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第24話

 翌朝、永遠長の携帯電話に、また土門から連絡があった。


「また、おまえか。今度はなんだ?」


 永遠長は、面倒そうに応対した。


「時間がないから、簡潔に言います。永遠長さん、今あなたは何者かによって、大事な人たちのことを忘れさせられているんです」

「俺に、大事な人間などいない」


 即答する永遠長に、土門は一瞬言葉に詰まった。


「言い方が悪かったですね。今あなたは、何者かによって記憶を操作されているんです」

「なに?」

「犯人の目的は、わかりません。でも今のあなたは、あったことがなかったことにされているんです。その証拠に永遠長さんは、ボクがあなたの携帯番号を知っていることを覚えていなかったでしょう? これは、秋代さんがあなたから聞き出して、ボクに教えてくれたからなんです。最初、永遠長さんは教えるのを渋ってたけど、秋代さんにケチ臭いとか、ケツの穴が小さいとか言われて、渋々教えたんだそうです」

「…………」

「犯人が、どうやってあなたがたの記憶を操作したのかはわかりません。でもボクなら、元に戻せるかもしれないんです」

「回帰か」

「そうです。あれで永遠長さんの記憶を、秋代さんたちを忘れる前まで戻すんです」


 土門としては、できれば昨日のうちに永遠長と接触したかった。

 しかし、回帰で日本に戻ったとき、すでに永遠長は異世界に行ってしまった後だった。

 なら、広い異世界を探すよりも、多少時間をロスしても、日本に帰って来たところでコンタクトを取ったほうがいい。

 そう考えたのだった。


「なるほど。おまえの話は、よくわかった。言われてみると、ここのところ俺の回りでは、いくつかありえないことが発生している」

「よかった。信じてくれるんですね。だったら、すぐディサ-スに来てください」

「その前に、試したいことがある」

「試したいこと?」

「すぐに済む。30秒ほど待っていろ」


 永遠長にそう言われ、土門が待つこと30秒。


「……なるほど。確かに、おまえの言う通り、俺は記憶をイジられていたようだ」


 永遠長から重く冷たい声が聞こえてきた。


「お、思い出したんですか? 秋代さんたちのことも?」

「……ああ、全部思い出した。何もかもな」

「ど、どうやったんですか? 回帰の力も使わずに?」

「その話は、また今度する。今は、それより先にやらなければならないことがある」

「そうですね。秋代さんたちも元に戻さないと」

「その前に、だ」

「え?」

「とにかく、後のことはこっちでやる。それと事情はどうあれ、おまえには世話になったようだ。この借りは、いつか必ず返す」


 そう言うと、永遠長は一方的に電話を切ってしまった。


 土門にとっては、わからないことだらけだった。しかし1つだけ確かなことがあった。


 それは、永遠長が完全復活したことだった。




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