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エリート×オタクの恋はいろいろ大変です!  作者: 香住なな
第二部 恋人編
32/93

私達ズッ友だよね④

〔あ、十一時すぎちゃったね〕

 宝塚さんの声に時計を見ると、確かに十一時すぎてた。

〔俺達は明日休みだからいいけど、ミケちゃんは仕事だよね。

 今日はここまでにしよう。 

 遅くなっちゃってごめんね〕

「あー、いえ、私のほうこそ、おうちデート中なのに、話しこんじゃってすみません。

 いろいろ聞かせてもらって、ありがとうございました」

〔どういたしまして。

 後でシロのスマホから俺の連絡先を送るから、登録できたかの確認のために、メッセージを送ってくれるかな〕

「わかりましたー」

〔よろしくね。

 じゃあ、またね。

 おやすみ〕

〔おやすみなさい〕

「はいー、おやすみなさーい」

 挨拶をかわして、通話を終える。

 スマホを机の上の充電ケーブルにつないで、置いたとたんメッセージがきた。



≪これが俺の番号だよ。登録よろしくね 宝塚≫

「はやっ」

 言われた通り登録して、メッセージを送る。

≪登録しましたよー

シロさん、昔話をして色々思いだしちゃっただろうから、今夜と明日はいつも以上に甘やかしてあげてくださいね!

 おやすみなさい≫

≪もちろん、めいっぱい甘やかすよ。おやすみ≫

 うん、宝塚さんがついてるから、シロさんは大丈夫だね。

 重い内容にびっくりしたけど、話してもらうタイミングとしては、宝塚さんが一緒にいる時でよかった。

 それにしても、一度にいろんな話を聞いちゃったなあ。

 うーん、処理容量超えちゃったのか、頭が動いてない。

 急激に眠くなってきた。

 あくびしながら、他にメッセージがきてないか確認する。

 あ、吹田(すいた)さんへの三回目のメッセージ、送ってなかった。

 十一時すぎちゃったけど、一応送っとこうかな。

 作成途中のメッセージだと文字数オーバーしてるから、後半を削って、さっきのことをつけたす。



≪こんばんは

遅い時間にすみません

昼のメッセージでは文字数が足りなくて書けなかったけど、なれそめの内容は執行部(私達の組織の運営者)から事前に確認されて、オッケー出してます

ケイコ先生が直々に『あまり騒ぎ立てずに見守ってあげてほしい』と発信してくださったおかげで、庁内の友達からも特に問い合わせとかはなかったです


さっき宝塚さんちにいるシロさんから電話があって、三人で話をしました

宝塚さんと友達になって、いろいろ教えてもらいました

詳しくは明日の電話で話しますね

おやすみなさい≫

 うーん、シンプルすぎるかな。

 でも今の頭動いてない状態じゃ、これがせいいっぱい。

 文字数的にも全然入らないし、これで送っちゃえ。

 送信してスマホを置くと、また大きなあくびが出た。

 うん、考えるのは明日にして、さっさと寝よう。

 立ちあがって一歩歩いたところで、スマホが電話の着信を知らせる。

 え、こんな時間に?

 びっくりして画面を見ると、表示された名前は吹田さんだった。

「えっなんでっ!? あっ!」

 あわてて戻ろうとして、椅子のキャスターに足の指がぶつかった。

「いだ~~~っ!」

 痛みにもだえながらも、なんとかスマホをつかんで通話ボタンを押す。

「はい……っ」

〔……どうした、何があった〕

 鋭い声で言われても、返事できない。

 椅子にどすんと座って、ぶつけた足をぷらぷら振って、痛みをまぎらわす。

美景(みひろ)、答えろ、何があった〕

 ようやくちょっとマシになって、ため息をついた。



「すみません、だいじょぶです。

 電話にびっくりして、椅子に足の指ぶつけて、痛かっただけです」

 もー、なんで足の指ぶつけると、あんなに痛いんだろ。

〔……驚かすな〕

 ほっとしたような声に、思わず唇をとがらせる。

「すみません、でも、それはこっちのセリフですよー。

 今日は電話の日じゃないのに、どうしたんですか?」

〔……おまえが、あんなメッセージを送ってきたからだ〕

「えー? そんな変なこと書きましたっけ?」

〔宝塚と友達になったというのは、どういうことだ。

 詳しく説明しろ〕

「どうって、そのまんまですよ。

 友達になりたいなって言われたから、友達になりました」

〔なぜだ〕

「なぜって、……うーん?」

 なんでこんなこと聞かれるんだろ。

 あくびが出たとたん、痛みで飛んだ眠気が一気に戻ってきた。

 スマホを充電ケーブルからはずして、ベッドに移動して寝転がる。



「えーっと、その前に確認なんですけど。

 吹田さんとつきあってる間は、誰かと友達になったら、詳しく報告しないといけないんですか?」

〔…………そこまで交友関係に口出しする気はない。

 だが、宝塚は別だ〕

「なんでですか?

