たさと鋭さをもって彼女の首元を舐めたからである。

 部屋の隅から放たれたそれに敵意は感じられなかった。例えるなら、ただ観察するだけのような。

 しかし、一度気付いてしまえば、最早見逃すことなど出来ない。戦闘もやむなしと考えていたが。

 

「もう、一体何が目的だったの? 情報?」

 

 気配は、素直に窓から去っていった。相手もアナが気付いていたことは知っていたはずだし、殺さない理由はないと思われた。

 なんらかの理由で命を狙いにきた刺客だと思っていたが、違うのだろうか。

 情報にしても、怪しげなレイスの存在、遊撃隊長の死亡および交代、これは確定ではないが召喚者の誕生。この程度だ。


「ほんっと訳が分からない」

 

 また、気配を隠したままこの部屋に入るなど不可能だと思っていた。仮にも元Aランク冒険者だ。

 それが、姿すら確認できなかった。

 

「力量は確実にAランク以上、ね……」

 

 加えて、闇に葬られた放火事件の犯人。怪しまれていた張本人が死んでは裁きようもない。

 レイスと化したゼーヴェとの和解は可能なのだろうか? 討伐隊に同行すべきなのだろうか? 彼は冷静だが忠誠心に溢れた騎士だ。新たな主が居るなら、それと和解しなければならないが……レイスを召喚するような邪悪な存在と対話出来る気がしない。

 アナは山積みの問題に特大の溜め息をつきつつ、通信結晶に魔力を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは! 20章まで拝読しましたので、ひとまずの途中の感想を書かせていただきます! 次々に面白い出来事が巻き起こるので、読むのが止められなくなりました。 まず、ヒロインのレルアちゃんが…
2022/02/22 14:24 退会済み
管理
[良い点] しっかりとダンジョン経営してるところがよかったですね! 侵入者の人たちも一筋縄ではいかない辺りがいいです! 群集劇的な部分もいいと思いました! [一言] レルアちゃん不器用かわいい。 さて…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