何してるのお前はっ!
大陸北西部・ユーファミラ王国内
『ちなみにユニバンス王国で魔力を持つ巨乳血統の女性とかいらっしゃいませんでしょうか? もしユーファミラ王国にお越しくださるのでしたらできる限り厚遇すると……決して引き抜きではありません。ユーファミラ王国では魔力を持つ巨乳女性の移民を強く求めて行こうと思っておりますので。おほほ』と最後にとんでもない爆弾を投げ込んで王妃さまが僕らから離れて行った。
うむ。色々とユーファミラ王国の機密事項を聞いてしまった以上露骨にスルーも難しい。
魔力を持った巨乳女性? 尻好きだったパパンならメイドにでもして手を出してそうであるがな。そう言えば馬鹿兄貴の屋敷に居るメイドさんは巨乳では無かったな。
あれ? 落ち着いて考えるとハルムント家のメイドって巨乳女性が露骨に少ない? ん? 魔力量の多い女性は貧乳が多い?
「落ち着け。まだ慌てる時間じゃない」
思わず呟いて心を落ち着ける。
僕が知る限り巨乳と言えば誰だ? それも魔法が使えてだ。答えホリーとリグか?
エウリンカは魔法を使っているがあれを魔法とするのは微妙である。ただ問題は彼女の場合はドラゴンを斬れる魔剣を作りそうだ。ふむ。今度何本かドラゴンが斬れる魔剣を作って貰うかな?
「あれ?」
落ち着け。確かドラゴンを斬れる剣は存在しているはずだ。
「ストップ禁止よ。ご主人さま~」
「ほいほい」
義腕の調整をしている悪魔に呼ばれて気づく。
歩きながらの考え事は危ない。知らずと立ち止まっていた。
追いかけて荷車に乗って……作業中の悪魔を邪魔するのは気が引ける。
というかコイツは作業中に邪魔すると手より暴力が先走るタイプである。コロネはまだお腹を押さえて蹲っている。チビとは言っても人が2人も載っていると荷車が狭い。
「あう」
コロネを捕まえて人形感覚で抱き締めて座る場所を確保する。
最初抵抗したコロネも黙ってお腹を押さえ静かになる。それで良い。僕は考えたいのである。
どこまで考えたっけ?
思い出した。あれだ。ドラゴンを斬れる剣だ。
そんな剣がユニバンスには1本だけ存在している。
確か馬鹿兄貴がそんな剣を持っているとか誰かから聞いた。
誰だっけ? ミシュかルッテ辺りか?
それはドラゴンの血を煮た窯の底に溜まった鉄で作った大剣だったと思う。
つまり素材次第でドラゴンは斬れるということか?
それ以外にもサツキ村の人たちはゲームや漫画の世界で存在する空気の刃をあれしてドラゴンを斬る。ただしこれは罠である。何故なら風魔法ではドラゴンの皮膚に傷を入れるのが精いっぱいだ。
一度アイルローゼに聞いたことがある。『四代元素系の攻撃魔法でドラゴンは倒せるのか?』と。
答えは可能である。
問題はそれを実行する方法と魔力量だ。
風ならドラゴンを斬れるほどの刃を作れるか?
ちなみにファシークラスの刃が作れれば可能らしいが、彼女の魔法は刃を作る魔法であり純粋な風魔法ではないらしい。
水ならドラゴンを溺れさせるほどの水玉を作りそれを顔に張り付けて窒息させれば良い。
火ならドラゴンが燃え尽きるまでの火力を維持すればこんがりとまる焼けだ。
土ならドラゴンの皮膚を貫くほどの強度を作り刺し殺せば良い。
カミーラなら可能かも? ただ姐さんの場合はドラゴンを殴り殺しそうだけどね。
そんな感じでドラゴンは比較的頑張れば退治できる。
それが難しい理由は相手も生きるために必死に抵抗するからだ。
魔法使いが居て魔法を使われれば生き残るためにその魔法使いを狙う。
ドラゴンはゲームのように適当に攻撃してくる敵ではない。回復や遠距離攻撃から確実に殺しに来る。つまり賢い……とは言い難い。何故ならドラゴンの場合は本能で殺す順番を決めているっぽい。そうノイエが断言していた。
「ごしゅ、んっ」
魔法でドラゴンは殺せる。
公国のドラゴンスレイヤーがまさにその見本である。だが強力な魔法は扱いが難しい。
こればかりは才能の世界だ。アイルローゼやファシーくらい魔法の才能に優れていれば使用は可能だ。馬鹿従姉は知らん。アイツの実力などに興味はない。
「ん」
ノイエから警告が来たから『あれ』に関しては今回の考査から外そう。
なら魔道具は?
