現実主義者と奇妙な夢

昨日はあの後、すぐに寝た。

何も考えずにベッドに倒れこんだら、すぐに眠りに付いた。

いい感じに酔いも回っていたし、眠りも早かったのだろう。

酔っていても、いつもどおりの時間に起きられる私の体は素晴らしい。

そういえば、夢を見た。

妙な夢だ。

会った事もない人物が突然出てきて、開口一番謝られた。

謝られる理由がないから頭を上げてくれと言っても、謝り倒された。

ひたすら謝り続けるこの男、名前をジオイ…なんだっけ？

まぁ、ジオでいいや。

で、なんで謝ってたのか?と聞くと、

「君を巻き込んだ」

との事だ。

まさかと思って、顔が引きつる。

そして一方的にジオが話し始める。

落雷のエネルギーを利用した、省エネ転送法を使って、宗谷英規だけをここに送る予定だったのだという。

だが予想外な事にその時間は雨も降っており、ちょうど宗谷英規の後ろを走行中の私の車に側撃雷が被雷し、一時的に極の役割を果した為転送フィールドが広がったとの事。

で、宗谷英規本体と宗谷英規周辺の物を送りこむ為、設定質量を余裕を持って140Kgに設定していたら、60Kg程余っていて転送フィールド内にいた私と私の荷物がこちら側に送られていたそうな。

もし60Kgを超えていたら、イレギュラーな存在である私の体か鞄が削られていたかもしれないと、案外ホラーな話をにこやかに話してくれた。

で元の場所に戻れるのかと聞いたら、戻れるという。

ただし、時間はかなりずれるとの事だ。

100年位。

マーキング済みの宗谷英規は時間もジャストで戻れるが、イレギュラーには無理だそうな。

「うわ、そういう落ちね」

と、思わず呟いてしまった。

ジオは申し訳なさそうに、詫びにオプションを付けておいたとのたまう。

う、なんか厭な予感がする。

「運気上昇と、あらゆる生物に好かれる性質をつけておいた」

待て！

なんだ?その、あらゆる生物に好かれるというのは…

何か?私は、蠅から果てはゴキブリに至るまで好かれ倒すというのか?

私の歩く後から後から湧いて来る蠅とゴキブリ。

おぞましすぎて、夜も眠れん。

「いらん！そんな性質！ていうか、お前か。キースや隊長やアークオーエンさんをあんなおかしな状態にしたのは…頼むから元に戻せ。いえ、戻して下さい。お願いします」

と、頭を下げて懇願した。

「えー?変わってるな。確変モテ期最強状態、又の名を"俺のターン状態"なのに喜ばないって、枯れてるとか言われないか?」

「と・に・か・く元に戻せ！」

「まぁ、元に戻せというのなら、元の状態に戻すけど。俺ならそのままにするけどな。ビバ!ハーレム!じゃあ、オプションほかに希望とかあるか?」

「ない」

「え～?ここは、考えうるあらゆる能力を言う場面じゃないのか?」

「ない」

「…。よし、決めた。じゃあ、加護をやろう。君にこの星におけるあらゆる祝福と加護を。ちなみに拒否は不可だ」

なんだか微妙なオプションだが…副作用とかあったら嫌だな。

とか思っていると、朝の6時になったのか目が覚めた。

変な夢だ。

希望も何もあったものじゃない。

すると、左手に小さく痛みが走った。

何だ?と思っていると、一瞬模様が浮かんですぐに消えた。

もう一度見たが、何にもなかった。

窓から風が入る。

風に乗って、小さく声が聞こえたような気がした。

『君にこの星の加護を。行く先に幸多からんことを』