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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第6章

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162 時空楔

「っっっっぉおああああ!?」

 

 ガラスを叩き割るような音と共に、俺を包む不気味な浮遊感が消えた。意識が急にクリアになる――ここはどこだ、天界じゃない。

 どこか別の場所に飛ばされたか。どうしてまだ意識が残ってるんだ。

 

 ――まさか俺は生きてるのか? 全身震えまくりだし心臓はバックバクだが、ここはそうだな、俺の城の裏庭に見える。

 背中に手をやると、傷はなかった。出血もない。もちろん痛みも。

 

 アヤトの魔力も感じなければ、何かが起こったような素因(エレメント)の乱れもない。本当に、ついさっきまでの出来事が嘘だったかのように、何もない。

 ――逆に、レルアたちの魔力はハッキリ感じ取れる。

 

(なあ、誰でもいいんだが、俺の声が聞こえてたら返事してくれ)

 

 試しに念話を飛ばすと、数秒と経たずに応答があった。

 

(カカ、どうした童。大声を出しとったが、腰でも抜かしたか?)

(あ、ああリフィスト。別にそんなんじゃない。テストだテスト)

(ほう……? その割には、何やら声が震えてるように聞こえるのう)

 

 ふ、ふ、震えとらんわ!

 あれは夢だったってのか? それとも噂の未来視とかいうやつか?


(マスター、ご無事ですか?)

(おう、ピンピンしてる。怪我とかもないぜ)

(ロード、あまりご無理はなさらないでください。時空魔術はまだ未知領域の広い魔術です)

(……心配。近くにいるから、すぐに向かう)

 

 そんな心配されるほどだったか。どんだけ声震えてたんだ。

 

(いや本当に平気だぞ、ちょっと予想外のことが起きただけだ)

 

 とにかく、迷宮の皆は問題なさそうだ。単に裏庭に飛ばされたってわけじゃないな。今はいつなんだ? そもそも、ここは俺が元々いた世界なのか?

 むしろこれが夢か……なんて考え出したらキリがない。ひとまず、確定している情報を整理していこう。

 

 最初に、ここは問題が起きる前――アイラと俺が戻ってくる前の時間ってのはほぼ確定だ。っつーか、出発前の可能性が高い。

 まず懐に入れておいた魔術結晶がなければ、腰に提げてた剣もない。この訓練用の人形が置きっぱなしなのもおかしい。アイラと一緒にここに戻ってきたときにはなかったし、俺は確かに片付けたはず。確実に時間(・・・・・)が巻き戻っ(・・・・・)ている(・・・)

 出発前の、新魔術を試したタイミングに戻ってきたと考えるのが妥当か。時空楔(ネスティエ)が関係してそうだな。

 

「到着。怪我はなさそうだけど、魔力が揺れてる。何があったの?」 

 

 背後にアイラが立っていた。情けなくへたり込んでる様子をバッチリ見られたってわけだ。まあアイラなら何かに気付いてそうではあるが。

 

「来てくれたのか。俺自身まだ混乱しててな。上手く説明できる自信がない」

「マスターが叫んだのとほぼ同時に、時空に少し歪みがあった。外部からの干渉ではないし素因(エレメント)の方に大きな動きはなかったけど、恐らく時空魔術の影響」

 

 確信に変わった。時空楔(ネスティエ)の効果だと考えれば全て納得がいく。


「実は、未来を見た。というか、その未来から戻ってきた」

「どうやって? 死んだの?」

 

 スパッと言い当てられた。流石アイラ、だがそんなまっすぐ見つめられると照れるぜ。

 

「あ、ああ。分かるのか」 

「うん……大体は。原因に心当たりはある?」

「新魔術を試しててな。一つ効果が分からないのがあったんだが、恐らくそれを使った直後に戻った」

 

 アイラは口元に手を当て、少し考え込む。

 

「似たようなものを知っているけど、私だけではとても結論が出せない。それに、魔術のことなら適任がいる」

 

 立てる? と手を差し伸べられる。小っ恥ずかしさはあったが、ここで握り返さないのも失礼ってもんか。

 もう力が入らない感じはない。動悸も落ち着いてきた。魔力の方も元通りだ。

 

