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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 29

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2325/2360

触手の研究?

 大陸北西部・両国の国境近く



「それで言い訳を聞こうか? あ~ん?」

「いやん。お兄さまの手でポーラの敏感なところが」


 頬を撫で回しているだけです。それにまだふざける余裕が君にあると?


「ノイエ?」

「待とうか兄さまっ!」

「何故待つ必要がある?」


 現実逃避しているのかもしれないが、君はいつでも打ち上げ可能状態なのだよ?


 具体的に言えばノイエの両手がポーラの脇を掴み持ち上げている状態だ。

 そのまま少し下げて発射すれば、君はあっという間に成層圏に突入さっ!


「そんなどこかの遊園地で握手的な軽さで言わないで~!」

「成層圏で、1人で握手?」

「それはただ神に祈っているだけ~!」


 良くお分かりで。でもいくら祈っても神は居ないぞ? お前たちが滅したんだからな。


「で、僕を置いて攻撃した理由は?」

「攻撃は最大の、」

「打ち上げ3秒前」

「最後まで聞こうか~!」


 全力でジタバタと暴れているがノイエの拘束から悪魔が逃れることなどできない。

 諦めるが良い。君の命はノイエが握っているのだよ。


「だってあれってナンバーだから……ぶっちゃけ1体に付き魔法1つの存在だしね」

「なの?」


 言って僕は地面に転がっている倒された魔道具を見る。


 あっ見ちゃった。


 その造形に色々とツッコみを入れたくなるから現実から視線を逸らしていたというのに……良くも僕に現実を思い出させてくれたな?


「いや~! 今日のスカート捲りはマジでダメだから~!」


 腹いせに悪魔のスカートを捲ったら全力で抵抗してきた。


 カボチャパンツの赤でした。


「シクシク……もうポーラお嫁に行けない」

「その時は仕方がない」

「兄さまが貰ってくれるの?」

「大根を伴侶にして、唾を吐きかけるなっ!」


 何てマナーのなっていない悪魔であろうか? 打ち上げるぞ?


「それでこれってやっぱりあれなの?」

「あはは~」


 地面に転がっている存在に対し悪魔が全力で笑い誤魔化す。うん。無理だね。


「物凄く軽い感じで動き回っているな~と思ったんだけど納得だよ」


 だって相手は風船のようなものだ。厳密に言うと浮き輪かな?


 空気を入れて膨らませた感じだ。それの人型だ。


「まさか異世界で実物を見ることになるなんて思わなかったわ~」

「あはは~そうよね~」


 作った本人であろう馬鹿が頭を掻きながら笑っている。


 判定。やっぱり有罪。


「ちょっと成層圏まで行ってみる?」

「待って! 聞こうかお兄さま!」


 ノイエがググっと構えたことに反応し、余裕をなくした悪魔が吠えた。


「これにはちゃんとした理由があるのよ!」

「理由……理由?」


 造形がダッチなあれに理由があるというのか?


「兄さまは知っているはずよ! ユニバンスでもこれの進化系である人形があったのだから!」

「あ~」


 確かチビ姫の護衛をしている長身のメイドさんがそれだよね? 胴体部分に本体を隠しているとか君が解説して教えてくれたっけか?


「で?」

「良い兄さま? どんな技術も一足飛びで確立したりはしないの! できることからコツコツとトライアンドエラーを重ねることで促進するものなのよ!」

「つまり?」

「それを作り発展させたからこそ今のあれがあるの!」


 身振り手振りを含んで馬鹿が全力で自身の主張を言い切った。

 実に素晴らしいよ。悪魔くん。


『ノイエ。軽く打ち上げてあげて』


「ん」

「どうして姉さまが頷くか、」


 悪魔が消えた。ノイエの腕の中から悪魔が消えて……視線を上に向けたら赤いパンツが良く見えた。

 そのまま落ちて来るのをノイエがまたキャッチする。


 打ち上げからの生還を果たした悪魔が、ノイエの腕の中でぐったりとしていた。


「そうか。距離が短くても打ち上げ速度が同じだと意味がないのか」

「兄さま? そろそろ本気でわたしも怒る時が来るわよ?」


 冗談無しのマジな感じで悪魔が噛みついて来た。


「おかわりが欲しいと?」

「いやいや待とうかお兄さま?」

「本当に悪魔は欲しがりちゃんだな~」

「いや~! こんなのは要らない! わたしは飛びたくなんて無いから~!」


 しかしまた悪魔が打ち上げられた。


 理由はノイエが両腕を自由にしたかったからかな?


 僕の前に移動してきた彼女は両手で構えつつ飛んできた魔法をアホ毛で叩き落としていた。


「ノイエさん? 悪魔を打ち上げた理由は?」

「アルグ様がおかわりって」

「あれ? 僕が悪い感じ?」

「はい」


 お嫁さんがはっきりと頷き返してきたからそう言うことらしい。で、悪魔は?


