現実主義者と副団長
私が、受験者に紛れて副団長と面談しようとしたのには少しだけ訳がある。
まず、先触を出してこちらに来たのはいいけれど、受験者でいっぱいだった。
そのような時に、順番を抜かしてまで副団長と会うのはいかがなものか?と思った事。
後、これ以上目立ちたくないというのがあった。
だから、受験者に紛れたのだ。
「次42番、入れ」
中から呼ばれたので、さっさと中に入る。
中には、副団長がやはりいた。
「…ルイか。42番はどうした?それからヴォイドは?」
「42番は私。ヴォイドは43番です」
副団長がこめかみを押さえてる。
「先触出してるんだから、わざわざ受付を通らなくてもよかったんだぞ?」
呆れた顔をして副団長が言う。
なので、何故紛れていたのか説明した。
「ああ、昨日の件か…何というか、ルイ、気にするなと言っても気にすると思うが、団長はああいう人なんだ。恐らく本気で気づいていないと思う。許してやってほしい」
申し訳なさそうに言う副団長。
それでも、しこりは残るよね?
それにしても、実技の時のレイの印象が強すぎて、夜会の琉生の姿は団長にとってはレイにしか見えなかったんだろう。
何かそっちの方が、理由としたらしっくりくるしなぁ。
女が騎士を目指してるというのは、どうやらここでは常識外らしいし、固定観念に囚われて、レイを男と見誤ったか?
この固定観念が団長の根底にある限り、どんな格好をしても琉生はレイに見られるという事なんだろう。
でもまぁ、理由がどうあれ、やっぱり皆の前で3回も言う事はないよね?
てことで、ちょっと意地を通させてもらいます。
「昨日、気にしていませんと言いましたが、撤回します。団長の前では一生男でいる事に決めました。ええ。女のカッコの時は女装男で通してやります。はい」
副団長にニッコリ笑う。
少し気圧されている副団長。
「う、うむ。いや、まぁ、騎士団に入ると言うなら、団長の前だけと言わず普段から男のなりをしておけよ。何が起こっても知らんぞ」
え?その言い方ってもしかして。
「合格でいいの?」
と、聞いたら、おもいっきり呆れられた。
「あのなぁ、昨日団長が入団認めてただろうが。お前も受けてただろ?酔ってて記憶が飛んでるんじゃないのか?」
あっ、そういえば…!
団長にそんなことを言われた様な言われていない様な。
あれ?
その後、宗谷英規と何を話したんだっけ?
なんだか変な様子になったなぁと思って、私が無理やり話題振って、それから何を話したっけ?
部屋に帰った時のナリアッテが強烈だったので、その直前の事が思いだせない。
やはり飲みすぎたか。
「そうかも。ということは、合格だから面談通知来なかったって事でいいの?」
「ああ。昨日の功労で、免除ってとこだろう」
なるほど。
だけど、功労ってほど何もしていないんだけど…
むしろ、王様とか団長とかキョウキーニさんとかが、嬉々として敵と相対していたような。
「ヴォイドに通知が来なかったのもそう?」
「あいつはもう騎士で、近衛に所属している。本来試験を受ける必要はないんだが、ルイの側にいるのなら受験者になってもらった方が手っ取り早いんでな、申し訳ないが一緒に受けてもらったんだ。偽装なので通知は必要ないだろう?」
「実際に通知が来ると思ってたみたいだよ?」
副団長が、あちゃーという顔をしている。
「まぁ、ヴォイドはまじめだから、次の番だしフォロー入れておくといいよ」
「そうだな」
それから、副団長に今後の立場の確認をした。
すると、以下のような回答を得た。
これからはレイとして、研修訓練に参加する事。
途中脱落すれば、入団できない事。
その後脱落せず、騎士として入団出来た場合、在籍中は、女であることを極力隠す事。
もし、女だとばれて収拾のつかない事態となった時は、除隊となる可能性もある事。
「その辺りは、その時の事情も加味する。後、ばれないよう出来るだけ協力する。何かあれば、すぐに相談するように」
「解りました。ありがとうございます。よろしくお願いします」
そういってから、頭を下げ部屋を出た。
これで大体の方針が決まった。
明日から頑張ろう、私




