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悪辣聖女見習いと行く、リリンサの冒険  作者: 青色の鮫
第2章「新人冒険者とドラゴン」

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第48話「ワルトナちゃんの総仕上げ」

「はっ!お前は、何度何度、馬鹿な事をすれば気が済むんだよ!髭ダルマ!!」

「グフッ!グフッ!グフッ!」


「はっ!貴族だろうがなんだろうが、命あっての物だね!って言葉を知らんのか?あぁ!?」

「ドムッ!ドムッ!ドムッ!」



 それは、殴る蹴るの暴行。

 従者だと思われていたカンジャートが、主人たるビヨンビアドを痛めつけているのだ。


 そのいきなりの行動に、ソクトやモンゼ、ワルトナでさえも茫然。

 なお、リリンサだけは平均的な顔で、カンジャートを応援している。



「痛い!痛い!血迷ったか!!私はサーフェイホース……」

「はっ!知ってんだよ、んな事は!!だから金でお前に雇われてんだろうが!」


「ングッ!ング!やめよ、やめてくれ!貴族なのだぞ!」

「はっ!貴族ってのはなぁ、『たっとぶ族』って書くんだよ!貴ぶって知ってるか!?」


「飛ぶ!飛ぶ!意識がッ!!」

「はっ!貴ぶってのはな、尊敬するって意味だよ!で、お前のどこに尊敬する要素がある!?どうみても、目に墨が入って無いダルマじゃねぇか!!」



 ダルマとは、祈願成就に使う民芸品である。

 その使用方法とは、叶えたい願いを思い浮かべながら塗られていないダルマの目の片方を塗り、願いが成就した時にもう片方の目を塗る。

 そんな事を思い浮かべたワルトナは、カンジャートが言った事の意味を考え……噴き出した。


 あはは、目が塗られていないって、願いすら立てられない無能って事だよね!

 まさにぴったりな表現だね!今も転がされてるし!!


 ……さて、思わぬ事態になったが、手間が省けた。

 力量差を理解してくれてるのなら話が早い。一気に行くとしようかね。

 よし、最初は小手調べ、大人の武力に怯える子供っぽい感じで行ってみよー



「待って、待って、そろそろやめないと死んじゃうよ!」

「はっ!……っと、そうですね。止めましょう」


「変わり身、はやっ!まぁ、嫌いじゃないよ」

「は、冒険者ってのは、強き者には逆らいませんので」


「おや?僕の実力を見抜いているのかい?」

「は、それは認識阻害ですね。その独特な雰囲気と、ここまで歩いて来た時の足取りを見て、俺よりもランクの高い上位者であると確信しております」


「……。へぇーやるね」



 なるほど、コイツは良い冒険者だ。

 正真正銘、トップクラスの冒険者で間違いないね。


 普通、僕みたいな子供が乱入したら怒鳴り散らされるか、運が悪けりゃ殴られる。

 あれだけ口汚く罵っていたんだ、それなりに怒ってはいたはずだしね。


 だが、冷静さを失ってはいなかった。

 僕の動きを目で追って、杖を伸ばせば届く距離に入る前に暴行を止めたし、もしや、怒っていたのすら演技かな?

 ともかく、ダルマは転がった。

 起き上がるには時間がかかりそうだし、その間に話を纏めてしまおう。



「じゃ、余計な説明を省くよ。そこの貴族はどんな奴で、どんな理由でキミを雇い、どんな悪事を働いたんだい?」

「は、コイツは隣町の小貴族の次男坊で家も継げず、ふてくされた男です」


「キミは?」

「俺は流れの冒険者で金で雇われています。目的は護衛とコイツらのレベルをそこそこまで上げる事ですね」


「そこそこ?レベル四万は高い方だと思うけど?」

「あぁ、そりゃコイツが小悪党だからだと言う他ありませんね。殺し以外は何でも経験済みって感じで、元々のレベルが高いんです。で、ちっと戦闘を教えたら四万を超えたと」


「なるほどねぇ、ちなみに、ここの森に来たのはコイツの指示?」

「それは……微妙な所ですね。後ろに女性が二人いるでしょ?どうみても、ここに来るように誘導されてましたよ」



 ふぅん?指導聖母と関係ないのかな?