「ん」


 スッと移動したノイエが頭から落下してきた悪魔を捕まえた。


「……鳥とぶつかるかと思った」


 だから体勢を崩したのかね? 打ち上げられるルールとしてちゃんと足から落ちて来ないと、横とか頭からの落下は怖さが増すぞ?


「打ち上げることを止めようよ」


 常識的なことを言う悪魔を地面に下ろしノイエが軽く辺りを見渡す。


「姉さま。何体?」

「ん。3」

「集まりが悪いわね」


 僕らが留まり遊んでいるのにも理由がある。

 ナンバーと呼ばれる風船型ダッチなあれが集まるのを待っているのだ。


 理由は簡単。これらを従えている存在が居るはずだからだ。


「あ~。召喚の馬鹿が作った奴らだ」


 やって来た存在を見た悪魔が僕の背後へ回る。


 おい? 誰を盾にしている?


「嫌よ! 兄さまはこんな可愛い妹があんな醜悪な魔道具に掴まって成人指定な感じのことをされても良いというの!」

「成人指定の存在を魔道具にしたお前らがそれを言うなっ!」

「ありがとうございます!」


 ハリセンで叩いて相手を黙らせる。


 ただあれは……うん。2体は良い。まだ普通のダッチなあれだ。口が『O』なのが見てて腹立たしい。思いっきり馬鹿にされている感じがしてイライラする。


 問題はもう1つだ。他のと間違いなく形状が違う。しいて言うとタコの足を背負ったダッチなあれだ。


「あれが作られた経緯は?」

「……触手の研究?」


 だったらその研究成果を存分に味わって来い。


「ノイエ。この馬鹿をあれの前に投げてやって」

「ん」

「いや~! せめて兄さまに純潔を捧げてからじゃないと! あんな硬さのないふにゃふにゃ風船で初めてを奪われたくはないの~!」


 しかしノイエの辞書に容赦はない。悪魔を捕まえてポイっと投げた。


「残りをお願い」

「はい」


 スッと消えてノイエが近づいていた存在を退治する。


 ぶっちゃけ魔法攻撃をしてくる存在が接近戦とかダメだと思うわけです。

 個人的には強い魔法使いって固定砲台の印象があるわけで、それが移動して攻撃とかダメでしょう?


 そんな訳で一瞬で間合いを詰めるノイエの動きに反応できず、また地面の上に無残に萎んだ魔道具の残骸が増えた。


「いや~! ポーラのポーラが~!」

「……」


 騒がしいと思ったら悪魔が触手に掴まり……うん。ダメだ。エロさがない。


「ガッカリだよ!」

「助けようか兄さまっ!」

「お前なら勝てるだろう?」

「相性が最悪なの~!」


 何の相性ですか? そもそも触手との相性って何よ? 下手なことを言うと論争が起きて紛争が勃発するよ?


 個人的にはテレサさんを連れて来て観察したい。触手にはビキニアーマーだと思うのです。


「な~! 姉さま!」


 動かない僕を見切って悪魔はノイエに救いを求める。


「美味しくなさそう」

「判断基準がそれ~!」


 まさかの返しにポーラも目を剥いて慌てだす。


「だめ~! 本格的に……何か本当に下着の中に入ってきた! 冗談にならないから!」


 あ~もう。仕方がない。


「ノイエ?」

「むう」


 僕の声にノイエが動かない。スタスタと僕の元に歩いて来るとそのまま腰に手を伸ばしてきた。


「これ」

「はい?」


 鞘ごとエウリンカが作った魔剣をひったくった。


「で、こう」

「はい?」


 振りかぶって発射!

 見事悪魔を弄んでいた触手型のあれがパンっと割れた。


「触りたくなかった感じ?」

「ん」


 だったらその辺の石でも良かったのでは?


「石はダメ。避ける」

「はい?」


 ノイエと一緒に悪魔を助けに行くと、この馬鹿はバックを取って全力で僕の首を絞めてきた。


 何でもあれは魔力に反応するタイプで、魔力を吸収する能力があるのだとか。吸われていると魔法が使いにくくなるので外部からの攻撃が一番良いらしい。


 ただ魔力のこもっていない攻撃は回避するので、


「兄さまの魔剣で殴り倒すのが一番なのよ!」

「ならばそう言え」

「でしたね~」


 返り討ちにした悪魔にヘッドロックを決めつつ僕はそう言っていた。




© 2025 甲斐八雲

 大丈夫。表現はマイルドにしたから! 風船型のあれだから!


 刻印さんの技術的成長を感じられる素晴らしい話だ。


 で、そろそろあれがこれして…うん。来るな

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― 新着の感想 ―
更新乙 まず腐女子がなぜダッチなワイフの人形風船を知っていたのか しかもかなり初期型のをwww 名前は「南極1号~末番号」かな?
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