この大陸には何個かドラゴンを屠れる魔道具が存在している。元々ドラゴン用では無かったっぽいけど結果としてドラゴンを倒せる魔道具として残っているのだ。
問題は魔道具には最大の弱点がある。経年劣化だ。
道具を使い続ければ普通に劣化して壊れる。自己修復機能が付いている存在もあるが、大半の魔道具にはついていない。ちなみについている魔道具の製作者は悪魔である。
「凄いな悪魔って」
「知ってる」
知ってたか。なら別に良い。もうその件で褒めん。
悪魔は道具が使えば劣化することを理解していたから自己修復機能を付けた。もちろん全てではない。上位の……それほど国宝クラス以上、神器レベルの魔道具だ。あの義腕にも搭載されている。
ここで問題なのがその話アイルローゼの前でするのは危険である。フレアさんのあの魔道具には自己修復機能は付いていない。『何故?』と思ったが『できないのよ!』とマジギレされた。
自己修復機能に関してはどうやら悪魔の独壇場らしい。無駄に高性能な悪魔である。
「知ってる」
「何も言ってない」
心の声にツッコミを入れるなと悪魔に言いたい。
ん~。もしドラゴンスレイヤーを増やしたいのであれば魔道具捜索が一番である。
実際ユニバンスでもそれら魔道具を求め遺跡を発掘する一攫千金狙いなとレジャーハンターは複数存在する。
過去に作られた魔道具、それも稼働可能な物は研究対象にもなり得るから高額で買い取られる。それと一緒に魔法の書も見つかったりする。これは魔法使いが自分で作り上げた魔法を書き残した物が多く、現在に伝わっていない魔法の可能性が高い。これも高値で売られる。
アイルローゼの知らない系統の魔法だと澄ました顔して小刻みに足を震わせ『さっさとわたしに寄こしなさい』オーラを発してくる。
ある程度焦らすのは良いが焦らし過ぎるとキレるから見切るタイミングが大切だ。
魔法書を読ませて上機嫌になった状態で『それでご褒美は?』と誘うのが一番スムーズで良い。
エッチなゲームだとアイルローゼは攻略後にとにかくお金がかかるキャラになるだろう。
可愛いんだけどね。
「もう、んっ」
抱きしめているコロネが良い感じで温かい。
やはり大陸の北側は寒いんだな。こうして抱きしめていると人肌で丁度良い。
それは良い。魔法や魔道具以外だと後は純粋にパワーしかない。オーガさんなどがその例だ。
これは人間辞めないと到達できない領域な気がする。
ノイエのような特殊なチート持ちでなければ絶対に不可能だ。
後は僕のように特別な祝福を得るしかない。ただこれは本当に特別だから普通に考えて難しい。
そもそも僕以外で祝福でドラゴンを退治している人は居るのだろうか?
居た。ポーラか。ポーラなんだけど……本当に祝福のみか? 今度真面目に聞いてみよう。
結論としてもし自国で新規にドラゴンスレイヤーを作るとしたらどうすれば良い?
天才的な魔法使いを育てるか武器に頼るしかない。ただしその武器もドラゴンを普通に斬れるレベルではなく圧倒できる威力を持っていないと辛いな。
「魔剣を大量生産するのが一番の早道かな?」
それしかないような気がする。
天才的な魔法使いってぶっちゃけ魔女クラスだしね。
悪魔が言うには魔眼の中には先生以外だと2人ぐらい魔女を名乗って良い使い手が居るらしい。
ファシーとシュシュだ。
シュシュの場合攻撃より防御だからな~。
何よりファシーはあの小さな体で凄く貪欲だから恐ろしい。可愛い振りしてこっちをその気にさせてから襲ってくるんだよね。彼女のそんな部分も大好きですけどね。
シュシュは基本『ダメ~』とか言って拒否しながらも甘えて来る。それが物凄く可愛くって最終的にしてしまう。ただ複数回は本気で嫌がるから一回に全力投入が良い。良くて2回で満足するしかない。
「失礼。ノイエ様に取り次いで……何をしていらっしゃるの! 汚らわしい!」
「……はい?」
ヒステリックな叫び声に現実に帰還する。
何をしているって考え事をですね……わなわなと震えて僕の腕の中を見つめているカレン王女様の視線に気づく。ここには抱き枕のコロネが、はい?
何故かコロネが半裸の姿で出来上がっていた。そして僕の両手は、うん。考えすぎたかな。
「何してるのお前はっ!」
「貴方ですわよっ!」
コロネへのツッコミに王女様が僕へツッコミを入れてきた。
© 2025 甲斐八雲
で、主人公は何をしながら何を考えていたんだw




