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お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は転生者である。  作者: ma-no
小学校である

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048 運動会事変である


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。お母さんにだって自由にする権利はあるか~……


 母親が仕事に戻る準備をしていたから少し驚いたが、いまのご時世なら反対できない。私だって前世ではパートしてたけど、手に職があるって(うらや)ましいね。

 将来は母親を見習ってもいいかもしれない。でも弁護士は要検討で。自信ないもん。


 そんなことを考えながらも小学校に通っていたら、ジュマルも普通に授業を受けていたから私の出番はここまでだろう。ジュマルは相変わらず池田先生にバレないように寝てるけどね。

 私も授業に戻って真面目に勉強をしていたら、読んでいた教科書をいきなり安達先生に奪い取られた。


「広瀬さん、これって……」

「えっと……授業が終わってからお話しましょうか……」

「……ですね。あとで職員室に来てください」


 チャイムが鳴ると安達先生のあとに続き、職員室に入ったらもちろん怒られた。


「これって2年生の教科書ですよね? しかも表紙だけ1年生って、隠蔽工作までしてるって何してるの!?」


 だってここまでしてるもん。小1の発想でもないから致し方ない。


「これには深い事情がありまして……」

「先生悲しいです。先生の授業は面白くないのですね」

「いえ……兄の勉強を見ないといけないので、やらないといけなくて……」

「広瀬さんが教えてるのですか!?」

「母と一緒にです……」


 苦し紛れに苦労話を披露してみたら、安達先生は涙ながらに陥落。池田先生もやって来て、申し訳なさそうに謝られた。

 でも、これだけやってギリギリ及第点だから、私も申し訳ない。お兄ちゃんはどうしようもないバカなの……


 最終的に、校長先生判断で2年生の勉強は許可されたが、教科書を改造した人物だけは吐かされた私であったとさ。


 お父さん、濡れ衣着せてゴメンなさい。バレた場合は、お母さんからお父さんのせいにしろと言われてたの……改造は私の案だけど、ゴメンなさい。



 ちょっとしたトラブルはあったけど、母親も呼び出されずに済んでいつもの日々を過ごしていたら、あのイベントがやって来た。


「紅組がんばれ~」

「白組負けるな~」


 運動会だ。昨年はジュマルを参加させるのは不安だったから仮病でやり過ごしたが、今回は私がいるからと初参加している。ちなみに遠足とか課外授業も全て休ませている。猫が出て行方不明になり兼ねないもん。

 組が一緒になったのは、偶然か先生の計らいかは謎。これまでのことがあったからと邪推したけど、聞かないことにした。どの先生も私と目を合わせてくれないもん。


 たぶん、合同練習に私がいたほうがスムーズにことが進むと思ったんだろうね。組み体操とかジュマルの目の前で見させられたし……



 運動会が始まってしまえば、ジュマルの独壇場。出た全ての競技で1位をもぎ取った。まさかリレーのドンケツからゴボウ抜きするとは……

 そのせいで、学校の女子がジュマルにメロメロ。「キャーキャー」言って応援していた。ネガティブ要素を取っ払えば、イケメンだからね。両親も珍しくジュマルで「キャーキャー」言ってるな。

 でも、集まるのは運動会が終わってからにしてください。私が挨拶回りに駆り出されるの!


「アニキは大人気ですな~」

「そう思ってるなら列の整理ぐらい手伝いなさいよ!」


 ドサンピン……(がく)君もこき使って、私はこの騒ぎを収集させるのであった。


「先生、たっけて~~~!」


 いや、無理だから先生に救助を求める私であったとさ。



 そんな運動会も終われば、ジュマルのクラスに女子が大量に押し寄せた。


「並んで並んで~!」

「握手だけだからね!!」


 ジュマル、大人気。毎日女子がやって来るので、岳君だけでは手が足りないから結菜ちゃんにも手伝ってもらった。けど、なんか怒ってるな。

 クラスの女子も手伝ってくれたけど、早く帰そうとしているように見える。おそらく、ハーレムの人数を増やしたくないのだろう。私も睨まれたもん!


 私は私で味方が増えることはジュマルにとってプラスになるから、1人1人握手をする時に「仲間になって」とお願いしていたから、無駄な敵を作ってしまったのだ。


「みんな~。もうチャイム鳴ってますよ~? いい加減にしないと、休み時間は2階に来るの禁止にしますよ~??」

「「「「「ええぇぇ~」」」」」


 池田先生もこの騒ぎを収めようとしているけど、そんなことできるなら直ちにやってよ~。もう疲れたよ~~~。


 私がギブアップすることで……というか母親にチクったことで、やっとこさ学校も動いてくれて、ジュマルイケメン事件が収束するのであった。



 ようやく小学校は平穏を取り戻したかのように見えたが、帰宅時間になると校門には生徒が集まって、私とジュマルは囲まれてしまう。


「2年のクセに生意気だぞ!」

「「「「「そうだそうだ!!」」」」」


 次は男子だ。おそらく意中の女子をジュマルに取られたから、徒党を組んで抗議しているのだと思われる。


「なに言ってるのよ! ジュマル君がかわいそうでしょ!!」

「「「「「そうよそうよ!!」」」」」


 しかし、女子も諦めていない。ジュマルを守るように言い争っている。


 これは、小学校を二分する大騒動。このままでは学級崩壊どころから学校崩壊してしまうぅぅ~~~!


「もうやめて~! どうしてみんな仲良くできないの~。ララ、悲しいよ~~~」


 なので、私が必死に止めてみたら……


「「「「「オッフ……」」」」」


 男子はなんかモジモジし出した。


「「「「「かわいい……」」」」」


 女子もなんか私にメロメロになった。


「「「「「泣かないで~~~」」」」」


 そして何故か声が揃った。


「うぅぅ……みんな仲良くしてくれる?」

「「「「「うん!!」」」」」


 こうして私が涙ながらに訴えることで、この騒ぎが収まるのであった……



「ララ……」


 その帰り道、ジュマルが鼻歌まじりに歩く私に何か聞いて来た。


「ん~??」

「本当は泣いてなかったよな?」

「あ、バレてた? 上手くいったんだから、秘密ね??」

「なんかようわからんけど、ララって強いんやな……」

「そうだよ~? 女の涙は最強なんだよ~? お兄ちゃんも気を付けてね」

「う、うん……」


 こうしてジュマルは初めて、腕力以外の力を知ったのであったとさ。


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