同担歓迎派と同担拒否派の溝は深い オマケ
8/31追記 体調不良が続いてるので、更新休止を延長します
再開予定が確定したら、ここで改めて通知いたします
申し訳ございません
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⑨の後の、吹田と宝塚の電話です。短めです
〔久しぶり~、結婚おめでとう、もう少し自制しろ、出張疲れた〕
「……まとめて言うな。何の話だ」
〔さっきミケちゃんから電話で相談を受けた。
おまえが同担拒否派で、物にまで嫉妬してくるって。
それと、えっちなことを、自分は恥ずかしくて無理だけど、誰かに頼んでって言ったら断られて、だからっておまえに我慢させるのも申し訳ない、だってさ〕
「…………そんなことまで、おまえに話したのか」
〔むしろ、俺しかそんなことを相談できる相手がいないんだよ。
ミケちゃんがプライベートで頼れる男は、父親とおまえと俺だけだから〕
「……おまえが唯一の男友達なのは知っているが、だからといって、友達に相談するようなことでもないだろう」
〔それだけ悩んでるってことだろ〕
「…………」
〔まあ、同情はするよ。
最愛の女性に他の女としてくれって言われるのは、普通に拒否されるより堪えるよな。
けどそれは、ミケちゃんの許容量を超えることをおまえがしたせいだ。
『手を出す時は慎重に、段階を踏んで、誤解されないように気をつけろ』って言っただろ。
ミケちゃんにとって、性的なことはいまだに自分とは縁遠いことのままなんだ。
結婚できるからって浮かれてたらしいが、せめて入籍するまで我慢できなかったのか?〕
「……美景にその気がなかったのは、わかっていた。
だが、……俺の部屋に二人きりで、ベッドの上で、しかも胸を押しつけるように抱きつかれて、…………もう少しふれあいたいと思ってしまった」
〔……むしろ、その状況でよくキスで止められたな〕
「…………首筋にキスしたとたん、悲鳴をあげて逃げられた。
それが羞恥からの拒否ならまだマシだったが、何をされたか理解できず恐怖に震えていた。
…………三月に外国人の男に人質にされて、わけがわからず震えていた時と同じ、怯えた目をしていた」
〔……それで、急に『しなくてもかまわない』に方針転換したのか。
安心させたかったのはわかるが、しようとしたのに、急にしなくていいに変わったから、ミケちゃんが混乱してたぞ〕
「強引だった自覚はあるが、もう二度とあんな表情をさせたくないし、あんな目で見られたくなかった。
……そもそもは、美景の精神状態の把握を怠った俺のミスだ。
先週の月曜以来、PTSDの症状は現れず、寛解しているように見えたが、心の深いところにはまだ傷が残っていて、不安定な状態だった。
なのに、美景と結婚できることに浮かれていて、それに気づかず、俺のうかつな行動でよけい不安定にさせてしまった。
帰り際に朱音に勧められて浴衣を着た際も、最初は平気そうにしていたが、途中で着物を着ている時に人質にされたことを思い出して、一瞬だが気配が揺らいだ。
誰よりも守りたいのに、幸せにしてやりたいのに、傷つけてばかりの自分が情けない……」
〔……ミケちゃんやシロから、おまえが本音を言えるようになったと聞いてたけど。
ほんとに言えるようになったんだな〕
「……ああ。
おまえに弱音を吐けるぐらいにはな」
〔友達としては、嬉しいような悲しいような、複雑な気分だな。
……今なら正直に答えてくれそうだから聞くが、おまえ、自分がミケちゃん以上に精神的に不安定になってる自覚あるか?〕
「……一応は、ある」
〔ミケちゃんと結婚できるから浮かれてる、ってだけじゃないぞ。
もっと前、ミケちゃんとつきあう前からだ〕
「…………」
