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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第二章 前半
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真相究明、彼女との約束は本当なのか!?

 次の日、真琴は事の真相を確かめるべく明日香と話し合うことを決めた。真琴の記憶にはなく、父の記憶にはあるという明日香への告白。あらかた父が適当なことを言っているのではないかと真琴は思っているが、このままでは奏への説得ができない。確実になかったというのを明日香の口から聞くまでは、奏と話せないだろうと思っていたのだった。

 学校で話し合うには恥ずかしいと思ったため、帰る際に声をかけて別の場所で話し合うことにした。

 本日のカリキュラムが全て終わった放課後、真琴はそそくさと帰ろうとする明日香を呼び止める。すでに駈け出そうとした明日香は真琴を背にして聞き取った。


「どうしたの、真琴?」


「ちょっと話があるんだ。ここじゃ聞きにくいから場所を変えたいんだが……」


「別にいいけど」


 真琴は明日香と帰宅を共にする。真琴にとってこの感覚は本当に久々だった。全身の細胞が明日香と帰宅しているのに歓喜している。それは決して恋愛感情からではない。幼いころの記憶がその歓喜の感情を呼び起こしているのだ。

 その頃、校門前で隠れている奏が一人待っていた。

 昨日はちょっと言い過ぎちゃったかな……。ちゃんと謝らないと。幼い頃の約束がフラグだからって負けられないよね。私だって、真琴くんとは運命的な出会いを果たしたんだから。

 昨日の行いを反省し、彼に謝罪するためにあえてタイミングを伺って隠れていたのだ。

 その傍らにはいつの間にか未来も潜んでおり、彼女はまだ気づいていない奏に向かってひそひそ声で話しかけた。


「奏ちゃん、何やってんのここで」


「ひぅ! み、未来か……。何でもないってば。ていうかどうして私が隠れてるってことが分かったのよ」


「TSFのあるところ、神野未来ちゃんの姿アリってね!」


 奏はため息をつき、神出鬼没な未来に呆れ果ててしまったと同時に未来を疑いだした。

 彼女は本当に能力者ではないのか。もしかしたら何か隠し持っているんじゃないか。疑い出すと止まらないのが奏である。奏は未来にジト目を向けた。

 昨日真琴に注がれた視線が今度は自分に振りかかる。何故、自分がそんな眼差しで見られているのか分からない未来は脳天気に奏に尋ねた。


「ほえ? どしたの奏ちゃん」


「どう見ても怪しいじゃない。未来は能力を持ってないのに能力者の前に現れる。能力者は惹かれ合うって真琴くんが言ってたけど、本当に何も持ってないの?」


「私もね、持ってたら持ちたいよ。アカシックレコードを記憶に宿していたり、実は最終兵器だったとか、神様の化身とか、力を隠して劣等を偽ってたら、私だって苦労してないって」


 ハハハと笑いながら奏に話す未来に、奏はまた考えを改めた。

 やっぱり、未来が能力を持っているなんて考えられないっか。でも、未来が隠しているのは……。


「偽ってるのはその性癖……か」


「あ……あれあれ? 今サラリと酷いことを言われたような」


 未来の疑問を無視し、奏は真琴が校門へ来るのを待ちわびる。その間にも、奏は謝罪の言葉を考えている。

 どう言えば許してくれるだろう。やっぱり素直に『ごめんなさい』かな。でも、それで許してくれないかもしれない。『申し訳ありませんでした真琴様』……? ううん。そんなんじゃダメだよ私。ここは昨日仕入れたネット知識でいった方がいいかな? 『べ、別にアンタのことなんか好きじゃないんだからねっ!』……うーん、パス。


「あ、真琴ちゃんだ」


 未来がそう言わなければ、奏は自分の世界に入り浸って待ちぼうけをくらうことになっただろう。しかし、その方が良かったのかもしれない。

 未来の声に奏が反応して顔を上げると、彼女の目にはとんでもない光景が映っていた。

 真琴が知らない女の子と手を繋いで歩いているのだ。いや、あの子がウワサの明日香って人……?

 長い髪だが、未来とは違った清涼さを感じさせる。というより、未来よりも髪を伸ばしている。彼女の放つ笑顔は、少女のようで少年のような明るさを醸し出している。見た目は普通の女の子なのに、その仕草は女の子の奏から見たら男の子のように感じられてしまうのだ。

 その怪しい雰囲気に真琴は飲まれているのだろう。恥ずかしながらも少女と手を繋いでいるのだから。


 ――プッツン――


 謝罪をしようと思っていた奏は、その光景で何かが弾けてしまった。男の子に変身して、雑草を手に取り真剣に変化させた。その目は獲物を捉えるような鋭い光に満ちていた。


「殺そう……」


 今にも立ち上がって真琴を殺害しに行こうとする奏を必死に引き止める未来。さすがに女体化能力を持っている真琴が殺されるのは未来でも避けたい事態であり、貴重な能力がなくなるのは嫌だった。


「奏ちゃん!? ちょっと落ち着こう!」


「未来、神様なんて居なかったんだね。私、やっぱり男の子は全て処刑するべきって思った」


「それは耐性がないだけだって! 男の子は須らくそんなもんなんだよ」


「私……信じてた。真琴くんだけは私のことだけを見ててくれるって」


「大丈夫だって。真琴ちゃんはしっかりと奏ちゃんのことを……って私もバカー!? どーして人の恋路を応援してんのよっ!!」


 だが、今は応援しなければ奏の暴走は止められない。そこで、未来は一つの提案を出した。


「そうだ。尾行しよう尾行。それで真琴ちゃんを監視しようじゃないか」


「そうだね……殺しのタイミングはキスの瞬間の方がいいかな」


「いや、そういうわけじゃ……」

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