103 紅蓮刀
「でぇりゃあ!」
アレンが魔物の群れの真ん中で両手剣を振り回す。その勢いに押されてか、生き残ってる魔物の中にはじりじり後退し始めてるのもいる。
対してレイ、さっきから何やら呟きながらゴーレムの攻撃を躱すばかりで、一向に仕掛ける様子が見られない。そんなんじゃすぐ潰されるぞ。
「まだだ――まだ――くそっ!」
一体目のゴーレムの拳を刀でいなし、そのまま振り向きざまに二体目を肩から切り落とす。随分切れ味がいいんだな……俺あんなの作ってないよな? っつーかレイが出てくときに持ってったのって、レルアが買ってきてくれた普通の剣だったはずだ。それとは明らかに別モンだろ。
ゴーレムの方も、よく見れば切断面が若干溶けてるっぽい。刀は元から宝石みたいな赤色だったが、今じゃあの熱線出したときと同じような真紅に染まってる。加えてなんか揺れる炎みたいなエフェクト付きだ。
炎の属性付与とかか? いや、俺も属性付与武器は何本も見てきたがそれとは違う。あんな綺麗でかっこいいエフェクト付くなら部屋に飾ってる。
「ああ――認める、今のは助かった。少しだけ力を借りる……だが俺はお前に飲まれる気はない」
なるほど大罪の力か。仮に魔力の消費なしで発動できるんだとすると……かなり厄介だなこれ。向こうの世界のコンクリートくらいなら余裕で切れそうだし。
「ちょっとレイ! よそ見してる場合!?」
「悪い!」
レイに向かって今にもその拳を振り下ろさんとしていたゴーレムは、降り注ぐ矢に一瞬怯んだ。その隙に、他の個体と同様に真っ二つにされる。
「よう、油断とは余裕だなぁ! 俺の方は片付け終わったぞ、手助けが必要か?」
「いらん! こっちもすぐ終わる!」
見れば、アレンの周りの魔物は一体も残さず消滅していた。まあ適正階層じゃないってこったな。
とか言ってるうちにゴーレムの方も全滅。んだよ魔力なくてもそこまでやれちゃうのか。この分じゃすぐボス階層まで来そうだ。
「……やっと終わった。流石に少し疲れたな」
「魔力もないんでしょ? 少し休む?」
「いや、先に進もう。魔力がなくてもボス以外はなんとかなりそうだ」
舐めやがってこいつ。もうコカトリスとガーゴイル鬼強化してえ。マジで。まぁカイン辺りにめっためたのボッコボコにされるのを楽しみにしてるよ。
さて、あいつらがボス階行くまで何するかな。レイの刀とか結構好きだし再現してみるか。確か自動採掘で、あんな感じの宝石っぽい鉱石が出てきてたはずだ。
自分のための鍛治スキルは久々だな。最近はガチャでしか使ってなかった。
『鍛治:カスタムを選択。外見、能力を最高品質で再現します。倉庫内の鉱石の自動使用:――』
承認。最近余り始めたDPで自動採掘の機能も強化してある。レアなやつも結構採れるようになったらしいし、下手すりゃ今の邪竜剣よりマシな出来のものになるかもしれん。ほぼ観賞用にはなるが。
素振りでもすれば、もしかしたら剣術スキルとかが上がるのかもしれない……が、正直めんどい。時空魔術で普通に戦えるしな。
っつーかスキルなしでも勇者補正で戦えるのが凄すぎるんだよ。向こうじゃ刃物は包丁握るのが精々、カッターだってたまにしか使わなかったほどだぞ。竹刀も義務教育中に体育で触ったくらいのド帰宅部だ俺は。
『エラー:加護の再現に失敗しました。続行しますか?』
加護ってのは……大罪のやつか。あのエフェクトのことかね。それともレーザービームの方? あるいは両方か。
まぁ、あのルビーっぽい刀身だけでも十分かっこいいし続行で。折角なら邪竜剣とこれで二刀流もやってみたいしな。二刀流はロマン。厨二心が疼いてたまらん。
