102 罠
「あれ、そいやアリーどこ行った?」
「落ち…………た………………」
「落ちた? 落とし穴か?」
アレンは毒針やら他の落とし穴やらを器用に避けつつ、めちゃくちゃになった階段を上っていく。罠全部起動済みだから逆に安全ってわけか。
にしても、だ。爆速で降りたとは言え、一個も引っかからなかったのは豪運とかいうレベルじゃない。神に愛されてそうだな。
「アリー! どこだー!」
「ここよ、ここ! そっちじゃなくて……ああもう違う!」
まあヤケクソ罠設置だから落とし穴だけでもかなりの数なんだ。全部起動したらそりゃ分からなくなるわな。罠だけに。なんでもない。
「おうアリー、大丈夫か?」
「これが大丈夫に見える!? 上の部分が返しになってて戻れないの、手伝って!」
大丈夫ってか、多分暗くてなんも見えないと思うぞ。かなり深いからなその穴。子供が作る落とし穴とはわけが違うぜ。軽く骨とか折れててもおかしくない。
「ったく仕方ねえなあ、引き上げてやる。''銀狼''の俺に任せろ!」
アレンは鞄からロープを取り出して穴の底に投げ入れた。……ってこれ街で売ってる業務用ロープ(100メートル)じゃねえか!? 迷宮攻略関連のアイテムはかなり安値で売ってたんだが、遂に功を奏したか。
ちなみに、状態異常耐性のお守りもかなり安くしてある。俺は値下げ前でも十分安いとは思ったんだが、何故か全然売れなかった。胡散臭いってのはその通りなんだが、まあ当時は誰も使ってなくて効果のほどもわからなかったしな。
ロープの方は色々便利だと思う。魔術で代用効かないし。こっちの世界に似たようなのがあるかは知らんが、向こうの長くて丈夫なロープには敵わんだろ。その辺の技術は向こうの方が圧倒的に進んでる……気がする。飯とかはこっちも結構美味いんだけどな。
とにかく、使ってもらえてるのは迷宮王として嬉しいぞ。嬉しすぎるのでアヤトポイント略してAPを1,000進呈だ! 貯めても特にいいことないし使い道も今んとこないが!
『探索者:アレンにAPを1,000付与しました』
……システムさん……?
システムさん、多分真顔で冗談飛ばすタイプだな。俺には分かる。
「またびっしょびしょ。最悪」
「まぁ、水で良かったじゃねえか!」
「それはそうだけど……」
アリシアは無事に戻ってこれたみたいだ。耐性にもよるが、レイの麻痺もそろそろか?
「……っ、くそっ、掠るだけでここまでとはな」
「おうレイ! そっちもなんとかなったみたいだな!」
「ああ、傷もそこまで酷くない。ポーションを飲んでおけばすぐ治る」
弊迷宮街ではポーション・マナポーションも非常にお求めやすくなっております。
少し前までは、死なないってわかった途端に消耗品ケチる探索者も多かった。だがそれじゃ結局損なんだよな。あと死ぬまでやるより脱出で出てく探索者が多い。結構魔力消費もデカいみたいで、マナポーションは必須みたいなことになってる。
そうそう、ポーションに関しては外から見てもかなり安いらしく、たまに商人が輸入にくるんだよな。
めっちゃ強いと思ったら商人に雇われた傭兵軍団だったりする。ただ迷宮って形に慣れてないのか、思わぬとこで壊滅したりするからわからん。罠とかその最たる例だな。
「レイ、炎の魔術得意なんでしょ? 私の服乾かしてくれない?」
「ええ、いや、得意っていうか……うーん……」
「マナポーションなら奢るから! よろしく!」
「いやいや、危ないって! それこそ溶かすような高火力は得意だが、乾かすみたいな繊細なのは苦手なんだよ」
「そんなわけないでしょ! 高火力しか出せない魔術師なんて聞いたことないし。そうケチケチしないでさ、ね?」
アリシアはそう言うと両手を広げて笑ってみせる。やめとけよ。このままじゃ数秒後に骨になるアリーだぞ。
「あ、ああ、そうだ。うん。直接は危ないから、俺が熱した石で自分で乾かしてくれ――炎よ」
なるほどそうきたか。それならあまり危なくもない……のか?
