スバイメル帝国の闇 11
投稿します。
是非一読を!
帝都、ベルリデルンにも夜は訪れる。
平和だろうと戦争中だろうと、夜は訪れ人々は生活の営みを止めその活動を一時休止する。
特に今の帝都は、戦争が起きる寸前の状態。
本当なら歓楽街が一番賑わうこの時間帯に、店は全て閉まり、人っ子一人街を歩く者がいなくなっていた。
幾つかの店は扉に板木が打ち付けられていて、完全に撤退している店も、幾つか見える。
一方、住宅街も人が外を歩く者を見ることは出来ない。
皆が不穏な空気を感じているのだ。
実際、帝国は戦争の開始に付いて、国民には一切公表はしていなかった。
それどころか、通常の流通を続け帝都への出入りを制限等はしていなかった。
その為、ほんのつい先日まで、訪れる人間もそうだが住んでいる住民でさえ、帝国が本気で戦争を起こそうと計画している事など、知る事が出来なかったのだ。
だからつい先日までは、この時間帯でもそれなりに人は行き交い、賑わっていた。
だが、今は違う。
昨日とうとう、帝都への出入りを全て禁止し、門を閉ざしてしまったのだ。
それまでに気付いた商人や歓楽街の店の者等の一部は閉ざされる前に国外へ逃亡し脱出に成功した者もいたようだが、住民の殆どは逃げる事も出来ず、帝都にそのまま残っていた。
そして、今日帝国より全世界に対して一斉の通告文が届けられ、帝国国民にもその通告文が張り出された。
3日後、栄光あるスバイメル帝国皇帝、トゥエルブ・スバイメルにより、全世界に対し聖戦の開始を宣言する。
我等の目的は、人だけによる正常なる世界の構築である。
その為に、この世の全ての亜人種を討ち滅ぼす事を宣言する。
亜人種の国や、里は全て焼き払い、亜人種を擁護する国は人の国であろうと敵国と見なす。
亜人はオーディ神や他の神から信託を受け、人が皆に授かる加護の仲介をする者とされている。
特にエルフ族は、それを良いこと人を見下し、自分たちを敬うよう仕向けるその腹黒さは、人には到底考えつかぬ悪行である。
我々人は加護等必要としてはいないのだ。
実際、加護を持たない庶民でも生きていく事は可能なのだ。
我等人族はその加護に振り回され、同胞の命を奪いあい、幾度となく争いを起こしてきた。
それに終止符を打とうではないか!
人族は加護等に頼らずとも生きていく術を身につけた!
今こそ、人だけによる正常な世界が実現する時がきたのだ!
立ち上がれ! この世界を人の世とする為に帝国と共に進む同胞を求む!
国であろうと個人であろうと我等は、同じ意思を持つ人であれば快く受け入れよう!
さあ! 共に戦おう! 純粋なる人の世の為に!
「なんですかこれは?!」
フル姉が、昼間に配布された帝国からの開戦宣言の号外文を持ってきてくれて、それを皆で見ている所だ。
「エルフ族やドワーフ族、獣人族が、人を苦しめる様な言い分はなんですか?」
シアやカーナがその内容にご立腹のようだ。
それはそうだろう。
これによると、神の加護を聞くエルフの神官は、全ての人の敵だと宣言し排除すべき対象の様に言っているのだ。
つまり、エルフの里の神官クウェンディ様や、ルル婆を排除しろと言っているのだ。
ついさっきまで修業をつけてもらっていたシアや、もともとカーナはエルフの血が4分の1程入っていて、エルフの里の出身なので、余計に腹立たしいのだろう。
「ルーシー君はどう思う?」
「これを、お父様が出されたと思うと、情けなさ過ぎて怒りしか感じれません。」
「まあね。僕もまさかこれを大義名分にしてくるとは予想して無かったよ。ただ。」
「ただ? どうかしたのですか?」
リーシェンが僕の言葉を聞き返してくれる。
「これ、下手をすると世界戦争を起こしかねない内容かもしれない、と思ってね。」
「「そうなんですか?!」」
ルーシーとシアが一緒に聞いてくる
僕達は今、最後の確認を教会の一室で始めていた。
ルーシーとシアは同じ国を背負う姫として、結構良い友達になったみたい。
先程まで、国の行く末に付いて二人で色々話していたからな。
ただ、この宣戦の布告をお読んで僕が不吉な事を言ったものだから、特にルーシーは顔を青くしてしまっていた。
「つまり、これは人間絶対主義のもと、人間以外と言っているエルフやドワーフ等の人達を亜人として括り、悪人と言い切ってしまっているんだ。そしてエルフやドワーフに良い感情を持たない一部の人間はそれなりにいる。特に貴族それもどの国と限らずだね。」
「つまり、レン様はそのエルフやドワーフを良く思わない貴族等が、帝国に加担するのではと思っているのですか?」
リーシェンが僕の言いたい事をちゃんと答えてくれる。
やっぱりリーシェンは頭の回転が早いな。
みんなのお姉さんとして引っ張っていけるはずだ。
「そう、帝国以外の大半の国はこの開戦の理由に反発し対抗しようとするだろうけど、その中枢にいる貴族の中で帝国に寝返る者がいるかもしれない。もしくは、これを期に内乱を起こし国を乗っとろうとする貴族もいるかもしれない。」
「そんな、そんな事になれば、帝国を迎え撃つどころか、国の中にも、近隣の諸国にも目を向けなければならないではないですか。」
シアが悲痛な面持ちで僕に問い掛けてくる。
「でも、実際、フォレスタールでもジルデバル元辺境伯の様にスバイメル帝国に加担していた者がいたよね。」
「・・・そうですわね。」
みんなの顔がすごく沈んでしまった。
ちょっとこれはいけないな。
「だから、僕はそうなる前に帝国の動きを封じ込めようと思う。その為には帝国の軍をどうにかしなければいけない。」
「そこで、わしの出番と言うわけですな。」
僕達が、話し合っている部屋に一人の男性が、女性に付き添われ重い体を引きずる様に入って来られた。
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