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TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第四章
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援軍、登場

「八戸都……神様だか何だか知らないが、ふざけるのも体外にしろ!」


 真琴は未来を守るために男の子から女の子へと転換を開始する。男の子らしいがっちりとした肉体と背丈は、女の子らしい丸く細い肉体と華奢な体に変化する。残念ならが、胸の部分は少しだけしか成長しないが、真琴はそれを気にしている場合ではなかった。

 自分が着ている制服もスラックスとYシャツといったものから、ブラウスのセーラー服へと変化を極める。胸を締め付けるような感触に、真琴はすでに慣れている。


「未来、出来るだけ遠くに!」


 真琴は未来にそう言い、落ちていた木の枝を拾って八戸都に立ち向かっていく。走って八戸都との距離を詰めた真琴は木の枝を転換させて鉄の棒にさせた。


「うおおおお!!」


 真琴は八戸都に対して空高く振りかざした鉄の棒を力任せに振り下ろす。


「ふふっ、この前と同じと思わないことです」


「なっ――!?」


 八戸都は鉄の棒に触れることなく、ニヤついている。それもそのはず、真琴が振りかざした鉄の棒は八戸都の眉間で停止してしまったのだ。真琴がどれだけ力を入れようと、そこから先に行くことはない。無理に力を入れているせいで、真琴の両腕は震えていた。


「どうしてだ! 一体何が起きて――」


「あらあら。ずっとそんな体勢だったら反撃を受けますよ?」


「アグッ!?」


 真琴は八戸都が出した気合だけで後ろへと吹き飛ばされてしまった。体勢を整える暇なく、真琴はタイル状に並んでいるレンガの床へと体を打ちつけてしまった。


「真琴ちゃん!」


「わ、悪い。ちょっと油断してて……」


 真琴はすっくと立ち上がり、再び八戸都を睨みつけた。そして、後ろから近づいてきている二人に気づいたのだった。

 チャンスだ……。こっちに気を引き止めないと。


「八戸都。お前は神だと言ったな?」


「ええ、そうです。私たちは神なのです」


「未来も神だと言うのか」


「……未来の目を覚まさせること。それが、過去を司る私の使命」


 未来は八戸都の目的を知って、今までの頭痛に合点がいった。やはり、全ては八戸都の仕業だったのだと、未来は確信する。


「やっぱり、あの頭痛は」


「……?」


 しかし、当の本人である八戸都は未来の発言に疑問を呈していた。


「まあ、いいでしょう。私の使命には真琴、君が邪魔なんです。死んでいただけますでしょうか?」


「――今だ!」


 その瞬間、八戸都は後ろに痛みを感じた。肉を裂かれ、液体が吹き出てくる感覚。八戸都がゆっくりと後ろを振り返ると、ドヤ顔で剣を横に振り切っていた奏がいた。

 奏はすぐに跳躍し、真琴と未来の元へと着地する。そして、大きくため息をついた。


「まったく。二人があんまりに遅いものだから逢引してるのかと思った」


「んなことしねーよ!」


「冗談だよ。私、未来を信じてるから」


「みら姉! 大丈夫?」


 奏の後ろから明日香が飛び出してくる。奏も驚いたようで情けない素っ頓狂な声を出してしまった。

 明日香は未来に抱きついて彼女の温もりを感じ取る。未来は明日香の頭を優しく撫でて彼女をなだめた。


「大丈夫だよ。ありがとうね、明日香ちゃん」


「あらあら。ふふっ。あらあら。ふふっ。あらあら。ふふっ。あらあら。ふふっ。あらあら。ふふっ。あらあら。ふふっ。あらあら。ふふっ」


 壊れたラジカセのように、八戸都は自分がよく使う言葉を交互に繰り返していく。何事もなくただ繰り返すだけの言葉だが、明日香を含めた女の子たちはそれが恐怖に思えた。

 特に明日香は未来に抱きついて体を震えさせる。未来も怖かったが、明日香を心配させまいと彼女を大事そうに自分の体に埋めさせる。


「あらあら。ふふっ。……フンッ!!」


 八戸都が気合を入れると、切断された部分が自らの意志を持って合体しようとする。奏が傷つけた体は数秒ともたないうちに元に戻った。

 先ほどの八戸都の説明を聞いていない奏は、八戸都という存在に畏怖を示した。


「な……どういうことなの!?」


「神様……らしいぜ。あいつ」


「か、神様!? そんなの、信じられるわけ……」


 だが、八戸都の異質な光、瞬間的に消えた傷、この異様な状況に対する答えは真琴の言葉以外、奏は見つけられなかった。


「本当にあいつが神だとして……勝てるか?」


 真琴は奏にそう言っていた。頼れる仲間である奏に、自分の中の不安を取り除いてもらいたかったのかもしれない。それに気づいていたかどうかは分からないが、奏は真琴が欲しがっていた回答を示した。


「……当然でしょ? 私たちだって、神様みたいな力を持ってるじゃない」


「ああ。そうだな」


 ありがとう、奏。

 心の中で感謝した真琴は顔を引き締めて表情を固くさせた。

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