『外見を確定。DPを消費し属性付与を実行――』
承認。最高品質ってだけあってそれなりに持ってかれたが、最近かなり稼げてるしな。これであの刀が手に入ると考えれば安いもんだ。探索者様々って感じ。
『能力を確定。名称を設定してください』
名称……そうか、今回はシステム側で勝手に作るやつじゃないもんな。刀っぽいし和風の名前にしよう。
炎の刀で……紅蓮……紅蓮之焔刀とか? いやむしろシンプルに紅蓮刀でいいな。邪竜剣と紅蓮刀、悪くない。
『名称を確定。DPを消費し紅蓮刀を製作します』
一瞬の光のあと、目の前にレイの刀そっくりのものが完成していた。これはいいぞ。遠目に見てもかっこよかったが近くで見ると更にいい。
重さは、まぁそこそこってとこだな。向こうの俺なら絶対持てない。レイが余裕で振れてることに若干驚くくらいの重量だ。
透き通った刀身はもう芸術の域だが、簡単に砕けそうで心配になる。キメ細かな布とかで丁寧に扱わないとダメな宝石にしか見えない。
レイたちはボスまでもう少しだけ時間があるし、試し斬りくらいはしてみたいな。つってもここは狭すぎるし、リビングも刀振り回せるほど広くはない。
新しく作った雪山とか行ってみるか。そっちも一度自分の目で見ておきたいし。
一応レイたちの声は耳元で聞こえるようにしておこう。さて、転移門踏んで転移っと……
「――寒むっ!!」
砂漠はクソ暑かったし当然っちゃ当然か。いやしかし寒い、晴れてるのに極寒だ。そのうち防寒具を街の防具屋に並べるのもいいかもしれない。
今は吹雪とかもないからひたすら静かだ。風の音が聞こえる以外は無音。
とりあえず洞窟に移動したい。風が吹く度に凍りそうだし、この中で刀振るのは厳しいものがある。
マップは軽く頭に入れてあるが、実際来るとやっぱ違うな。つい迷いそうになる。入ってすぐ左に洞窟の入口があったはずなんだが……
「ああ、あったあった。ってくぁwせdrftgyふじこlp」
っあー、オーケイ、今思い出した。落とし穴ね。ス〇ランカーなら死んでた。
しかも別の通路に繋がってるタイプの落とし穴だなこれ。戻るの面倒だぞ。確かこの通路氷柱降ってくるのとかもあるし、どうするか。まだ場所は正確に覚えてないし、自分の仕掛けた罠で死ぬとか流石にギャグすぎる。
……まぁ、あとで考えればいいか! 今は試し斬りだ。幸い広さはあるし、いくぜ時空剣術一の型!
「――裂空剣!」
壁際の岩がまるで豆腐のようにスパッと切れた。一拍置いて、青い光とともに上部がずり落ちてくる。
ちゃんと時空魔術の魔力を表面に這わせることはできた。振った感じは邪竜剣とほぼ同じだが、なんか持ち手の部分があったかい気がする。
これは、もしかして、いけるか!?
「――炎よ!」
……いや、ダメだよな。うん。わかってた。加護の再現に失敗ってのはこれのことだもんな。
握ってるだけでも軽いカイロみたいな温かさはあるし、別に熱線出なくても構わん。べっ別に自分の迷宮で凍死しそうになってるとかじゃないんだからねっ!
半袖にサンダルで雪山に行くなって話ではあるが。こんなので死んだらダーウィン賞とか受賞しかねない。一応目的は達したし欲張らずにさっさと帰らないと。
「っと、こりゃ随分でけえゴーレムだな。レイ、やれるか?」
「体が大きかろうとゴーレムはゴーレム。俺の炎で溶かせば終わりだ、行くぞ!」
待て待て待て早すぎる。いやこんなことにならなければ俺も既に自室かもしれんが。洞窟も地味に入口から遠かったしちょっと時間かかるぞ。
頑張れギガント負けるなギガント、俺が戻るまではなんとか生きててくれ!




