ファルシア姫 9
投稿いたします。
「あの~、何処からお話しすれば宜しいでしょうか?」
姫様が、物凄く可愛らしい笑顔を作って聞いてくるので、僕は厳しい顔で答えてあげた。
「生まれてから、今日までの事です。」
「は!はい!」
姫様は、座ったまま、リーシェンとカーナは立ったまま背筋を伸ばし、軍隊で懲罰を受ける兵士みたいに緊張した面持ちで話し出してくれた。
その内容はこうだった。
僕が生まれて、母様の幼なじみだったお妃様が、当時2才のファルシア姫様がお祝いに駆けつけてくれたそうだ。
その時に、ファルシア姫様が赤ん坊の僕を見て、あまりの可愛らしさに一目惚れしたそうだ。
姫様がそう言っているんだから仕方ないじゃないか。
で、その後も月に一度はファルシア姫様は僕に会いに来てくれていた。
さすがに1、2才の頃は覚えて無いのは当たり前なんだけど、その後が問題だった。
加護の啓示を受ける1年前の頃には、もう人の心の中の感情が感じられるようになっていたそうだ。
その為公の場に出ることがだんだん少なくなり、人と関わることを恐れ始めていた。
それでも、身内や、いつも一緒にいる気心のしれた侍従やメイド達とかは特に問題なく接していたとの事。
多分まだ力が解放されてなく、変に身構える必要のない人の深層意識までは感じる事が出来なかったんだと思う。
それでも、不安は積み重なっていく。
だから不安から逃れる為に僕の顔を見たかったらしい。
夜な夜な、僕が眠ってからこっそりベットの横にいてずっと眺めていたり、手を握っていたりしてたそうだ。
姫様曰く、無防備な僕の心は凄く綺麗で、凄く安心できたらしい。
だけど、僕が大きくなるにつれて心の感情が育ち、人の悪い面が増え出す事を凄く不安に思っていたらしい。
だからその変化を見逃さない様にと、毎週夜、お忍びで来ていたそうだ。
当然、僕が眠ってからだ。
「つまり、姫様は、僕の寝ている時に来て、僕の側に居たと?」
「はい。」
「手を握ったり。」
「はい。」
「寝顔を覗き込んだり。」
「はい。」
はあ、僕はそんな事をされていて、7年間も気付かなかったのか?
「僕って寝たら周囲の異変に気付かないのかな?」
「そんな事はありませんよ? 1年前に、盗賊の侵入を許した事が一度あった時、寝ておられたレン様もちゃんと反応されて対処されましたでしょ?」
ああ、確かにそんな事があったな。
その盗賊は、リーシェンやカーナにボコボコにされた後、母様に地獄へ連れていかれたんだっけ。
「じゃあ、何故、姫様には気付かなかったんだ?」
「レン様が気を許している人、もしくは赤子の時から寝ている時に一緒にいる存在として認識しているので反応しないのではと、思いますが。」
カーナがそんな事言ってくる。
まあ、そう考えれば納得は出来るけど、それが本当なら僕が寝ている間、心を許している人には何されても気付かないなんて事になってないだろうな?
ん?待てよ?
「カーナ、姫様が家に来ている事は知っていたんだ?」
「はい、私以外は、奥様とリーシェンメイド長が、知っていますよ。さすがにお部屋にお二人だけには出来ませんでしたから、私どもが交互に詰めておりました。」
「そうなんだ。じゃあ姫様と二人っきりになった事はないんだ。」
「いえ、初めの頃はお二人だけに差し上げてた事もありましたが、2年前に姫様が裸になって、レン様のベットに潜り込まれていた事がありましたので、さすがにお二人だけには出来ないと、奥様が言われてからはそうでしたね。」
「ファルシア姫様!」
「は!はい!!」
「何を、しようとしていたんですか?」
「えーっと、何をとおっしゃいますと?」
「裸になって何をされるつもりだったんですか?」
僕は少し怒ったふりして問い詰めてみた。
さすがにこれは貞操の危機でもあったのだから仕方ないでしょ。
「そのですね、ちょうどその時に加護の啓示を受け、神意を見る者、を授かった時だったんです。それ以降人の考えや感情が、私の意思に関係無く見えてしまうようになって、精神的にかなり追い詰められていました。」
その時の事を思い出しているのか、体が少し強張って見える。
「そして、今まで特に問題なかった侍従やメイド達の心の奥底の声が聞こえ、それは私に対する妬みや嫉妬など今までは感じなかった感情があることが判ったんです。そしたら、私の大好きなレンティエンス様はどうなの?と凄く不安になったんです。」
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