「お爺ちゃんは結界維持装置のメンテナンス中だったはず。最深部の……マスター、記憶混濁は?」

「記憶は多分大丈夫だ。少なくとも、この時点より昔のことは」

 

 迷宮内外の様子に皆のことは勿論、ダンツクの落とし穴の重量設定の数値も、コンビニの五目おにぎりの味までバッチリ覚えてる。

 

「うん、良かった。こういう魔術だと、たまに記憶の一部が失われたりするって聞いたことがあるから。少し不安だった」

 

 戻れたはいいものの全部忘れてるってか。時空楔(ネスティエ)もどんな魔術か分からずに使ったわけだし、そうなる可能性もあったんだよな。スキル詳細とかの確認はできないらしいし、自動で覚えたようなのは現状使ってみるしかない。使うごとに寿命縮むみたいなのがないのを祈るぜ。

 

「おーっすアルデム」

「ほほ、マスター。これはこれは、アイラ嬢まで。どういった御用ですかな」

 

 装置の周りの魔法陣がまた増えたような気がする。暇さえあれば改良してくれてるが、もうアルデム以外誰にも仕組みが分からなそうだ。

 

「時空魔術について質問したくてな。時空楔(ネスティエ)って知ってるか?」

「ふむ、時空楔(ネスティエ)。さて古ハーネルス辺りに記述があったか……」

 

 アルデムはどこからともなく一冊の分厚い本を取り出すと、ペラペラとページをめくった。

 

「おお、これですかな。時空魔術の中でも特殊な魔術のようですぞ。記録では並行世界の観測に失敗、強行した術式も大量の行方不明者を出しつつ失敗。未完成の巨大魔術の一種と言ったところでしょうな」


 最悪の失敗魔術じゃねえか。俺のはたまたま成功しただけか。もう使いたくないな。

 

「完成してたらどんな効果の予定だったかとか、そういうのは書いてないか? 使って……多分成功したんだが、イマイチ効果が分からん」

「目的は時間遡行らしいですな。予め戻る地点を決めておく型の、単純な仕組みのものですじゃ。その割には厄介な条件を設けて……ほう、魂骨。この時代は心殻(しんかく)のことをそう呼んでいたと」

 

 地点を決めた時間遡行。俺の場合はそれが魔術を試した時間と場所だったってことだ。

 

「心殻ってのは?」

「おお、話が逸れてしまいましたな。心殻とは、理に触れるような大魔術を一度だけ使用可能にするもの。儂の時代は魔力ある者なら皆持っておりましたが、今はそうでもない様子」

「……なるほど? 俺は持ってるのか?」


 理に触れるって、あの対''憤怒''戦のゼーヴェみたいなやつ使えるってことか。ゼーヴェは体ボロボロになってたし少し怖いが。

 

「もし持っていなければ、マスターは今頃ここにいないかもしれませんぞ。もっとも一度使えば壊れてしまう故、もう持っていないのと同じですがな」 

「ま、マジか」

 

 …………つまり、時空楔(ネスティエ)はあれと同じくらいの規模の魔術だったと。嘘だろ。なんも注意書きみたいなのなかったぞ。不親切っていうか、初見殺しにも程がある。

 

「マジもマジ、大マジですぞ。マスターも危険なことをなさる。生きているから良いものの、これからは気を付けてほしいものですな。魔術は正しい知識と力がなければ、簡単に身を滅ぼす。いつもそう教えておりますでしょうに」

 

 叱られちまった。最初からアルデムに聞いときゃ良かったか。何事も習うより慣れろってスタンスで動くことが多かったが、魔術に関してはこれを機に改めるとしよう。

 

「しかしマスター、この魔術は死を以て完成すると書いてありますじゃ。死因は覚えておりますかな?」

「そうだ、それだ、ヤバいんだよ。俺は俺に殺されたんだ。この迷宮に俺が来てる。俺を殺すために」

 

 アルデムもアイラも、揃って頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。そりゃそうだ。急に何言い出したんだこのマスターは。''俺''がゲシュタルト崩壊する。

 

「ええとだな、要は……別の時空の俺が、どういうわけかこの俺の命を狙ってるってことだ」

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