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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第4章

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112 マンティコア

「アレン!」

「うわっと、もう一体いたのか」

 

 横からの不意打ちにも冷静に対処。それどころか飛び退きざまに一太刀入れたぞ。普通に双剣使えてるじゃねーか。そんなもんなの?

 俺がこの前試しに振ろうとしたときは、体勢は崩れるわ自分の剣同士でぶつかるわ、もう散々だったんだがな。種類は違っても元から剣握ってるだけあるってことか。

 

「レイ! そっちのやつは任せたぜ!」

「全く、無理をさせてくれる!」 

 

 レイも刀を抜いて戦闘態勢に入る。大丈夫か?

 アリシアほどじゃないにしても、今のレイにタイマンは厳しい気がする。大罪の力が使えなければ、ただ刀持っただけのゴーストだ。

 アレンの方も慣れない双剣なわけだし、各個撃破の方がいいんじゃないかね。

 

「せぁっ!」

  

 レイの刀がスコルピオの鋏を真正面から捉える。もう切り込んでも甲殻が溶けることはないが、意外にもレイは押し負けなかった。

 時折結晶の腕で攻撃を受け止めたりしてるし、さてはこいつ近接戦闘も普通に強いな。純粋な筋力じゃアレンに負けそうだが、速度では明らかに勝ってる。

 

「どっち見てんだデカ(ばさみ)!」

 

 ……と思ったが、どうやらアレンの方もあの図体で中々すばしっこい。双剣に持ち替えてから特に動きが機敏になったように見える。案外双剣も合ってるんじゃないか?

 一撃ごとの威力は下がっただろうが、その分手数は増えてるし。たまに剣の耐久が不安になる振り方をするが、それを除けばむしろ前より強くなってるようにさえ見える。

 

「っ、な!?」

 

 レイが画面から消えた――落とし穴にハマったのか。ここの落とし穴は砂が降り注いで窒息、そうじゃなくても生き埋めになりかねない。

 そういやそこ罠多いんだよ。戦闘向きじゃないな。

 

「――融解(メルシア)!」

 

 落とし穴を中心とした半径5メートルほどの砂が、全部まとめて溶け始め――やがて透明な壁となって周囲の砂をせき止めた。レイの立つ場所には、キラキラと輝く無数の結晶片。……魔術を使ったのか。でもどうやって。

 と、レイが手に持っていた小瓶を投げ捨て、スコルピオへ向かって跳び上がる。マナポーションだ。なんで胃袋で使わなかったんだよ。

 地中で殺したら地上に戻れずに死んだからか? だがアレンにやらせるのもだいぶ賭けだったけどな。同じ賭けならポーション使わずに済む方を選んだってことか。

 

「おいレイ、また俺の方が早かったな! で、助けが必要か?」

「いらん!」

 

 砂上に戻ったレイはそう言い返すと、あっという間にスコルピオを片付け、少し離れたアリシアの元まで走ってきた。

 

「二人とも、なんで、生きて……?」 

「レイのお陰ってやつだ! 俺だけなら今頃胃の中で骨になってるだろうよ――ってうぉっ!?」 

「ちょ、ちょっとアレン!?」 

 

 足元が崩れ、真っ逆さまに落下していくアレン。待てよそこ地下行きの穴だぞ。ボス直前でまたあそこ行くつもりか?

 

「――掴まれ!」 

 

 レイが穴に向かってロープを投げた。判断が早い! これには天狗の師匠も満面の笑みだ。さすが刀持ってるだけあるぜ。

 アレンは砂まみれになりながらもギリギリで生還を果たす。危ないとこだったな。そろそろボス行かないと食料も尽きる。

 

「助かったぜレイ! にしても驚いたぜ、まさかこんな近くに連続で落とし穴があるとはな」 

「ああ、俺も驚いた。どうやら少し迂回した方が良さそうだ」


 そうそう。急がば回れだ。ちなみにそのまま進むと誘引、爆発、槍が生えるやつから地面がめくれ上がるやつまで色々ある。大人しく遺跡の方を進むんだな。どうせそこまで時間はかからん。

 さて、と。いよいよマンティコア――マンティとご対面か。普通は三人じゃ厳しい敵だが、こいつらなら勝てるかもしれない。

 まあ本当は数パーティで来てほしいんだけどな。ボス階層は、通常階層の上限六人のブロックが三ブロックまで参加できる――つまり十八人まで参加できる、割とガッツリ作戦組んで攻略する場所なんだよ。本来はな。

