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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第三章
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奏の新たなる覚醒

 その瞬間、奏の体を光が包み込んだ。すると木刀は、奏が変身していないにもかかわらずに真剣へと変化したのだ。

 奏は驚いたが、それ以上に、彼女は驚くことがあった。頭の中で思い描いていた真剣が、無から簡単に生み出せたのだ。

 普通、無から生み出すのは相当の苦労がある。下手をすれば気絶してしまうほどなのに、奏はいとも簡単に生み出している。ふと、奏の母の声が聞こえたような気がする。


(奏……今、あなたは段階が一つ上がった。つまり、新たなる覚醒。奏が作りたい物を自由に生成出来るようになったの。この力で、偽物のお父さんを倒して)


 分かったよお母さん。だったら……!

 奏は頭の中で剣の形を想像する。どんな能力でも切り裂くことができるが、決して人を傷つけない伝説の剣を。すると、何もない空中から、奏の想像した剣が現れた。この力に奏は驚いた。奏は持っていた若葉マークのバッヂを握りしめて、母に感謝していた。

 男は奏が出現させた剣に恐れを抱いていた。奏の能力なら無から何かを作り出すことなど不可能だからだ。


「な、何なんだ……! その力は」


「これは……あなたを倒す力。乗り越える力よ!」


 奏は剣を掴みとって、男に立ち向かっていった。男もただでやられるわけにはいかない。ナイフを取り出して、奏に斬りつけようとする。


「そんなので……!!」


 しかし、ナイフ程度で止まる奏ではない。男性が自分の肩に振り下ろしてきたのに合わせて、奏は鉄の鎧を想像し創造した。男性のナイフは鉄の鎧にぶつかると、いとも簡単に砕け散った。男は目を見開いて砕けたナイフを眺めてしまった。


「そ……そんな、俺のナイフが!」


 奏はすかさず剣を男性に向けて薙ぎ払う。男性の腕は切り裂かれたが、血は出ない。代わりに皮が破けたようになり、中から別の人間の肌が見え隠れした。

 男性は腕を必死に抑えているが、逃げるだけでは戦えない。奏は自分の気持ちを落ち着かせて、剣を構えた。


「これで……終わりよ!!」


 奏は剣を横に振って男を切り裂いた。その瞬間、男の体は裂けて、皮のように真っ二つに分かれてしまった。その中から、奏が追っていた男性が姿を現したのだった。

 奏は思わず失笑してしまった。自分は見知らぬ人を親だと思い込んでいたのか。だが、もう迷うことはない。これで心置きなく倒せる。

 奏は剣先を男性に向けて、睨みつけた。刃物を向けられた生身の男性は目を強ばらせて剣にだけ注意していた。


「あなた、何が目的? 未来に化けて、お父さんにも化けて……。ただの愉快犯?」


「ククク……ただの愉快犯でこんなことをすると思っているのか?」


「愉快犯じゃなかったとして、何が目的か聞かせて貰えないかしら? もちろん、拒否権はあると思って?」


 奏は不敵な顔をして男性を見下ろしている。もう男性は逃げられないだろう。その余裕が奏の意思を更に強固な物へと変化させている。

 その時、男性のスマホが着信を伝えた。男性は奏を警戒しながらスマホを取り出し、耳に当てる。その声は、今回の計画を伝えたあの男だった。


「ああ。準備は整った。計画はもう終わっていい」


「終わり……か。こっちはもうお前には会えないだろうな」


「そうか。それは残念だな……オレの優秀な部下だったんだが」


 奏は電話で喋っている人間が今回の騒動の原因だと考え、彼を問い詰めることにした。


「誰と話しているの!?」


「それはな――」


 ここで全てを話してしまえば、彼にも迷惑をかけてしまう。それじゃあ時間稼ぎをした意味がない。

 男性はスマホを地面に叩き付け、足で踏みつけた。そうなれば、スマホは破壊され、二度とその機能を使用することはできない。


「ざまーみろだ!! これでお前らは俺たちの計画を知ることができない! 俺はこの能力を手放すぜ!」


 男性がそう願うと、男性から光が溢れだし、光の珠が中から出てきた。それを確認すると、男性は地面に力なく倒れてしまった。真琴はゆっくりと歩いて奏の肩を叩いた。


「奏、頑張ったんだな」


「……うん」


「この能力、どうする?」


「どうするって……どうすればいいの?」


「お前が貰っちゃえよ。新しい能力が使えるようになるぜ」


 真琴の言葉に従って、奏は光の珠を自分に引き寄せる。すると、珠は奏の体の中へと吸い込まれていった。あまり新たな能力が使えるようになった実感は沸かないが、そんなことはどちらでもいいと奏は思っていた。

 こんな能力は奏は使う気などなかった。


「私はこの力を使わない。こんな力は封印した方がいい」


「そっか。そうかもな」


「ねえ、未来は?」


「あいつは他人の皮を被られたせいで……」


 ……でも、皮になった他人を戻すには、この力を使わないとダメなのかもしれない。

 それくらいならいいだろう。私だって、未来をそのままにはしておけない。

 奏は真琴に提案した。


「じゃあ、皮の力を使って元に戻そう。未来はどこにいるの?」


「未来は――」


 真琴は未来と明日香がいる場所へ奏を案内した。

 明日香にもちゃんと謝らないと。私、あの子を傷つけてしまった……。

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