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遠い昔の夢【綾視点】
『慶、ごめん。仕事でなかなか連絡できなくて』
『……まぁ仕方ないだろ。学生とは違うんだから』
『このまま続けて行ける……?』
『ん? 俺はそのつもりだけど』
『でも……。こんなにすれ違ってて、付き合ってる意味あるかな?』
『……なに言ってんの? 会社でいい奴できた?』
『違うって! そんなふうに私を見てたの……?』
『いや、ごめん。……今はお互い少し頭冷やした方がいいな。それからまた話し合うか』
ーー
『やっぱり……、このまま続けて行ってもお互いのためにならないと思う』
『……まぁな。俺もそう思うよ』
『慶……、あのさ……』
『いや、俺が言う』
『別れよう』
ーー
遠い昔の記憶を未だに夢として見せるのは何故なんだろう。
神様は私になにかを訴えたいのだろうか。
『別れよう』の一言に強烈な胸の痛みを感じたのは現実も同じだった。
目を覚まして数分が経った今も、夢から現実に引きずってきた痛みはまだ消えていない。
これから仕事だ。
夢の余韻に浸っている場合じゃない。
出社の支度をしながら、昨日の莉子との約束を思い出す。
今週末、莉子に絵の描き方を教えることになった。
でも、自分自身が満足に描けていない状況で人に教えるのはどうなんだろう。
部屋の隅の、真っ白なままのキャンバスを見つめる。
なんとなく、心に迷いのようなものを抱えている自分に気付いた。