 シロさんのカレシだし、吹田さんの友達だし、私が友達になってもおかしくないでしょ?」

〔……俺と宝塚は、友達ではない〕

 なんだか重い口調で言われて、きょとんとする。

「でも、宝塚さんのことよく頼ってますよね?

 難しい事件の時は、いつも宝塚さんがいる班を指定してましたし。

 私のハニトラ疑惑の時も、いろいろ調べてもらってたみたいだし。

 なのに、友達じゃないんですか?」

〔…………違う〕

「ええー?」

 なんでだろ。

 んー、あー、そういえば、私と吹田さんじゃ、友達に関する考え方が違うんだっけ。

 ハニトラ疑惑の時に、そんなようなこと言ってたよね。

「じゃあ、吹田さんと宝塚さんは、友達じゃないってことで、理解しました。

 でも、私が宝塚さんと友達になるのは、問題ないですよね?」

〔問題あるだろう。

 なぜ友達になる必要があるんだ〕

 吹田さんは、ハニトラ疑惑の時みたいに、尋問口調で言う。

「必要はないですけど、友達になってって、言われたからですね。

 それに、私も宝塚さんともっとなかよくなりたいなって、思いましたし。

 前にも言いましたけど、私は、友達になりたいなって思ったら、友達になるので」

 吹田さんなら、おぼえてるはずなんだけどなあ。



〔だから、なぜ宝塚と友達になりたいんだ。

 既に知り合いで、真白を通して交流があるのだから、改めて友達になる必要はないだろう〕

「えーと、今シロさんとうまくいってるのは、私のアドバイスのおかげらしくて、そのお礼に吹田さんとの仲を応援したいから、友達になりたいって、言われたんです。

 シロさんも同じ考えで、応援してくれるそうです。

 吹田さんの昔話とか、男の人の考え方とか、教えてくれました」

 シロさんの話のインパクトが強すぎて、その前の宝塚さんとの話の記憶は薄れちゃってるけど、確かそんなようなこと言ってたはず。

〔……何を聞いたんだ〕

「んーっと」

 あーもー眠い。

 目を開けてるのがつらい。

美景(みひろ)、答えろ。

 宝塚と真白から、何を聞いたんだ〕

「えーっとねえ……」

 あれ。

 シロさんが話してくれた昔話、かなり重い内容かつ吹田さんちの裏事情満載だったけど、私がそれを聞いたってこと、吹田さんに話しちゃってもいいのかな。

 シロさんに確認しとくの、忘れちゃった。

 うーん、明日確認して、オッケーなら言えばいいかな。

「……秘密です」

〔俺には話せないような内容なのか〕

 あれ、吹田さん、怒ってる?

 なんで?



「相手が『言えない』と言ったことは追及しないのが、セレブのマナーだったんじゃないんですか?

『秘密』だと、また違うマナーがあるんですか?

『内緒』だと、どうなんです?

 他にもバリエーションあるなら、教えてください」

 シロさん、そう言ってたのになあ。

 まあ私も友達と『それは秘密』『えー誰にも言わないから教えてよー』『うーん他の人には秘密だよ』みたいな前フリつきで話すこともあるし、別ルールなのかな。

〔………………〕

 なぜか沈黙が続く。

 なんだろ。

 あーもー寝ちゃいそう。

〔……言葉は違っても、『言えない』という意思表示をされたら、それ以上追及しないのがマナーだ〕

 ようやく聞こえた声は、さっきと違って静かだった。

「えー、じゃあなんで私、追及されてるんですか?

 庶民だからですか?」

 そういうダブスタなこと、吹田さんはしないと思ってたのに。

〔違う。

 …………おまえを軽んじているわけではない。

 すまなかった〕

 静かというよりは、おちこんでるような声。

 なんなんだろ。

「えーとですね、私今めちゃくちゃ眠くて、頭まともに動いてないんで、わかりやすく言ってもらえますか?

