10.脇役から、主人公へ。
「あー、楽しかった♪」
もう一度ゲームセンターに行ったり、水橋おすすめのスイーツを食べたりして、
解散には程よい時間となった。
正直、超楽しかった&ドキドキしっぱなしだった。
デートではないとしても、相手は我が学校が誇る、完全無欠の女神様。
しかも、俺にだけ素性さらして、普段見せない姿を見せてくれた。
これで常に冷静でいろって方が無理だわ。
そんな存在を彼女にしたいなんていうこと考える不届き者は、
(俺なんだよなぁ)
つくづく、身の程知らずだなって思う。
確かに何の因果か、水橋の素と悩みを知ることとなったが、それとは関係無い。
知る前から、俺は水橋を彼女にしたいと思って、本気の彼女作りを始めた。
そしたらこれまたどういう訳か、この奇妙な関係ができてしまった。
このまま、水橋の相談及び遊び相手でも、十分かもしれない。
今までの俺だったら、そう思ってた。
(けど、さ)
俺だって、男だ。脇役補正食らってるとしても、俺の人生の主人公は俺だ。
なら、ちょっとくらい意地見せやがれってもんだ。
いつまでも「俺は脇役だから」で逃げんな。透の存在を理由にすんな。
この際、透を超える男になってやろうじゃねーか!
「ねぇ、藤田君」
「何だ?」
「また、こういうことしてもいいかな」
「いいに決まってるだろ。今度は早くに連絡くれ。バイト、調整するからさ」
「ありがとう。……やっぱり、藤田君に打ち明けてよかった。
藤田君、今日はずっとボクを楽しませること考えてくれてたでしょ?」
「当たらずとも遠からずってとこ。水橋が楽しければ、俺も楽しいし」
「えへへ。本当にありがとね」
あーっ! いちいち可愛いなコイツ!
お前が本気出したら、クラスのパワーバランス思いっきり変わるぞ!
もしかしたら素を出したくないのってそっちの方を予測してか!?
「じゃ、また今度ね」
「おう。じゃーな」
いずれにしたって、水橋が学校でも自然体でいられるのは、今じゃないし、明日でもない。
そして、俺が水橋を彼女にできるのも、今じゃないし、明日でもない。
だけど、俺は決めた。
(脇役でもTPでもない、『藤田怜二』の本気、見せてやりますか!)
『水橋雫を彼女にする』
妥協しない。このまま、そこそこの幸せで終わるつもりはない。
俺は絶対に、最高の彼女を手に入れてみせる。
(と、イキったのはいいけど)
ここからカレカノの関係になるとしたら、何が必要なんだろう。
一朝一夕になるのは無理だけど、現状維持から更にとなったら、どうすれば。
少し、考えてみる。
仮に告白するとして、俺からか、水橋からか。
……俺からかなぁ。水橋、恋愛に興味あるかっていったら微妙だし。
素は普通のJKだけど、色恋沙汰より自分の趣味っていうタイプだと思う。
何より、俺が水橋に惚れられるっていうのがまずありえん。
(水橋の悩みを解決したら、どうなるんだろ)
どういう方法で、どうなるか次第だけど、この関係を解消してそのまま、は無いか?
ただの友達、という形になってくれれば十分。それこそ0.1%くらいで、発展したりもある。
0.1なんてほぼ無いも同然だけど、0から0じゃなくなるのは大きい。
「今度は俺から、誘ってみるか」
次のテストは期末。遊ぶ時間の猶予はある。
水橋があの成績を維持するのに、どれくらいの時間をかけているのかは分かりませんが、
こっちから動いてみようかね。