 ま、どっちでもいいや。どうせこの貴族はお終いだからね。


 でも、しっかりトドメは差しておこう。



「ちなみに、どんな悪事をしたんだい?」

「は、セコイ詐欺とか、窃盗、噂の風潮などですね。どうやら妄想癖もあるようで、自分は強者だなどと寝言を言う始末です」


「それ、危ない薬とかやってんじゃない?」

「は、俺が見る限りやって無いですね……と、起きたようです」



 そう言いながらカンジャートは、自分の足を頭の上まで振りあげた。

 どう見てもトドメを差す光景であり、それは困るとワルトナが止めに入る。



「ちょっと待ってね―」

「ですが……?」

「おま”!ま”ぁー!おまヴぇ、よくも殴ってくれたな!由緒ある鏡銀騎士団の指揮官たる私を、よくも!」


「うわー。見苦しい」

「はぁ、 ダルいでしょ?鏡銀騎士団に睨まれる訳にも行かんですし、そうなる前に痛めつけておこうかと思ったんですがね」



 なるほど、確かにこれは面倒だねぇ。

 鏡銀騎士団を敵に回すなんて、絶対に避けたい事態なんだから。


 鏡銀騎士団のトップは剣皇シーライン様という事になっているが、実は違う。

 というのも、もともとの鏡銀騎士団とは、剣皇シーラインの部下、兼、下剋上を狙う者の集まりだからだ。


 人類最強の剣士などと言われてるシーライン様の命を狙うんだから、当然、それにふさわしい武力を持つ。

 しかも、下剋上を狙うなんて、血の気が多くプライドが高い奴ばっかりな訳で。

 そんな集団が後ろについてますと言われたら、上下関係に敏感な冒険者は全員黙るしかないさ。


 だけどね……ホント、この髭ダルマって、運が無いなぁ。

 鏡銀騎士団の事を大切に思っているリリンの前で、その名前を出してしまうとはねぇ。



「おまえも!お前も!お前もッ!みんな報告対象だ!皆殺しにして貰うぞ!!鏡銀騎士団は侮辱を絶対に許しはしない!!」

「は!だから状況を読める程賢くなれってんだよ!口を封じられたいのか!」


「ひぃ、使者殿!緊急手段で連絡をとって頂きたい!」



 ビヨンビアドは短い悲鳴を上げると、後ろに立っていた女性の方に視線を向けた。

 そして、その視線を全身鎧の女性が受けて、冷えた笑みを返す。


「既に必要な情報は集まっている。もう、下手に出る必要は無い」と判断されているのだ。



「使者殿!?鏡銀騎士団に歯向かう愚か者がい……ごふぅ!」

「ビヨビヨ髭、いい加減に黙って欲しい」



 それが分かっているワルトナは、あえて言葉を言わせた。

 事態の収拾を計る為、ついでに、友達の憂さを晴らさせる為に。



「あー。いい蹴りだねぇ」

「加速と踏み込みが絶妙ですなぁ。内臓を破壊せずに痛みだけ響く場所を狙ったのも、グッドです!」



 ワルトナと人体の構造に詳しいモンゼは二人揃って感心している。

 そして、ソクトとシルストーク達はうわぁ……と思っている。



「ぐぅぅぅ。小娘ぇ……。きさま、鏡銀騎士団を知らぬのだろうが……」

「知ってる。とても凄くて最高な大型パーティー」


「ぐぬぬ、知っているのにこの狼藉。親の教育がなっとな――がふがふがふッッッ!!」

「なんだって?もう一度言って。言えるならね」



 あれ?今のって急所だよね?

 えぇ、急所ですな。


 そんなやり取りをしたワルトナは、速攻でリリンを羽交い締めにした。



「リリン!どう!どう!落ち着いて」

「むぅぅううう。お母さんとお父さんの事を馬鹿にした。許さない!《雷光もぐぅ!》」


「あーもー!ソクトさん、モンゼさん、リリンを抑えてて!」

「「無理だッ!」」


「やれって命令してんだよッ!キミらは実力を読み過ぎだッ!!」




 **********



「という事で、予定外の事がありましたが、事態の収拾を図ろうと思いまーす」

「「「「「分かりました!」」」」」



 ロープで縛られたダルマと従者を近くに置きつつ、カンジャートと鏡銀騎士団二名、エルダーリヴァ―の支部長、そしてヤミィルを含めた一同は円陣を組んで座り込んだ。

 これから行うのは情報交換であり、ワルトナの最終章第二幕『手駒を揃えよう』だ。



「まず、その髭ダルマがした悪さについては放っておくよ」

「は、ですが、置いといた結果、鏡銀騎士団にチクられるのは困るんですがね……。もともと、このダルマは鏡銀騎士団の鎧を着て俺の前に立ちました。こちらの女性達のコネが無くとも鏡銀騎士団とは繋がりがあると言う事です」



 カンジャートは声と姿勢を低くし、周囲のご機嫌伺いをしている。

 それは異様な光景だ。

 本来、レベル44000ものレベルがあれば、大見えを切って話の主導権を握るはずなのだ。

 ――だが、それは出来ない。


 リリンサとワルトナ、その二人のレベルは5万を超えており、そしてもう一人、全身に白銀鎧を着た女性も、レベル50259。

 最前線にいる熟練冒険者でさえ滅多に見る事のないそれを見て、カンジャートは委縮している。



「ん、問題ない。鏡銀騎士団があなたを襲うことなんて絶対に無いと約束する」

「は、ははぁ。ですがね、何らかの不幸が重なって、総隊長とか副隊長とかいう人に嘘でも吹きこまれたら――」


「それもない。なぜなら……私がその副隊長!」

「はぁぁ?それは本当ですかい?」


「……本当。そうだよね、澪?」



 そう言って、リリンサは謎の女性の一人に視線を向けた。

 そして、その――普段着の上にまだらに白銀甲冑を着た女性は頷く。



「あぁ、確かにリリンサは一番隊副隊長だ。この、澪騎士ゼットゼロが保証する」



 その言葉が言い終わった後には、もう、普段着の女性の姿はそこには無かった。

 その代わりに、そこに居たのは『最も英雄に近い』と呼ばれし者。


 素顔すら判別できない程に全身を白銀鎧に包んだその人物こそ、稀代の才能を持つ魔導剣士。



「はっ!ははは……馬鹿な……。レベル9万……だと……。」



 煌々と輝く鎧を纏い、そこに……。


 ―レベル91224―


 伝説が鎮座していた。




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