 もしくは、明日最初からやりなおしでお願いします」

〔…………わかった。

 明日の夜、改めて話そう。

 遅い時間にすまなかった〕

「いーえー、じゃあおやすみなさいー」

〔……おやすみ〕

 通話を終えて、また大あくびする。

 このまま寝ちゃいたいけど、でも寝る前に歯磨きとトイレは済ませときたい。

 なんとか起きあがって、スマホを充電ケーブルにつなぎなおす。

 ふらふらしながら用事を済ませて、戻ってくる。

 ベッドに入って、即眠りに落ちた。


-----------------


≪おはようございます

ゆうべはすみませんでした

寝ぼけててほとんどおぼえてないんですけど、私が宝塚さんと友達になったことが気になったってことですよね?

教えてもらった昔話は、吹田さんに話せない内容なんじゃなくて、私がその話を聞いたと吹田さんに話してもいいのか確認してなかったので、言えませんでした

宝塚さんとシロさんに確認して、問題なかったら、今夜話しますね

でもそうすると二十分じゃ全然足りないので、いっそ金曜日のごはんデートの時に話すか、電話の時間延長をお願いします≫



 通勤途中の電車から吹田さんに今日一回目のメッセージを送って、しばらく考える。

 宝塚さんとシロさんに確認したいけど、今おうちデート中なんだから、邪魔しちゃ悪いよね。

 夜になって、シロさんが自分ちに帰ったぐらいの時間に連絡してみよう。

 それにしても、ゆうべの吹田さん、なんか変だったなあ。

 宝塚さんと友達じゃないって、なんなんだろ。

 シロさん以外だと、宝塚さんを一番信頼してるように見えるのに。

 もしかして、親友と書いてライバルと読む、的な関係なのかな。

 だとしても、なんか変だった気がするけど。

 うーん。


 

 考えこみながらも、無事仕事を終えて、定時であがる。

 家に帰って、お母さんとばんごはんを食べて、お風呂に入る。

 九時すぎたから、もういいかな。

 まずはシロさんに聞いてみよう。

≪こんばんは

昨日シロさんが教えてくれた過去話は、私がそれを聞いたと吹田さんに話しても大丈夫でしょうか

十時から吹田さんと電話で話すので、先に確認させてください

まだ宝塚さんと一緒なら、おうちに帰ってからでいいので、返信お願いします≫

 九時だと微妙かなと思ったけど、すぐ返信がきた。

≪こんばんは

さきほど自宅に戻りました

私が話したと、吹田さんに伝えてくださってかまいません

私からも、吹田さんに伝えておきます≫

≪ありがとうございます。お願いしますー≫

 シロさんのほうはこれでオッケーかな。

 じゃあ次は宝塚さん。

 でもどう聞けばいいんだろ。

 うーん。

≪こんばんは

質問です

宝塚さんは、吹田さんを友達だと思ってますか?≫  



 送信して一分ほどして、宝塚さんから電話がかかってきた。

 あれ。

「はいミケです。こんばんはー」

〔こんばんは。

 今ちょっと話しても大丈夫かな〕

 仕事の時よりは優しいけど、昨日シロさんが隣にいた時よりはおちついた声。

 でもやっぱりイケボだね。

「だいじょぶですよー。なんですか?」

〔さっきの質問の答え、長くなるから電話のほうが早いかと思って。

 もしかして、吹田に『宝塚は友達じゃない』とか言われた?〕

「……当たりです。

 なんでわかったんですか?」

 これもプロファイリング、なのかもしれないけど、なんかもう占い師とか超能力とか言われたほうが納得できそう。

〔昨日のシロの話を聞いて、思い当たることがあったから。

 吹田は、どう言ってた?〕

「えっと、ゆうべ宝塚さんにメッセージ送った後、眠くなってきたんで、吹田さんに『宝塚さんと友達になって、色々教えてもらいました』って簡単にメッセージ送ったんですよ。

 そしたら電話かかってきて、なんかしつこく聞かれたんですけど、ぶっちゃけほぼ寝てたんで、ほとんどおぼえてません。

 確か、どうして友達になったんだとか、もう知りあいなんだから友達になる必要ないだろうとか、聞かれました。

 でも眠気が限界超えてたんで、もっとわかりやすく言うか、明日またお願いしますって言ったら、明日、つまり今日十時からですね、改めて電話で話すことになりました」

〔そっか。

 吹田って、意外と引きずるというか、(こじ)らせるタイプだったみたいだね〕 

 宝塚さんは、苦笑いしてるような声で言う。

 どういう意味だろ。

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