 だが現状は多くて十人ってとこだ。十八人も集めるのは難易度が高かったかね。一応設置してある冒険者ギルドで攻略メンバーの募集もやってるんだが、所謂ガチ勢の中には他と組みたくない奴も多いみたいだ。そして攻略情報も出回りにくい。まあ人数多けりゃフレンドリーファイアも増えるだろうし、連携の練度も下がる。下手に大人数でいくより、信頼のおける身内だけの方が攻略が楽な部分も多いか。

 今作り終わってる地下60階までは、極論ソロでもクリアできるようにはなってる。完全大人数前提にして、一生誰も下まで来れないってのもつまらんからな。まあ十八人分、それも全ての役割分動けるって奴なんてそうそう現れるとは思えないが。

 

「さて、下りるぞ」

「どんなのが出てくるのか楽しみだぜ」 

 

 一行は階段を下り始める。マンティの方は、探索者が来るとも知らずに互いにじゃれあっていた。獅子の体に蝙蝠の羽、毒針付きの蠍の尻尾でも、じゃれあってる姿は可愛く見えるから不思議だ。

 

 先に仕掛けたのはマンティの方だった。一番手前にいた個体が、一行を視界に捉えた瞬間に尻尾の毒針を飛ばす。

 

「っ伏せろ!」

「んな――」 


 針のほとんどは階段横の砂壁に刺さり、幸いにも先頭のレイが結晶部分に軽い傷を負うだけで済んだ。

 

「グガァァ」

「ググガッガッ」

 

 だが、今ので奥の二体も探索者の存在に気付いたようだ。いつでも飛びかかれる――両手剣が届くか届かないかくらいの距離を保って、一行を観察している。

 

「今度のボスは三体か……アリシア、一人で一体やるのは無理だよな?」 

「うん、ちょっと厳しいかも……」

「わかった。ならここは協力して一体ずつやろう。アレンもそれでいいな?」

「勿論だ――来るぜ!」

 

 前の二体が同時に飛びかかってくる。一体ずつやりたくても相手はそうさせてくれないみたいだぞ。

 

「っ……!」

 

 凶悪な爪による一撃を刀で受け止めようとしたレイだったが、衝撃を殺しきれずに弾き飛ばされる。

 アレンの方はかろうじて踏みとどまってるがジリ貧だ。

 

「アリシア! 一体でいい、動きを止めてくれ!」

「わかった――粘着矢(ティルスタ)!」  

「ガガググ、ガァ……」 

 

 レイを吹き飛ばした個体が、ネバつく網に絡め取られて暴れ始める。

 が、気付けマンティ。今暴れるのは逆効果だ。暴れれば暴れるほど、網はより複雑に体と羽に絡んでいくぞ。

 

「いいぞよくやった! 俺はアレンの方のサポートに回る、加速(アクサール)のあともう一体にも粘着矢(ティルスタ)を――」

「きゃ――!」 


 後方で待機していた個体がアリシアに向かって毒針を飛ばした。何本か掠ったな、二の腕と太腿から少しだけ出血してる。

 どうもそこそこ強い毒らしい。アリシアは痛そうな顔で傷を押さえて、その場にへたり込んだ。

 

「くそっ! アレン交代だ、アリシアに応急処置を!」

「ふんぐ……ぐぎぎ……!」

 

 獅子の顎に咥えられた双剣は、引き抜こうにも引き抜けないみたいだ。それも前足による攻撃を躱しながらだし、余計に苦労するんだろう。

 だが、アレンの方に走るレイをただ放っておくマンティではない。今度はアリシアに毒針を飛ばした個体が飛びかかってくる。

 

「邪魔をするな!」 

 

 レイは横に転がりつつ、無防備な腹に一発斬撃を入れた。怒りと苦痛が入り交じったような叫び声を上げて、マンティはその場にひっくり返る。

 トドメを刺すなら今だと思ったが、レイはもうその個体には目もくれず、アレンの目の前の個体に向けて剣を構えた。

 

「グググガガガガァ!!」


 脇腹に刀が刺さったマンティが天を仰いで叫ぶ。これは痛いぞ。

 レイはそんな叫び声なんて気にも留めずに、刀を再び勢い良く引き抜いた。容赦ねえな。

 マンティは叫び声と共にのたうち回る。双剣はとっくに離されていた。

 

「レイ、ここは任せたぜ! アリー、今行く!」 

 

 アレンは剣を一本しまって多少走りやすい格好になると、依然動かないアリシアの元へ急ぐ。が、そっちのマンティはそろそろ復活するぞ。気を付けろよ。

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