まあ上手くいってるみたいだし良し。ただもう少しで自動修復システムが起動するから早めに移動しとけよ。
「――よし、乾いた! レイありがと!」
「うん、大丈夫。風邪をひいても大変だからな。じゃ、次の階層に行こうか」
この階層はもう魔物いないんだよな。全部殺されたら自動で再配置してくれる機能とかないんかね。DPも自動消費で。
『地下16階など一部階層を除く全階層を自動再配置設定に変更しました』
ザ・有能。ここまで来るともう半分ドラ〇もんだ。
一部階層ってのは探索者がいる階層かね。地上の階層なんかは最近常に人がいるし、そのうち大規模にメンテするのも良さそうだ。詫びエルは配らん……と思ったけど武器ガチャ配るのとかは面白そうだな。鉱石はこっちでテキトーに用意すればいいし。
いっそ一日一回ログインボーナスみたいなのも作るか? 皆ゴーストにも慣れてきて地上階層踏破くらいなら余裕そうだし、そのくらいなら日課として定着しそうだ。
まだ迷宮一本って人が多いわけじゃないし、どっちかっていうと普通の冒険者業に長い時間を割くのが主流だからな。プラマイでプラスになりそうならログインボーナスも考えてみよう。
「っしレイ! もっかいド派手なの頼むぜ!」
「ああ――ってやるわけないだろ! あんなゴーレムの群れはもうごめんだ、マナポーションだって続けて飲むものじゃない……」
「ははは、冗談だって。っと、早速魔物だ。行くぜ!」
コカトリスは、石化のブレスを吐く間もなくアレンに両断された。
「っあれ? 弱くねーか?」
「次だ、来るぞ――俺が行こう」
「おう任せた!」
並んだ石像のうちの一つがレイに襲いかかる、が。
「――炎よ!」
熱線で体の半分を消し飛ばされて沈黙した。うーん、君ら強くなってない?
「やっぱり弱えーな。さっさとまわって次行こうぜ、次」
「……そうだな。少し妙だが、気にしてても仕方がない」
そりゃゴーレムに比べりゃ弱いが。てかゴーレム罠全部起動して生きてる君らの方がおかしいんだが?
まあそこはこの際仕方ない。リフェアみたいに数……ってか量の暴力されるよりはマシだ。ボスのギガントは普通の個体よりかなり強いし、そこで苦戦してくれ。てか油断して落とし穴とか落ちろ。
「あっ宝箱発見! ねえアレン、ほらあの柱のとこ!」
「おっナイスだアリー、開けてくる」
「おい待て!」
とか言ってたら早速罠か? どれだ? 折れた柱の裏……普通に中身入ってたっけ?
いや、何かあったはずだ。じゃなきゃこんなにワクワクしてるはずがない。
「な――!?」
「馬鹿――!」
宝箱に辿り着く直前で轟音、色々吹っ飛んで魔物が集まってくるついでにゴーレム罠まで起動だ。パーフェクトピタ〇ラスイッチ。
そうだ思い出した。あの箱フェイクなんだよ実は。ミミックではないが、元からなんも入れてなかった。
「げほ、げぇっほ、うぇ」
「避けろ! ――炎よ!」
レイが後ろから寄ってきてたガーゴイルを一体仕留める。だが流石は擬似誘引トラップ、多分階層中の敵が集まってきてるな。
「あ、アレン……その……ごめんね?」
「問題ねーよアリー、怪我もない。ってことでレイ! 今度こそ頼むぜ!」
「だから魔力が足りてない! こんなところで全滅するわけにはいかない――俺はゴーレムを相手する、アレンは他の雑魚を!」
「あいよ、任せな! アリーはレイの援護に回ってくれ、こっちは俺だけで大丈夫だ!」
あの爆発に巻き込まれながら、もう両手剣担いで走り回れるのか。やっぱり神に愛されてるぞこいつ。
アレンの方はガーゴイルも基本一撃……悪くても数発で殺せてるっぽいし、魔力不足のレイがどう対処するかってとこだな。




