旅、エルフの里へ 12
投稿いたします。
「最初に言っておくが、お前が盗んだ帝国の機密を大人しく返せば、手荒な真似をしなくて済むがどうかな?」
口の端を上げ、嫌味な笑い方をする男。
「ふん、どうせそんな事は期待出来ないね。機密を知っている私も最終的には消えて欲しいのだろ?」
私は少しでも話しをして相手の情報や周辺の逃走経路を確認していく。
多分、私なら逃げ出せれるはずだ。
しかし、相手の男は私がそんな事を考えているのも承知の上で話しかけてきた。
「いくら話しても貴女にとって好転する事は無いですよ。」
そういうと、後ろ控えていた二人の男がその背中に隠れて判らなかったもう一人の影を前に突き出してきた。
私は愕然とした。
だってそこにはまだ10才にも成らないだろう、エルフの女の子がボロきれ一枚の囚人の様な服を着せられ、手首と足首には分厚い金属で出来た枷が付けられていたからだ。
「お前達! なんて事を!!」
「どうです。同属の女の子がこんなみすぼらしい格好しているのを見て?」
「な?! 彼女を直ぐに解放しろ! さもないとこの場から生きて帰れ無くなるぞ!」
私は感情をなんとか押さえるが、その女の子の痩せこけた身体や、所々に刻まれた傷の痕をみると、自分を見失いそうになる。
だがここで感情に任せて動けば、男共を殺す事は出来ても、彼女もただでは済まなくなるのは明白だ。
深呼吸をしてなんとか気持ちを押さえる。
「そうそう、落ち着いて話しましょうや。何簡単な事です。貴女が盗んだ機密と貴女自身の身柄を私達に委ねていただければ、この子の命の保障はいたしますよ?」
「本当だな?」
「こんな悪人面でも一応騎士ですからね、嘘は言いませんよ? 何なら誓約の術式でもかけましょうか?」
誓約の術式ね、誓約した言葉に術式をのせ、それを破った者は身体の一部が不随となる強力な誓約だ。
「そこまで言うなら信用しよう。絶対に彼女の命を奪うなよ!」
「判ってますよ。」
そう、約束をした私は、腰に下げていた短刀を外し、両手を頭の上で交差し、歯向かう意思が無いことを見せた。
「宜しい。おい! 拘束しろ!」
命令された、一人の男が私の後ろに周り、上げていた手を後ろに回され鉄製の枷を嵌め、首にも同じ様な枷を嵌めやがった。
そしたら手首の枷と首輪の後ろとを鎖で繋げて引っ張り出した。
「い、痛い! こら肩が外れるだろ!」
「ふん、これぐらいしておかないと何するか判らんからな。」
耳元でその男が、嫌味ったらしく言いやがるから背筋に悪寒が走る。
気持ち悪い!
ご丁寧にその後も鎖で繋がれて足枷までさせられて、歩く事は出来ても走る事が出来ないようにしやがった。
それを確認した男は、私のお尻や胸を触って来た。
「!!!! な、何しやがる!」
「なあに、本当に拘束出来たか確めたんだよ。」
男の顔が私の顔に近づく。
ここまで近づくと、暗闇でもハッキリと見える。
脂ぎった、肌に無精髭を生やした不潔そうな顔が。
荒い鼻息が私の頬に掛かる。
冒険者として汚ない物にもそれなりに耐性が出来ていたつもりだったけと、これは生理的に受け付けないよ。
「おい! やめとけ! あまり長居はしない方が良い。したければアジトに戻ってからにしろ!」
「へへ、わかったよ。楽しみにしてなよ。お前から欲しがる程可愛がってやるからな。そしたら色々教えてくれよ。グローデンの事やエルフの里の事なんかおよ。」
何も出来ないのが悔しい。
辱しめを受けるくらいならいっそ!
「おい、自害なんかしたら、このエルフの子供がどうなっても知らんぞ?」
「は!? 私が大人しく捕まったら助けてるといったじゃないか!」
「お前何言ってるんだ? 俺は命は助けてやると言ったんだ。他の事までは知らんな!」
当然の様な顔をして笑う男に、生まれて初めて憎悪というものを感じた。
「それでも騎士か! 自分でも騎士として嘘はつかないと言ってたではないのか!?」
はあ、とか溜息をついて私を馬鹿にした様な目で見てきた。
「これだからエルフは馬鹿正直な間抜け種族だって言われるんだよ。」
「口約束が何だってんだ! それに俺は嘘なんか言ってないからな。」
男は自分が言っている事が当たり前だと言わんばかりに私のことを馬鹿にしている。
エルフにとって約束は絶対に守らなきゃいけない事なのに。
人族はなんでこんなに簡単に約束を破る事ができるの?
ふと、私はレンちゃんの顔が浮かんだ。
あの子も人族だよ。
レンちゃんも約束を簡単に破るんだろうか?
私は今、自分が考えた事を頭から吹き払うように首を大きく左右に振った。
そんな訳無い! レンちゃんは絶対に違う!
それにライアスだって、馬鹿だけど嘘をつくような人族じゃない!
こいつがおかしいんだ!
私がその男を睨んだ。
すると私の睨む目が嫌だったのか、忽ち不機嫌な顔になり私を睨み返してきた。
「おい、良く見ておくんだな。お前の答え方や行動次第で、こいつの傷はこうして増えていくからな。」
男は無抵抗の女の子に短刀を腕に擦り付けゆっくりと引いていった。
短刀をなぞるように、荒れた肌から一筋の赤い線が浮き出て、血の雫が地面に落ちた。
「やめろ! 無抵抗な子になんて事するんだ!」
「だから、お前次第なんだよ? 判ったか?」
多分、今まで散々痛め付けられて来たのだろう。
抵抗することがどれだけ無意味なのかこの子は悟っているのだろう。
何も出来ない自分が情けなかった。
それでも最後まで諦めたくは無い!
でも、今はどうすることも出来ない。
「レン、ちゃん、たすけて。」
意識していたわけじゃないのに、言葉が出てしまった。
可愛い弟分に、助けを求めるなんて、でももし届くならお願い、助けて!
読んでいただきありがとうございます。




