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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第三章
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先を越されてなるものか! 奏の追跡!

「真琴くんが、廃墟好きな未来のクラスメートに、未来と一緒に連れ去られたあ!?」


 明日香から話を聞いた、奏の第一声がそれだった。予想外の声の大きさにびっくりして、明日香はビクつきながらも小さく肯定の意味で縦に頷いた。

 それからおずおずと言葉を付け加えた。


「かな姉、何か悪いことでもあるのかな?」


「うーん……」


 奏は顎に手を当てて考えてみる。未来のクラスメートには、自分と敵対していた時にお世話になったと、真琴は奏に告げていた。その時に、女の子の時は変な衣装を着させられたり、逆に男の子の時は嫌に攻撃的になって真琴を苦しませていたことも、同時に言っていた。

 奏自身も、一日だけ未来と入れ替わってクラスメートとして生活したことがあったが、確かに異様な雰囲気は奏でも感じていた。

 特に、未来に対しての感情があのクラスメート中でおかしかった。まるで、未来という神を崇拝しているかのような、そんな感覚。


「どうしたのかな姉?」


「……え!? あ、ちょっと真剣に考えててね」


 そこまで考えて、奏は最近の未来に対する自分の感情に注目した。最初は嫌悪に近い感情を持っていたが、彼女と接するに連れて感情が裏返っていく。どんな場合でも、彼女とは仲良くなれてしまう自身が奏の中に存在している。

 未来と会うまでは親しい友だちなどいない、付き合いの下手な自分だからというのもあるのかもしれない。しかし、奏はいつの間にかこんなに未来に好意を持っていた自分を疑問に感じた。


「ねえ、このまま……まこ兄とデートってことになるのかな?」


「――それはダメ。絶対に」


 今はそんなことを考えている場合ではない。未来と真琴が行ってしまったとなれば未来にチャンスがいくのは当然のこと。それだけは阻止しなければ。そんな思いが奏の中で大きくなっていく。

 奏は明日香の手を握って、真剣な表情をみせた。


「ねえ、未来と真琴くんが行った場所って分かる?」


「うん。あの騒動があった後、みら姉のクラスメートに聞いたから大丈夫だよ」


「じゃあ行こう! 未来の邪魔をしなきゃ――じゃなかった、廃墟に行くなんて危なすぎるからね!」


「かな姉……本音がちょっと出てたね」


「細かいことは気にしないで。さあ早く!」


 奏は自分の部活のことなど忘れて明日香と共に真琴たちが向かった廃墟へと進んでいった。

 彼女たちが進んでいる間で、小学校を横切り、奏は立ち止まった。

 確か、この学校に諌見ちゃんがいるんだった。

 奏は彼女も一緒に巻き込もうか迷った。何だかんだで友だちであるし、『元』怖い物嫌い同盟でもあるから、奏は彼女に親近感を抱いている。

 明日香は学校を見て、それから奏を見て彼女が何を考えているのかを納得した。


「いさみーも呼ぶ?」


「そうだね。明日香ちゃんはどうしたい?」


「呼ぼう! いさみーにも協力してもらおう!」


「協力って……?」


「みら姉の邪魔……してもらいたいんでしょう?」


 明日香はニヤニヤしながら奏を見る。奏はその表情の意味に気づいたのか、明日香から顔を逸らして頬を赤く染める。


「バ、バカ! そんなんじゃないよ。さ、呼ぶなら早く呼びに行こうよ」


 そうして二人は諌見の教室へと行ったが、諌見の答えはとてもシンプルなものだった。


「あーごめん先輩達。今日はちょっと……」


 バツが悪そうに、諌見は両手を合わせて舌を出した。両手を合わせるとパンっという音が鳴り、彼女のツインテールが揺れる。


「何かあるの。いさみー?」


「うん。今日はお母さんのために料理作らなきゃいけなくて。そう先に約束しちゃったんだ」


 お母さん、か。

 奏は自分の母を思い浮かべた。母親の死に際に分かった自分への愛。それは確かなものなのだろうか。

 未だに彼女の真意に戸惑っていた奏は深く考えてしまっていた。

 その様子に明日香は気づいて彼女の目の前で手を振る。


「かな姉? どーしたの?」


「え!? い、いや何でもないよ」


「ご、ごめん奏先輩。私、奏先輩の前でこんなことを……」


 諌見は奏がボーっとしてしまった原因が自分にあると思い、深く謝罪する。しかし、奏はそんな諌見に向かって笑顔で応えた。


「そんな、気にしてないって。早く帰ってお母さんに料理、作ってあげてね」


「うん。本当にごめんね先輩方」


 諌見を誘ったが失敗した奏たちは、再び真琴たちがいる廃墟へと向かっていた。

 先ほどよりは焦っておらず、ゆっくり歩いているのは彼女たちの体力が尽きたからであろうか。とにかく、二人は歩いている。

 奏はこの機会に、明日香と話すことを決めた。


「ねえ明日香ちゃん。聞いてもいいかな?」


「……何?」


「未来、どう思う?」


「みら姉? とっても優しい人だよ! たまに意地悪するけど……」


「私たちのような能力者は、みんな知らず知らずのうちに集まってしまうらしいの。でも、未来だけは何の能力者でもないじゃない」


「ん? そう言えばそうだね」


「未来って何者なんだろって思っちゃって」


「みら姉は僕達の能力をよく知ってるよね。だからじゃないかな?」


「どういう意味?」


「能力を知ってるから、自然と能力者の元に集まっちゃうんだよ」


 明日香の言葉を聞いて、奏は自分にため息をついてしまった。もちろん、それを疑問に思った明日香は頭にハテナを浮かべている。


「どうしたの?」


「私って友だち失格なのかなーって。こんな下らないことで一々悩んじゃって、友だちのことも変に疑っちゃうし……情けないな」

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