旅の前に 2
投稿いたします。
見ていただけると嬉しいです。
大小の色々な店が並ぶ王都の一角に、外周を彫刻や贅沢なガラス窓をふんだんに使った一際大きな建物があった。
王国中の各主要都市や、街に必ず店が存在し、魔宝石の製造販売、主要穀物の輸出入、武器防具の製造販売、貸し金融業、奴隷売買等を手広く商うのがここに本店を置くダルナン商会だ。
昼間ならば多くの客で賑わうだろう商会も、この時間では人通りも少なく静けさが支配し始めめていた。
そんな中、街灯も少ない細い路地を小早に歩く人の影がダルナン商会の建物へと向かっていた。
その人影は、周囲を伺うような素振りを見せながら、ダルナン商会建物の正面玄関を素通りし奥の細い路地へ向かう。
しばらく商会の建物沿いの細い路地を歩き続け、小さな木戸の前で立ち止まった。
良く見ると、黒っぽいフードを頭からすっぽりと被り、昼間なら確実に不審者と言われそうな格好をしているが、この夜深い時間ではその格好が闇に溶け込み自然に見える。
そのフードから手を出し木戸に数回何かのリズムに合わせるかのようにノックを2回繰り返す。
暫くすると、木と金属が軋み合うなんとも言えない鈍い音と共に戸が開かれ、その黒い人影が商会の建物の中に入って行った。
「あの動き、商人とかではなさそうね。これは探りを入れる必要がありそうだわ。」
そう呟くのは、今の人影を数件先の建物の屋根上から覗いていた全身黒一色の服に身を包むリーシェンだった。
冒険者の時に着る白を基調としたデザインに似ているものの身体のラインが解りやすい程のタイト目な服装をしている。ジャケットも現世で云う防弾チョッキの様な感じで他には防具らしい防具を付けておらず、隠密性と運動性を重視したシンプルな出で立ちである。
これはレンが狙ってなのか趣味なのか、その腰回りの異常なまでのフィット感は世の男性を釘付けにする必定のアイテムぽかった。
そんな事は特に考えもしないリーシェンは、自分達の為にそれぞれが活動しやすい服を準備してくれるレンに感謝しているくらいで、少しくらい恥ずかしいのは許容範囲のようだ。
予断だが、この格好で何時かレンの寝室に潜り込む訓練をカーナと示し合わせているのは現在のところ二人だけの秘密であるらしい。
「では、式神に伝言を乗せてレン様へ報告しましょう。」
リーシェンはジャケットにの一つのポケットから、手の平大の黒い四角な紙を取り出すと、その紙に魔方陣を発動させた。
すると、その紙が独りでに動きだしパタパタと折られて行く。
それからほんの3秒前後で四角い紙は飛行機の形を成していた。
「それにしてもレン様の考える物って不思議な物が多いけど、その実用性は驚愕なものだわ。」
掌に乗るその奇妙な形の折り紙を見つめていたリーシェンだったが、徐にその折り紙に息を吹き掛けると、音もなくスーッと夜の空へと浮き上がり、風もないのにある方向へと滑り出していった。
「よし、報告終了。それじゃあ侵入しましょうか。」
リーシェンが紙飛行機がうまく向かったのを確認すると、一瞬の間を置きその屋根の上から忽然とその姿を消した。
一方、ダルナン商会の裏口から入っていったフードの男は、身なりの良い使用人に建物の奥へと案内されていた。
案内される廊下には壁に要所要所に魔灯が備えられてはいたものの、その灯を燈す事無く、使用人の持つランプだけでそのフードの人の足元だけを照らし出していた。
いくらか歩くとその使用人がある扉の前で立ち止まり、そのフードの人も合わせて止まる。
「コンコン」
「旦那様お連れいたしました。」
「入れ。」
使用人が扉をノックすると部屋の中から野太い男性の声がした。
それを合図に使用人はノブに手を乗せ回すと、5センチ位の厚みがありそうな重厚な扉が音もなく開かれた。
使用人は扉の廊下側に直立に立つとフードの人に向かい恭しくお辞儀をし右手で部屋の中へと入るよう促している。
そしてそのフードの人もそれが当たり前のように静かに部屋の中へと入っていった。
それを確認した使用人は開けるのとは逆の動作で静かに扉を閉めたのだった。
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また、次回もお願いします。




