表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS☆ふぁなてぃっく!  作者: 烏丸
第四章
113/156

紹介、凛音ちゃん!

 未来と奏は、放課後になってお互い同じ気持ちを抱いていた。それは、今日の転校生をみんなに紹介するということ。二人は廊下でバッタリと出会って、そして同じ笑みを浮かべた。


「奏ちゃん、今日空いてる?」


「未来こそ、今日は暇なの?」


「もちろん! 話したいことがあるからね」


「私も偶然部活がないのよ」


 未来は奏に今日の出来事を話せることで嬉しくなったが、ふと奏の後ろにいる人物が気になってしまった。未来も奏が最初見た時と同じ感想――小学生――を持った。

 後ろを覗きこもうとしている未来に、奏は待ったをかける。イベントは全員が集まってからの方がいいに決まっている。


「待って。みんな集まってから話したいの」


「うん。分かったよ。じゃあ、庭に集まろうか。私が明日香ちゃんたちを呼んでくるよ」


「ありがとう。未来」


 珍しくも未来が率先して行動を開始する。それは、自分の話もみんなに伝えたいと思ったからだった。

 数十分経って、全員が集まった。明日香は未来と奏のニコニコ顔にワクワクしている。

 真琴の方は相変わらずの清涼感溢れる笑みに満ちていた。

 未来に目配せして、自分から話してもいいか問う。もちろん未来は頷いて許可した。


「今日ね、私のクラスに転校生が来たの」


「転校生!? みら姉のクラスに?」


「うん。それがこの子なんだけど……」


 奏がそう言うと、彼女の後ろに隠れていた女の子が前に出てきて挨拶を始めた。その女の子は丁寧にお辞儀をしていた。


(めぐり) 凛音(りんね)です。奏のお友達ですか。宜しくお願い致しますです!」


「あ、いやこちらこそ……」


 未来はつられて凛音に対してお辞儀をする。

 挨拶が終わると、凛音はお辞儀を止めて未来たちを見つめる。その際に、トレードマークであるサイドテールがぴょこんと動いた。

 奏は凛音のその行動にすでに目を細めて喜んでいた。


「可愛いでしょー? 是非みんなに紹介したいって思ったんだ」


「ま、まあ可愛いと言えば可愛いけど……」


「ねえかな姉。どうして小学生がここにいるの?」


 純粋な疑問を明日香は奏にぶつけた。未来も気になっていたが、さすがに小学生ではないだろうと思っていた。内心、疑問点を明日香がツッコんでくれたので未来は感謝している。

 明日香の言葉に、凛音は少しだけ顔をむくれて不満を示していた。


「凛音は小学生じゃないです。みんなと同じ高校生ですっ!」


「ねえー? 必死になってる所がまたいいよねー?」


 まるで小動物を眺めているかのように、奏の顔はとろけていた。自然と、奏は凛音の頭を撫でてしまっている。凛音は少し嫌そうな顔をしていたが、決して無下にはしなかった。


「俺は全ての愛を愛する男、真琴って言うんだ。これからはよろしく頼むよ。凛音ちゃん」


「……? よろしくお願いしますです……」


「あー、今、真琴くんは少し……いや、凄くおかしいから。あとちょっとで元に戻るはずなんだけど……」


 真琴の異様な様子に疑問を持った凛音をフォローするように奏が解説を加える。


「フッ、おかしいとは酷いな奏。俺はいつもどおりじゃないか」


「まこ兄……カッコつけすぎだよ……」


「はっはっはっ。明日香、君は本当に面白い女の子だね。まあ、そこが大好きなんだけどね」


 奏は心の中で泣き、ため息をついた。いつになったら、彼は元の姿に戻ってくれるのだろう。自分が大好きだったあの人に戻ってくれるのだろう。

 それは待つしかない。時間を経るしかない。

 凛音は奏の言葉に納得したのか、真琴に対して同情のような表情をしていた。


「凛音……か」


 未来は凛音の登場を素直には喜べなかった。仲間ではない人物の参入。それは新たなトラブルの元なのかもしれないと思っているからだ。もしかすると、新たな能力者なのではないか……? 更に、何故か未来にとって彼女は好きになれなかった。確かに凛音は可愛く、とても人懐っこそうだ。だが、未来の胸の中はモヤモヤしている。

 そんな未来の疑り深い視線を感じたのか、凛音は未来に向けて無垢な瞳を向けた。


「ん? どうしたです? 凛音の顔に何かついてるです?」


「――え!?」


 マズイ。表面上は親しくしておかないと怪しまれる。

 未来は側だけを取り繕って事を終息させようとする。冷や汗をかきながら、未来は必死に否定をした。


「あ……アハハ! 何でもないんだよ!」


「そうなんです……?」


「未来、こんな可愛い凛音ちゃんが敵なわけないよ」


「う、うーん……でもさ奏ちゃん、何度もそう言って敵だったことがあったから……」


 敵。未来は自分の話題を何一つ言ってないことに気がついた。そうだ。自分も転校生が来たことを言わなければならないんだった。今は凛音よりも、彼女の方が怪しい。

 未来はすぐに表情を変えて自分のことを話し始めた。


「それはそうとみんな。私のクラスにも転校生がやって来たんだよ」


「みら姉のクラスにも?」


「うん。確か八戸都って苗字だったと思うんだけど、その人が……」


 その時、未来の背中に悪寒が走った。それは朝のホームルームで感じた冷徹な視線と同じだった。

 ま、まさか……。

 未来が恐る恐る後ろを振り返ると、今未来は話そうとしていた人物が自分たちのグループへと近づいてくるではないか。

 八戸都は未来たち全員を見下すかのような視線を送っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