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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第5章

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139 疑惑

「あー……友人? なんだってこんな場所に一人で?」

「一応ここに来ることは伝えておいた、けど……」

 

 何やら判然としないって感じだ。

 

「彼女はまだ学院生だし、単独で迷宮に挑むなんてしないはずだ。それに、ここはまだ謎が多い……国の管理下にあるわけでもないし」


 まあソロで来るのはおかしいよな。上層は死なないっつっても、一応死ぬ感覚はあるわけだし。

 

「そうだ。あいつのこと知ってるなら聞きたいんだが、あの強さは元々のものか? その……何かと契約したわけではなく?」

「契約……精霊との契約はしてると思う。それ以外は僕もよく知らない。――でも実力があるのは確かだよ! 来期の宮廷筆頭騎士(アルクヴレス)は彼女で決まりだ」


 なるほど。宮廷筆頭騎士(アルクヴレス)候補と考えればおかしいこともない……のか?

 

「じゃあとりあえず放置でいいか。普通に攻略に来てるだけかもしれないしな」

「ま、待ってくれ! 彼女は大事な友人なんだ、どうか、その……下層に入っても死なないようにとか……」

「うーん。まあ流石に一人で下層までは来ないだろ。ってことで解散解散! 念のため、全員部屋で待機しておいてくれ。急に集まってもらって悪かったな」 

  

(っていうのは嘘だ。イヴェルだけ部屋に戻ってもらう――アイラ監視頼めるか?)

(了解)

 

 一旦解散の雰囲気を出して、迷宮メンバーだけで改めて作戦を練る。目的がイヴェルなら適当なタイミングで返せばいいが、国の命令で動いてるならそうじゃない可能性もあるしな。

 

「よし。ってことで改めて……どうだ? あの少女について、何か違和感とか」

「この辺りにうっすら大罪の気配があるわ。隠しているのか、契約者が抑えているのかは知らないけどね」

「じゃあやっぱりあいつが?」

 

 ラビは首を横に振る。つってもあいつ以外にいるか?

 

「場所まではっきり分かるわけじゃないの。その子かもしれないし、街にいるのかもしれない」

「だがよォ、なんか妙だぜあの女。ただ(つえ)ェってだけじゃねェ。気味が悪ィ」

「ロードは、彼女が大罪の契約者であると?」

 

 どうだろう。イヴェルの話じゃまだ学生らしいし、そんなのが大罪と契約するか? 第一あんな貴族っぽい子が何を願う? 王位継承権とか?

 ……だがそれでなぜ迷宮に?

 

「……いや、考えすぎだったかもしれない。大罪と組みそうにも思えないしな」

 

 あれだけの実力なら、余程の理由がなければ大罪と契約することはないだろ。

 それより今は召喚術式だ。もうすぐ完成らしいし、俺が使う魔術の形も大体定まってきた。元のアイラを呼び出せば俺の真の死因も分かるだろうし、或いは未来が変わってるかもしれない。

 ――あ。もしかして俺は大罪に殺られたのか?

  

「街に潜んでる大罪も気になる。そっちの方、誰か探してみてくれるか」 

「では、私が。召喚に関して私の持つ知識は粗方伝え終えてしまったのでね。どうにも暇になったというわけだ」

「オレも行くぜェ、同じく暇だしなァ」 

「サンキューラティス、カイン。助かる。リフィストと見回りゴーストにも連絡しとくが、怪しいのを見かけたら念話で報告してくれ」

「了解した」 

「了解ィ」

 

 これで良し。街で暴れられると冒険者を巻き込んで困るし、何より俺らの顔が割れる。街にいるならなんとかして迷宮内に誘導しないとな。

 

「よっし、それじゃ今度こそ解散だ。自室待機はしなくてもいいが、何かあったとき動けるようにはしといてくれ。万が一ってこともあるしな。あ、召喚組はこのまま残ってくれ」

 

 今んとこはただの魔術師――訂正、めちゃくちゃ強い前衛魔術師――って感じだが、とにかく彼女が契約者である可能性もゼロじゃない。わざわざ警戒態勢を敷くほどではないにしろ、その動きには目を光らせておくべきだろう。

