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37、「気力を回復させよう!」

 それにしても、このバー、なんだか最近赤字気味なんだよなあ……。どうしてかなあ、どうしてでしょう。いや、カクテルって基本的には結構お値段を高めに設定しても怒られないんですよ。だって、バーテンダーを雇うのも大変じゃないですか。なので、カクテルが出るようなお店って価格設定がかなりお高めですよね。

 む、待てよ。もしかして……。あ、結構わたし、レディにお酒をプレゼントしてますねー! なるほどなるほど。ってことは、美女がやってきても、絶対におごらないという姿勢を貫くべきですね。

 お、お客さんだ。ようこそいらっしゃいませー!

 って、おい、とんでもない美人さんや。しかも泣いてはる。ええと、写メとかをお送りできないのが本当に残念なんですが、宮崎葵さん似の超可愛いお嬢さんです。かねがね「宮崎葵と付き合いたい」と公言しているわたし丸屋、ここは何が何でもあの子のお役に立ちたいのです!

 どうしました? え、なんですって? なんとなく小説を書く気分にならない、ですって? ほう、それはかなり厄介な病気ですね。ええ、では、こんなのはいかがでしょう。はいこれ、ギムレットです。そうそう、ハードボイルド小説の「長いお別れ」に出てくるカクテルです。作品内の作り方に合わせて、甘めに作ってありますので飲みやすいと思いますよ。へ、お代? ご安心ください。美人からはお金を取らないのがうちのモットーですから(キリっ)。


 小説を書き続ける際には二つの力が要る、というのがわたしの持論です。

 まずは体力。変な話、一日に十分しかPC画面の前に座れないような貧弱な人は小説を書き続けることはできません。まとまった時間を用意でき、かつその時間の間は姿勢をキープし続けるくらいの体力はぜひとも欲しいところですね。若い人は分からないかもですが、歳を取ってくるとどんどん椅子に座っているだけのことが億劫になり、疲れるようになってきます。かの村上春樹さんも、小説を書く体力をつけるためにジョギングを趣味にしており、その趣味が高じてジョギングに関するエッセイを書いていたりもします。……なんか羨ましいなー、と思うのはわたしだけではないでしょう。

 けれど、体力だけでは小説は書けません。むしろ、体力というのは、「ずっと同じ姿勢で椅子に座っている程度の能力」でいいわけであって、何もマッチョだったりフルマラソンを走る能力が必要なわけじゃありません。そのあたりは適当でいいのです。

 むしろ、小説を書くときに重要なのは気力です。と、こんなことを書くと、「所詮貴様も根性論者か!」と怒られちゃいそうですけども、断じて根性論の話ではありません。

 ここでいう気力とは、「ムラムラ感」のことです。

 と書くと、今度は下ネタかと怒られそうですが、そういうことでもありません。

 ええとですね、二十作も書いてきたあなた様にとっては遠い昔のことかもしれませんが、あなたが小説を初めて書いた日のことを思い出してください。どんなお気持ちでしたか。

 たぶん、めちゃくちゃ何かを書きたくて書きたくてしょうがなかったんじゃないかなあと思います。そう、この小説に対する前向きな気持ちこそが、「気力」とわたしが呼ぶものです。

 ぶっちゃけ、この「気力」さえあれば、体力なんていらない場合もあります。小説のノリがいい時って、体力のことなんて完全無視でガンガン書き進めることができるじゃないですか。あれは気力が充実しきって肉体を凌駕しているときにおこる現象です。

 つまり、小説を書くときには、気力の充実がカギということです。

 ちなみに、実は体力が充実していれば、気力がゼロに近くても小説を書くことはできます。ウッソだあ、って思うでしょう? 実はイケます。たとえば、あなたがすごく責任感の強い人だったり、今書いているものが大きな賞の応募作品だったり、あなたが実はプロで締切期日が切られてしまっている場合とか。そういうときには書こうと思えばそれなりのものを書けてしまいます。

 しかし、気力っていうのはエンジンにおけるガソリンのようなものです。なくなってくればエンジンが止まってしまい、あとは惰性で小説を書く羽目になってしまいます。もちろん、ある程度のところまで小説が書けていてもエンジンが止まっても惰性で最後まで書き切ることはできますが、細部へのこだわりや心遣いができず、どうしてもそれなりのものになってしまいます。

 やっぱり、小説を書く力は気力なんですね。

 では、問題は気力をどう回復するかという話になってきます。

 ただ、この気力の回復というのは、その人次第なところがあります。たとえばわたしなどは本を読むことで気力が回復します。中にはお酒を飲むと回復する人、趣味に打ち込むと回復する人、女の人を口説くと回復する人、仕事がうまく行かないときに回復する人、ののしられると回復する人、褒められると回復する人、などなど、いろんな人がいます。こればっかりは、あなたと小説がどういう関係にあるのか、あなたにとって小説を書くという営みがどういう位置にあることなのかが密接にかかわってくる話なので、正直あなたが自分で見つけるしかありません。そして、気力が尽きてきたなー、というときには、自力で気力を回復していくといいかなと思います。

 まあ結局、この問題は「自分のモチベーション管理はしっかり自分でやってね」という、実にあたりまえな結論だったりします。


 というわけですお嬢さん、さあ、泣くのをやめて気力を回復させましょう。

 え。あなた、女性じゃないんですか? お、男? こんなきれいな男がどこにいる!? あ、ここにいるんですね。いわゆる「男の娘」ってやつですね。

 ええとじゃあ、お客様、カクテル一杯五百円です。

 え、男からは金取るに決まってるでしょうが! ふざけんなこのヤロウ!


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