〔感情豊かなミケちゃんと関わるようになって、封じてた感情が揺さぶられて、昔のおまえならしないようなことをするようになった。
感情的になる自分を持てあまして、ミスが増えた。
『愛してる』と言えなかったのは、言葉にして認めてしまった後で、ミケちゃんを喪ったら、今度こそ立ち直れなくなるから。
そのせいで本当にミケちゃんを喪ってしまいそうになって、吹っ切れたのはいいが、執着心が増して、よけい精神的に不安定になってしまった。
二十年以上抱えてるトラウマの克服は、そう簡単じゃないのはわかってる。
それでも、せめて表面的にでもおちつけないと、もっとミケちゃんを傷つけることになるぞ〕
「…………ずいぶんと、上から目線の意見だな」
〔経験者だからな〕
「…………」
〔俺も通った道だからこそ言うが、優先順位を間違えるな。
おまえが誰よりも何よりも守りたいのは、ミケちゃんだろ〕
「……そうだ」
〔だったら、おまえもスパダリになれ〕
「……そもそもスパダリとは何なんだ。
美景の説明ではよくわからなかったから、自分でも調べてみたが、調べるほどに意味がわからなくなったぞ」
〔元々の意味や派生した意味や、一般人が使うようになって変遷した意味もあって、定義は難しいが、ざっくり言えば【理想の男性】だな。
恋人だけを一途に愛して甘やかして幸せにする、ついでに金持ちでイケメンで高身長で家事も育児も完璧な、理想を詰めこんだ概念だ〕
「それは、詰め込みすぎだろう」
〔理想だから、いいんだよ。
自分をスパダリだと思っておくと、とっさにどう反応すべきかわかるから、便利だぞ〕
「……ユング心理学でいう、ペルソナか」
〔そうだな。
おまえは今までの自分を基準にして判断してるから、ブレるんだと思う。
いっそ新しく定義したほうが、やりやすいぞ〕
「…………考えておく」
〔そうしてくれ。
ついでに報告。
ミケちゃんに披露宴に招待されたよ。
おまえの友達枠でも自分の同僚枠でもどっちでもいいからって言われたから、ミケちゃんの同僚枠で頼んでおいた。
俺とおまえが大学の同期だってことは知られてるが、友達だってことは、あまり広めない方がお互いの為だろ〕
「……そうだな」
〔けど、たまには広めといたほうが楽だと思う時もあるよ。
おまえの子飼い扱いされてたら、この間の事件の捜査本部に入れられずに済んだだろうから〕
「……出張が疲れたと言っていたが、時間がかかったのは、やはり指揮系統の問題か」
〔ああ、もうめちゃくちゃだったよ。
上がそれぞれ違う意見を言って張りあって、捜査員はどっちに従うべきか混乱して、それでもなんとか捜査を進めようとしたら、勝手なことをするなって文句言われて、そのくせ一日でも早く解決しろと急かすんだ。
無駄な手間かけさせられてる間に容疑者に逃げられて、それでも容疑者の行動予測もせず、ひたすら関係先を走り回らされた。
『刑事は足で稼げ』とか、いつの時代の話だよ。
前に四人で飲み会やった時に、おまえが俺の好きなところを『使い勝手が良いところ』だと言ってたけど、使う奴が悪いと俺もたいして役に立たないと実感したよ〕
「おまえがそこまで愚痴を言うのは、珍しいな」
〔それだけ疲れたんだよ。
もし指揮官がおまえだったら、一週間で終わらせられたと思う。
そしたら、地方出張にも行かずに済んで、もっとシロとデートできたのに〕
「本音はそれか」
〔当たり前だろ、俺はシロのスパダリなんだから、シロ最優先だよ。
おまえもミケちゃんを最優先できるようになれよ。
まずは明日からの実家訪問で、ミケちゃんをしっかり守ってやれ〕
「わかっている。
……真白は置いていくから、しばらく離れていて寂しい思いをさせた分、とことん甘やかしてやってくれ」
〔もちろん。
健闘を祈る〕
「……ああ」