 ……と、レルアに声をかけられた。

 

「マスター、一般解放区画に新規出店の届出が」

「おお、ルドゥード屋か?」

「いえ、魔道具などの店のようです。詳細には目を通していませんが……」

 

 違ったか。まあ少し前に元気なのは確認したし、そのうちこっちに移店するようなことも言っていた。楽しみだな。あの味に食感スパイスの香り、定期的に食いたくなるんだよ。

 

「ざっと見た感じ問題なさそうだし、あとでオーケー出しとく。ありがとな」

「お役に立てて何よりです。では」 

 

 レルアはなんだか忙しそうな雰囲気だった。思い当たる節はいくつかある……というかほぼ俺のせいだなこれ。

 最近は、迷宮街関連の書類の山はレルアに投げちゃってることが多い。正直申し訳ないと思ってる。本人曰くそういう作業は嫌いじゃないらしいが、甘えてばかりもいられない。

 まだシレンシアの様式をそのままパクったままだから、これも迷宮街流にシンプルにコンパクトにすべきだな。こっちじゃ必要ない無駄な確認事項とか多そうだし。

 

「……任務より帰還した」

「ああ、おかえりアイラ。丁度良かった。これからまた召喚術式の作業に移ろうと思ってたとこだ」

「私の準備は済んでる。座標も計算して割り出しておいた。あくまでここを基準とした仮のものだけど、術式の方でも同様の値を指定すれば問題はない……はず」

 

 アイラは数枚の紙をどこからともなく取り出し、俺に手渡してくる。日本語で書いてあるっぽいがまるでわからん。難しい話はごめんだぜ。

 

「……そんな顔しないで。それでもかなり易しめに書いてある。マスターは新たに術式を組み立てる必要はない。普段の時空魔術の要領で調整するだけでいいから。数分以内に概要を頭に入れて」

「り、了解。頑張ります」

 

 数分以内? この量を? つーかもう実行段階だったのか?

 易しいって話だったが全くそんなことはない。昔の俺なら一眠りしてから読み始めても厳しいレベルだ。科学も魔術も素人だから基礎となる理論が分からん。

 とりあえず、結界による失敗を防ぐために地上で召喚を行うことは分かった。合図のあったタイミングで調整するとかいうことも。

 だが時間の調整方法は? 空間は転移(ラムルト)感覚でいいんだろうが、俺はまだ時間を自由に行き来できない。説明通りなら空間と同じように調整しないといけないし、それってヤバくないか。

 ……座標がどうのとかいう微調整はアイラとアルデムが協力してやってくれるらしいし、時緩(エゼイル)あたりで無理やり干渉を試みるとするか。

 もし失敗しても、使い魔呼び出しでその場に呼ぶことはできるかもしれない。指定の時間通りってのは難しいかもしれないが、融合に近い召喚ならなんとか……まあ最終手段だな。

 

「……もうかなり経ってる。どう?」

「うあー……大丈夫……だと思う……」 

「ほっほ、まるで大丈夫そうには見えませんぞ。まあ安心してくだされ、面倒な部分は儂らが片付けてしまいますでな」

 

 いつの間にかアルデムは支度を終わらせていたらしい。賢者にそう言われると心強いが、それはそれとしてかなり緊張してきたぞ。

 

「儂は先に魔法陣の設置を。街のラティス殿を呼ぶのもお任せくだされ」

「ああ、助かる。イヴェルは俺が呼んでくる」

「……私は必要な資料を集めてから地上に向かう。最終確認までには間に合うようにする」

 

 やっぱり不安だ。主に術式に対する理解の程度が。ギリギリまで粘りたいな。

 

「その、資料(これ)もう少し借りといていいか?」

「……構わない。それはマスター用に書いたものだし」

「そうか。ありがとう」

「……ん」

 

 皆これだけやってくれてるんだし、俺のミスで失敗なんてシャレにならんからな。地上に行くまでの時間で、しっかり頭に叩き込まないと。

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